1、地域医療構想の実現について
(坪井県議)
「経済財政運営と改革の基本方針2018」において、「公立・公的医療機関については、地域の医療需要等を踏まえつつ、地域の民間医療機関では担うことのできない高度急性期・急性期医療や不採用部門、過疎地等の医療提供等に重点化するよう医療機関を見直し、これを達成するための再編・統合の議論を進める」とされたことを踏まえて、高度急性期や急性期機能に着目した診療実績データの分析結果が公表され、公立・公的医療機関等に対して、地域の民間医療機関では担うことができない機能に重点化するよう具体的対応方針の再検証等が求められている。
このような状況の中、阪神北準圏域では、「市立伊丹病院と近畿中央病院の統合再編に係る基本方針(案)」が取りまとめられている。この基本方針(案)が掲げる「地域医療構想において果たすべき役割」については、統合再編により600床規模の基幹病院を設置し、阪神北準圏域で不足する高度急性期病床の確保に努め、住み慣れた地域で生活しながら、状態に応じた適切で必要な医療を安心して受診することが出来るよう、地域医療の提供体制の構築を目指すことが記されている。
伊丹市で進められている公立・公的医療機関等との統合再編のように、現在も、そして将来においても、多くの地域で推進されていくことが予測されるが、その実現のためには県による財政的な支援等が欠かせない。
そこで伺うが地域医療構想を着実に推進するためには、医療介護推進基金を有効に活用することが重要になってくるが、病院の統合再編整備や病床の機能分化にかかる事業の実施状況、また、今後どのように事業を展開しようとしているのか。さらに、国の方では来年度より、地域医療構想の実現を図るための新たな財政支援が予定されていると聞いているが、全額国費で実施されるという新たな制度を、どのように有効活用してくのかということについても所見を伺う。
(藪本健康福祉部長)
病院の再編統合について、これまで県は北播磨総合医療センター、加古川中央市民病院の統合を支援するとともに、尼崎総合医療センター、丹波医療センターなど県立病院の統合も推進してきた。
また、病床の機能分化については急性期や慢性期の過剰な病床から回復期等の不足している病床への機能転換の支援を促進しており、例えば回復期病床については、地域医療構想策定時には約4,500床であったのが昨年時点で約7,900床と約3,400床増加した。
2025年を目前にして、さらに病院の再編統合等を推進する必要があることから、新年度、県では新たに医療介護推進基金を活用して医療機関の再編統合、また病床機能集約化に伴う病院整備やダウンサイジングについても支援することとしている。
あわせて、国の新たな財政支援を活用して、病床の削減や統廃合により病床を廃止する病院に対し、病床削減に伴う過失利益や病床削減コストについても支援していく。さらに、医療機関の再編等に向けて、国からの直接の助言や財政支援の上乗せ等を行う「重点支援区域」の選定についても、市立伊丹病院等の事例等について圏域の地域医療構想調整会議での協議を踏まえ、国に申請していく。
2、日本遺産認定を視野に入れた今後の清酒販路拡大支援について
(坪井県議)
地元である伊丹は「清酒発祥の地」ともいわれ、関ヶ原の合戦のあった1600年頃から清酒を造り、江戸に販売して大変栄えた。いまでも、市内には白雪の小西酒造、伊丹郷の伊丹老松酒造があり、地域経済において重要な役割を果たしている。現存する最古の酒造である国指定重要文化財の旧岡田家住宅・酒蔵や江戸時代19世紀の酒蔵を活用したレストラン「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」、そして伊丹酒蔵通りもあり、観光資源としても重要な存在となっている。
しかし、国内人口減による酒類全体の販売量減少、特に嗜好の変化から日本酒の販売量は大きく減少している。ただし、明るい兆しもある。清酒の出荷量を見ると、平成20年から平成30年の10年間に国内出荷量は約25%減少しているが、海外への輸出量は和食ブームもあり、1万2千キロリットルから2万6千キロリットルに倍増している。
清酒は日本の誇る食の文化遺産。神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市、伊丹市の阪神5市は、清酒を江戸に送った「下り酒」の歴史と文化をストーリーにして、清酒文化の日本遺産認定を目指している。昨年の申請は残念ながら不採択だったが、令和2年度の認定を目指し、現在再度申請中と聞いている。ぜひとも、日本遺産に認定を実現してもらいたい。
