≪質問項目≫
1、政令市神戸市との連携のあり方について
2、兵庫県一般事務職採用における国籍要件について
3、コロナ禍における効果的な広報のあり方について
4、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを活かしたスポーツ振興について
①障がい者スポーツ振興について
②アーバンスポーツの振興について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、政令市神戸市との連携のあり方について
(越田県議)神戸市は大都市経営の視点で行政を推進し、先進的な取り組みにも数多くチャレンジし、全国から注目されお手本となるような都市経営の実績を積み上げてきているが、阪神・淡路大震災の影響もあり「復興」と多額の債務返還に追われてきたことや、人口減少社会に突入し大都市としての活力維持が大きな課題となっている。
井戸知事、久元市長の体制において、県市合同庁舎の設置に象徴されるように、緊密な連携をとりながら産業政策をはじめ様々な二重行政の解消も図られてきた。しかし、都道府県と政令指定市の関係は、中山間地域を含め様々な地域特性の課題に取り組む県の立場と、大都市経営として効率的な行政が重視される政令市の立場では、利益相反したり政策についての理解が得られなかったりすることが考えられる。県民緑税に神戸市議会から疑問を呈する声があがったのはその一例だと思う。
また、県として政策の独自性にこだわるのではなく、先進的な取り組みが多い神戸市の事業を見習ったり、神戸市と連携して県下に事業を水平展開するなどした方がいい分野もある。
齋藤知事は、大阪府財政課長の立場で大阪府・大阪市の改革、二重行政解消の現場を見てこられた。大阪府・市とは地域性や関係性が兵庫県と神戸市とではかなり違う側面もあるかと思うが、知事が大阪で見て経験してきたことを踏まえて今の兵庫県と神戸市の現状や関係をどのようにとらえているのか、また、今後の神戸市との連携にどのように取り組んでいくのか。
(齋藤知事)県と神戸市の関係は、それぞれの行政範囲があり県全体と神戸市のそれぞれの強みを活かしながら連携・協力して様々な共通する課題に対応していくことが基本である。産業振興等の二重行政が生じやすい分野でも、例えば医療産業都市の推進やスタートアップの創出など、互いに連携・協力して関連施策に取り組むことで様々な成果も生んでいきたい。官民連携なども含めて、神戸市はかなり進んできているところもあるので、そういったところは、いい事例は取り入れていくという謙虚な姿勢も大事である。
また、喫緊の課題であるコロナ対策にあっても、神戸市と足並みをそろえていくということも行っているし、例えば宿泊療養ホテルの確保においては、神戸市と県でしっかり連携しながら、今2、000室を確保している。ワクチンの大規模接種会場でも、対象年齢を統一するなど、接種が遅れているといわれている若年層の優先枠を新設するなど、効果的なワクチン対策も今、推進している。
このように、県と神戸市の関係性は、今後は播磨灘・大阪湾ベイエリアの活性化や近隣府県と連携したこれからのインバウンドの回復も含めて観光戦略など新たな取り組みをスタートしていくにあたって、十分活かしていきたい。
(越田県議(再質問))税収の面においても神戸市が県における税収をたくさん払っていながらも、政令市ということもあって、市民にとって一番身近なのは市の存在ではないか。井戸知事の時代は、久元市長との関係もあって、すごく県市協調が進んだように感じる。その部分でも齋藤知事も総務省の先輩である久元市長との関係も先輩ということで委縮することなく、率直にものも言っていただき、連携を深めていただきたい。その神戸市において、県の存在感というものをしっかりだしていく必要もある。県の存在感を示していくという観点において、どういうことができるとイメージされているのか。
(齋藤知事)これから大事なのは広域的な振興という中で、2025年の大阪関西万博をはじめ観光振興、ここをやはり県が広域的な行政を担ってほかの府県との窓口にもなれる立場なので、神戸市としっかり連携しながら、観光振興、そして産業振興、2025年の万博開催に向けて大きな流れを県がリードしながら作っていきたい。
