≪質問項目≫
1、県内観光の推進強化について
2、データに基づいた豊かな海づくり施策について
3、特定外来生物の水草「ナガエツルノゲイトウ」駆除について
4、既存ストック等を活用した渋滞対策について
5、鉄道駅舎バリアフリー化の更なる推進について
6、今日的課題を踏まえた県立がんセンターの基本設計について
7、障害のある子どもへの専門的な指導と地域での学びを両立させる仕組みについて
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、県内観光の推進強化について
(伊藤県議)近年、インバウンドでは大阪や京都に大差をつけられているが、国内旅行に限っていえば、訪問率は大阪や京都とほぼ同じで善戦しているが、観光庁の宿泊旅行統計調査によると宿泊者数ではやはり大阪に2倍以上離されていることから、コロナ禍において他府県でも本県のWelcоme tо Hyоgоキャンペーンと同等の支援事業が展開されていれば、宿泊を伴う経済効果の高い誘客にはつながらないのでは、と危惧している。いま耐えておられる観光関連事業者には、より即効性のある経済効果が高い施策を早急に展開する必要がある。
ある観光関係事業者に伺うと、3世代の家族客は消費額も大きい傾向になるが、高齢者が感染を恐れて外出を控えているため、今年は激減しているとのことだった。経済効果の高い3世代ファミリーが安心して楽しめる観光メニューの提案や、食のブランド「淡路島」推進協議会が発行しているフリーペーパー「淡路島じゃらん」のようにフルーツやスイーツを中心にした情報提供により、ファミリーの中で訪問先決定に発言力のある助成や子どもにインパクトのある情報発信を増やすなど、さらに工夫すべきである。ふるさと納税返礼品に宿泊セットを用意するのも良いと思う。また、その観光関係事業者がいうには、近畿各地の学校の今年度の修学旅行は沖縄、北海道、東京といった遠方を避け、関西圏に目的地を変更する学校が多いとのことだった。文部科学省の調査によればコロナ禍にあっても7割の学校が修学旅行を実施予定としており、貴重な団体客でもあることから、カウンターパートで融通しあうなど早急に取り組んでいく必要がある。冬から春の実施分ならまだ間に合うと思う。
観光産業の回復は、多くの産業の経済・雇用の回復をもたらし、地域の経済全体にとって非常に高い経済回復効果を期待することができることから、経済効果が高くかつ即効性のある施策を重点的に取組んでいく必要がある。当局の所見を伺う。
(井戸知事)民間の調査によると、家族旅行の行き先選びは基本的にご主人ではなく、奥様と子どもが鍵となっている。このため、女性や若い人を念頭に、秋冬版「あいたい兵庫キャンペーン」では、グルメ・アミューズメント情報に強みを持つ出版社と協働したドライブガイドを発行する。三密を避けたい家族層に人気の、自然や絶景を楽しく観光スポットを公式観光サイトHyоGоナビ、SNS等で発信する。また、観光地や温泉を持つ県内市町では、ふるさと納税返礼品にご指摘のあった宿泊券を活用するなど、独自の取組を行っているところもある。このようなことをしっかりと発信していくことが重要だ。
団体旅行対策としては、必ず宿泊を伴い、需要喚起効果が高いのは修学旅行。したがって修学旅行の誘致に努力していきたいと思うが、今年は夏休みや冬休みの期間が厳しいものがあるので、日帰りも含めて対応する必要がある。コロナ禍の近隣志向も踏まえ、教育旅行に使える体験メニューや体験施設などの情報提供に力を入れていく。
さらに、個人、団体を含めた宿泊客を対象におみやげ購入券を発行する「兵庫五国の名湯に泊まろうキャンペーン」をWelcоme tо Hyоgо第2弾として実施し、旅先での消費喚起の上乗せも図っていく。コロナ禍であっても、平田オリザさんが総監督をされた豊岡演劇祭は全国から多くの方を集め大成功を収めた。周辺宿泊施設も満員の盛況であった。このように特色をもった定期イベントの定着を図ることの効果にも着目して新機軸を検討していきたい。
(伊藤県議コメント)県内観光について調査結果と同様、決定権は女性にあると思う。先程の若い方の消費金額が少ないという話は私もそう思っていたが、娘が行きたいといった場所にいくと、たくさんの若い方がそんなにお金を出して、これを食べるの、飲むのといったことにお金を使っているので、そうした調査結果も参考にしながら若い方のお金を使う感覚は我々と全く違うといった認識で考えないといけない。