重要なのは日本遺産に認定されたとしても、日本遺産認定をどうやって産地振興、販路拡大に結び付けていくのかということであり、行政は地場産業振興の立場からそれをどうやって支援していくのかということだ。私は国内の販路開拓も重要だが、今輸出が伸びているこの時期をチャンスとして、海外向けの販路拡大の支援が必要だと思う。
そこで、兵庫県における清酒産地の現状と課題を踏まえ、日本遺産認定を視野に入れ、今後どのように清酒の販路拡大を支援していくのか。
(井戸知事)
今後はブランド化、市場開拓、技術開発といった海外市場への取組を産官連携で戦略的に展開することが課題である。清酒の日本遺産認定をめざす業界・市町の動きは、こういった状況を踏まえた清酒のブランド再構築に繋がる。昨年国指定を受けた灘五郷のGI地理的表示制度と共に海外浸透に向けた効果は大きい。
県ではこうした取組と連動し、フランスの見本市への出展支援等を行ってきた。今後は日本遺産認定も視野に、様々な歴史資源や和食、山田錦等の酒米と合わせ、清酒を育んだ地域文化全体を物語としてアピールし、清酒のブランド化戦略や市場開拓戦略を強化していきたい。
さらに、経営資源が弱い中小酒蔵が多い現状から見て、多様な海外市場や遠距離物流に対応した技術開発戦略も必要である。工業技術センターを軸に産学官での共同開発に引き続き積極的に取組んでいく。
今年は、ワインで世界最大級の「ブリュッセル国際コンクール」の日本酒部門が兵庫で開かれ、海外プロモーションに絶好の機会となる。また、兵庫の日本酒のブランド力を高めるため、県独自の日本酒コンテストの創設を検討できないか考えている。
3、伊丹空港への国際線就航について
(坪井県議)
関西エアポート株式会社が発表している2019年の利用状況をみると、関西国際空港、伊丹空港、神戸空港を合わせて関西3空港の旅客数は、5千万人を突破し発着回数と共に過去最高を記録するなど好調に推移している。私はいよいよ伊丹空港への国際線就航を強く推し進める時期が来たと認識している。
そう考える理由は3つある。1つは、3空港を取り巻く環境の変化。神戸空港は関西3空港懇談会の新たな合意を踏まえ、1日あたりの最大発着回数が60回から80回に拡大され、運用時間も22時から23時までに延長することとなった。現状を見ると、スカイマークと新規就航したフジドリームエアラインズが拡大した発着枠で既存路線の増分、新規路線の就航をしている。また、次の夏ダイヤにおいては1時間延長された運用時間も活用されると共に、拡大された発着回数は満杯状況となる。
過去においては神戸空港の規制緩和は他の空港の利用者を奪うのではないかというような意見も聞かれたが、むしろ3空港の相乗効果で関西全体の発展に寄与しているように見受けられる。関西エアポートによる3空港の一体運営の実現、そして訪日外国人の劇的な増加という環境変化を踏まえると、3空港を取り巻く環境は大きく変化している。
2つめの理由は危機管理。関西エアポートは、2018年の台風21号により甚大な被害を受けて、機能停止に陥った経験も踏まえ関西空港の防災機能強化対策事業計画を策定し、災害対策に取り組まれている。しかし、関西空港の災害対応能力が強化されたとしても、想定外の災害事象が発生する可能性はゼロにはならない。そこで、短期的な視点の取組に整理されている発生時の3空港の相互支援体制を早期に構築することが重要だ。
また、今後ますます関西空港の発着回数が増加していくことを考えると、想定できないトラブル等で一時的に関西空港が利用できなくなった場合、関西空港の機能を代替する空港として位置付けられている国際線が就航できるよう、「国際線が就航する空港は、今後とも関空に限定することが適当」と定められている空港法に基づき、国が定めた基本方針を見直しておくことがリスク管理的に重要である。
3つめの理由は、今後のインバウンド需要の拡大が見込まれることだ。今年の東京オリンピック・パラリンピック、来年のワールドマスターズゲームス2021関西、2025年の大阪・関西万博やIR構想等のインバウンド需要の拡大が見込まれる国際的イベントの開催が連続する。伊丹空港に国際線が就航していないことは兵庫県の発展につながるチャンスを逃すことになる。
国が平成2年に地元と締結した存続協定を踏まえると、伊丹空港は利用者利便の確保だけではなく、周辺地域との調和を図っていかなければならないことは承知しており、地元の理解を得ることが前提とはなるが、伊丹空港への国際線就航を前向きに検討する時期が来ている。ついては、伊丹空港を名実ともに「大阪国際空港」とするために、まずはインバウンドが一時的に増加する期間限定で就航させるべきである。そこで、今後の伊丹空港の国際線就航の実現可能性について所見を伺う。
(井戸知事)
昨年5月の関西3空港懇談会では伊丹空港について
①国際便の就航可能性を含めた今後のあり方を議論すること