2、データに基づいた豊かな海づくり施策について
(伊藤県議)調査・研究が様々な形で進められ、国でも改正瀬戸内海環境保全特別措置法が成立し、県でも昨年の条例改正により、瀬戸内海の海域での良好な水質を保全し、豊かな生態系を確保するうえで望ましい海域の栄養塩濃度を水質目標として設定し、その目標達成のために環境基準を達成しつつ向上や下水処理場の栄養塩供給量を増やすなど、具体的な実効性が期待される取組が進められることとなった。
こうした取組に加え、漁業関係者は漁船で専用器具を引き海底に沈んだ栄養分を攪拌する海底耕耘を行ったり、栄養豊かな地底の泥を海に流すことで養殖ノリの色落ちを防ぐ効果があるとされるため池のかいぼりに参加したりするなど、長年にわたり全国トップクラスの活動を実施している。これらの活動は本業以外の時間と労力を割いて行われており、豊かな瀬戸内海を取り戻すためとはいえ、頭が下がる思いである。このような努力の結果が最大の効果を生むためにも、効率的かつ効果の上がる取組のあり方を調査・研究に基づくデータで示していくべきである。
コロナ禍において唾液の飛散状況をスーパーコンピュータ富岳によるシミュレーションで検証されている報道があったが、これは豊かな瀬戸内海づくりの各種取組にも活かせる。しかし、適正な栄養塩供給量をシミュレーションするためには、陸域や海底などからの栄養塩の供給量に加え、降雨量や日照時間、風向・風力などの気象データ、様々な海洋生物による消費量など膨大なデータが必要となる。ぜひとも富岳でシミュレーション解析ができるくらいになるほど、様々なデータの調査収集を進めてほしい。
さらに、行業者の方々が積極的に取り組まれている海底耕耘についても、モニタリング調査に基づいて、より効果的な方法を提示することや、これまでに整備された漁礁なども海底映像やデータを示し、分かりやすく整備した効果を示していくことが重要である。
このように今後、データや科学的根拠に基づいた取組をいかに展開し水産業の振興を図るのか。
(井戸知事)基本的な考えに基づき、豊かな海の再生を着実に進めていかなければならない。そのために①イカナゴ以外の魚介類の適正な栄養塩環境を解明していくこと②海底耕うんの効果的な実施方法を確立していくこと③効率的な栄養塩供給対策を進めることなどの、課題解決に取り組んでいかなければならない。
水産技術センターでは、魚介類の餌として重要な動物プランクトンの発生状況や分布などの調査をさらに進め、栄養塩がプランクトンの増減に及ぼす影響を定量的に解析して、豊富な餌を生み出す栄養塩環境の解明に取り組んできているし、これからも取り組んでいく。
また、海底の生物生息環境を改善するため、昨年度の補正予算で海底耕うん事業を新たに創設したが、今後は、耕うん後の底質の改善状況を調査して、耕うんの速度や深さなど、より効果的な実施方法を検討していく。
さらに、①陸域からの栄養塩流入量と海域の濃度との相関に関するデータの改正②海底の泥を食べて栄養塩に分解するナマコ等の適正な放流手法の調査・加えて③水中ドローンによる漁礁周辺の魚の生息状況や構造物の状態などの調査も併せて進めていく。
4、既存ストック等を活用した渋滞対策について
(伊藤県議)私の地元明石市と神戸市西区、垂水区を結ぶ国道2号、175号、県道の神戸明石線、大久保稲美加古川線では、朝夕のラッシュ時間帯を中心に激しい渋滞が発生している区間が点在しており、一部区間で拡幅事業等が進められているが、その事業効果の発現には相当な時間と予算を要することから、既存の都市計画道路の事業もあわせて検討し、通過交通量を分散させるなどの即効性のある広域的な対策と地域間交流の円滑化による地域活性化を関係自治体や道路事業者が連携して取り組んでいく必要があると考える。加えて、事業費については財政状況が厳しい中での整備となることから極力コストを抑える手法の導入も必要である。
たとえば、明石市では第二神明道路の明石サービスエリアへのスマートインターチェンジの設置や神戸西バイパスの工事用道路の活用により、大久保IC、玉津ICへの車両集中が分散し、周辺地域のアクセス向上、渋滞解消、地域活性化が期待されている。これらは既存のインフラや進行中の事業を活用することで最小限のコストで渋滞解消を図ることができ、結果、周辺地域活性化にもつながる。また、地域間をまたぐ都市計画道路、たとえば明石市大久保地域と神戸市西区玉津地域を一本で結ぶ、明石市の「江井ヶ島松陰新田線」と神戸市の「玉津大久保線」の整備は、両市の国道、県道の渋滞区間の削減と両地域の活性化、生活道路の安全確保に寄与することからも期待も大きいが両市に関連する事業であることから、県が積極的に事業化に向けて関係者の調整や支援を行うことが必要である。
このように明石市から神戸市西部の渋滞区間解消と地域活性化には、明石市・神戸市。道路事業者との連携はもちろんのこと、該当周辺地域を俯瞰的に見て、個別の事業や計画の事業効果が最大化できるよう、県がリーダーシップを発揮して関係者を調整し、渋滞対策と地域活性化を推進していくべきではないか。所見を伺う。
6、今日的課題を踏まえた県立がんセンターの基本計画について
(伊藤県議)来年度からは重要な基本設計および実施設計が予定されているが、現下のコロナ禍で見えてきた課題も整理しつつ、感染症拡大期や災害発生時にあっても、がん患者に安心して医療を受けていただくための機能を他の病院にもまして強化し、整備していく必要がある。
たとえば、コロナ患者の受け入れにより手術や治療の延期をした感染症指定医療機関などのがん患者を受け入れる病床や機能を確保するとともに、一般的にコロナ重症化率が高いと捉えられているがん患者が安心して受診いただける治療環境の整備や、感染拡大期にあってもつらい治療に耐え不安に包まれている入院患者への面会や最期のときを家族と過ごせる緩和ケア環境の整備などを検討し、基本設計に盛り込んでおくべきである。加えて以前から要望しているアピアランス対応スペースの整備は、がん患者、民間企業、医療美容師と連携してハードソフト両面にわたる整備を望む。
また、がん患者の最後の砦であるがんセンターは災害にあっても病院機能を維持する必要がある。先日発表された浸水ハザードマップによると明石川が氾濫した場合、建設予定地は浸水の恐れはないとされているものの、南側一体の地域は50cm程度の浸水が想定されている。浸水が想定されていない北側にアクセス経路を設けるなど病院自体の浸水対策とあわせて検討しておくべきである。さらに、避難所指定されている最寄りの小学校は最大3mの浸水が想定されており、近隣地域の住民の指定緊急避難場所として駐車場や屋上等を開放することも想定した整備も必要と考える。
このように、感染症拡大期の医療提供や頻発する浸水被害を想定した基本計画について、いかに検討していくのか、また開院までのスケジュールに変更はないのか。
(長嶋病院事業管理者)現在、合併症患者に対する地域医療機関との連携方策の検討や、設計業務の手戻りを防ぐため埋蔵文化財の試掘調査を先行実施している。これにより、基本設計及び実施設計の着手は、当初の予定から1年遅れて来年度からとなるが、各部門の業務手順の検討や諸室の必要面積の精査等をあらかじめ行うことで、設計期間の短縮につとめるなど、全体的スケジュールへの影響を最小限にとどめる。
新病院では、感染症指定医療機関等からの紹介患者の受け入れに際して、感染の有無を確認するトリアージ質の充実や、万が一入院患者が感染症に罹った場合に対応できる陰圧個室の整備など、十分な感染症対策を基本設計に盛り込むことにより、がん治療が滞らないようにする。
また、緩和ケア病床の増床等による質の高い緩和ケアの提供、アピアランス支援や治療と仕事の両立支援等のがん相談のワンストップサービスの提供など、がん患者や家族にとって安心して療養生活が送れるよう環境整備を行う。明石川氾濫等による浸水に対しては、従前の南側からのアプローチに加え、浸水想定のない東側からのアプローチを検討している。なお、指定緊急避難場所については、市からの要請に基づいて検討したい。
喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症や頻発する自然災害に十分に備えるなど、がん患者の最後の砦として、県民が安全に安心して最先端のがん治療を受けることが出来る病院となるよう基本設計を行っていく。