②国際イベント開催時の臨時的対応についてはその時々に検討して議論すること
③災害発生時の3空港相互支援体制を構築すること、
この3つの点を伊丹空港について合意した。
一方、伊丹空港には平成2年に国と地元で結んだ存続協定があるが「関西空港開港後も伊丹空港を存続するに当たり、騒音の環境基準の達成に向け環境対策を進めること」を合意している。空港周辺の一部地域で未だ環境基準値を達成できない状況にあるので、まずは地元市と連携し、航空会社に低騒音機のさらなる導入を働きかけていくなど、この解決に取り組むべきである。その状況を踏まえた上で、これ以上騒音域を拡大させない範囲において、国際線就航について航空需要の動向、航空会社や旅行会社のニーズを把握しながら3空港懇談会で議論していくことになる。
国際イベント開催時の臨時的対応については、ワールドマスターズゲームズ2021関西、大阪・関西万博等が予定されており、あらゆる機会をとらえ、国際チャーター便が運航できるよう関係者と協議していきたい。災害発生時の3空港相互支援体制については、関西エアポートがすでに昨年4月に空港事業継続計画BCPを改訂し、3空港間の人的・物的な応援体制を構築している。さらに、災害時の国際線受入れを可能とするよう、国にも提案していく。
伊丹空港の国際線就航に向けては、3空港懇談会でしっかり議論し、空港法に基づく「基本方針」を見直し、まずは国際チャーター便の実現を目指していきたい。
4、入管法改正を踏まえた今後の外国人児童生徒の受入体制の充実について
(坪井県議)
外国人児童生徒の受入の入り口となるのが学校。県では「子ども多文化共生サポーター」制度を設け、日本語と母語ができるサポーターを県立学校や市町組合立学校に派遣し、日本語がわからない児童生徒の生活適応や学習支援、こころの安定を図ることに先進的に取り組んでいるところで高く評価している。
しかし、入管法改正によって今後、外国人児童生徒が全体として増加することはもちろんだが、地域によっては外国人児童生徒が急増する学校が生じるのではないかと考える。現時点でも多文化共生サポーターの人材確保に苦労されていると聞いており、現状の受入体制では対応困難な場面が生じることも予想される。私は特に、日本語指導は単に日本語を教えるだけでなく、そのことを通して生活や文化の違いを教えることにつながるため、日本語指導の体制の充実が重要だと考えている。
充実のためにはまず、現在の教員のレベルアップが必要である。日本語がわかる児童生徒への国語の教科指導と、日本語が分からない児童生徒への日本語指導は異なると聞いているので、教員の中に日本語指導を行うことが出来る教員を増加させる必要がある。
教員をサポートする体制も必要である。専門的に日本語教育を行うことが出来る人材を派遣するという組み合わせが必要となる。おりしも、現在、文化庁では日本語教育の水準を向上させることを狙いとして国家資格の「公認日本語教師」(仮称)の創設について検討している。この資格制度はすぐにできるわけではないようだが、制度創設後はそのような資格取得者の活用も検討してはどうか。
そこで、入管法改正を踏まえた、学校での外国人児童生徒等の受入体制の現状と課題についてどのように認識し、今後特に日本語指導についてどのように充実していこうと考えているのか。
(西上教育長)
本県の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は、5年前の平成26年度は802人だったが、令和元年度は1,076人と1.34倍に増加している。また、この約8割が小・中学生という状況になっている。この児童生徒に対する支援のうち、アイデンティティの確立に必要となる母語や、母語の文化については主に県の国際交流協会や支援団体が担っているが、一方、日常必要とされる生活言語、また、授業の内容を理解するための学習言語、この習得は主に学校教育が担っている。県と市町で連携して取り組んでいる。
県の教育委員会としては課題となっている学習言語の習得が効果的に行えるよう、教職員向けには「外国人児童生徒等受入マニュアル」を作っている。具体的な取組としては母語による支援を行う子ども多文化共生サポーターの派遣、また翻訳機の導入をしている。2点目は日本語指導担当教員の配置をしている。令和元年度で27人がいる。3点目は支援に携わる教員の資質向上の研修も行っている。4点目は、日本語指導研究推進校を指定してその成果の発信・活用を行っているところである。5点目として、日本語指導を行う支援員を派遣して、対象となる児童生徒を特に指導する、取り出しによる日本語指導を行う市町教育委員会を支援しているなど、様々な取組を行っている。
なお、ご指摘いただいた有資格者の任用については、今後の検討課題とさせていただきたい。