2、兵庫県一般事務職採用における国籍要件について
(越田県議)国は「公務員に関する基本原則により、地方公務員の職のうち公権力の行使または地方公共団体の意思の形成への参画に携わる職については日本の国籍を有しないものを任用することができない」との見解を示している。
逆に言えば、公権力の行使又は地方公共団体の意思の形成への参画に携わる職ではない場合は、地方公務員になれるということであり、実際に本県職員の採用においても、82職種中74職種において国籍要件を撤廃して採用を行っている。日本国籍が必要な8職種は、警察本部における警察官や警察事務職などの6職種と、教育委員会の教育事務職、知事部局の一般事務職となっている。
警察や教育の職種が公権力の行使に直結するということで国籍要件があるのは理解できるが、一般事務職については、全国で11府県で国籍要件がすでに撤廃されており、県下では全41市町が一般事務職採用において国籍要件を撤廃している。
外国籍の方々からこれまでも、一般事務職の国籍要件の撤廃の要望を承る機会が何回もあり、その都度県当局に要望してきた。その際、県当局は、国籍要件を撤廃する上での課題として「一般事務職は公権力の行使又は公の意思形成への参画に携わる可能性が高く、多様な職務を経験しながら昇進していくことが期待される職種であることから①職員が意欲を持って職務精励できるか②人事管理上の運用の中で、適切な措置が講じていけるかといった点を考慮する必要がある」ということを理由にあげて撤廃できないと回答してきた。
意欲や職務精励の課題については、基本的には応募する側の価値観の問題であり、多様な価値観や働き方を県が最初から認めないということはおかしいし、すでに国籍要件がない74職種であっても管理職にはなれない旨を採用条件としていることや、日本国籍の職員でも管理職にならず働いていきたいというものも多く存在しており、幅広い業務がある一般事務職採用において、国籍要件で制限し続ける必要はなく、また人事管理上の運用の課題については一定の基準を設けて適正に運用できるよう配慮すればよいと考える。
社会の多様性を認め、広めていく県の立場として一般事務職採用おける国籍要件を撤廃すべきであると考えるが所見を。
(松田人事委員長)平成17年1月の最高裁判決で、公権力の行使や重要施策の決定に携わる職については、外国籍の方の就任は想定していないとされている。したがって外国籍の方を職員に採用した場合、そのような職に就けないという制約の下で、異動や昇任などの人事上の運用を行うことになる。
しかしながら、一般事務職は県政全般を幅広く担当するジェネラリストを採用するもので、その職務には公権力の行使や重要施策の決定が数多く含まれている。また、幅広い行政課題に柔軟に対応するためには、様々な職務を経験させながら能力を養成することが必要だ。若手職員の段階から本庁では政策立案、地方機関では徴税や用地買収など県民と直接かかわる業務を担当させるジョブローテーションを計画的に実施している。
就けない職が多くあるという制約の下で、このような人事運用が可能なのか、また昇任の機会も限られる中で職員が意欲を持って最期まで職務に精励できるのかといった点を検討する必要がある。
(越田県議(コメント))引き続き検討していただけるとの答弁であったが、議会初日の提案説明の中で、知事は大切にする基本姿勢として「開放性を高める」「誰も取り残さない」「県民ボトムアップ型県政を進める」という3つを示された。まさにこのうちの「開放性を高める」というのは様々な壁を取り払うことだといわれたし、すべての人が力を発揮できる社会をつくるという決意を述べられていた。
また、「誰も取り残さない」というのはすべての県民の方が安心して育ち、学び、働き、遊び、しあわせに生きられる、人に温かい兵庫を目指すといわれた。この件はすでに全国11府県で撤廃されており、県下41市町すべてで一般事務職の国籍要件を撤廃している。こうした状況をふまえ、撤廃に向けて尽力してほしい。
3、コロナ禍における効果的な広報のあり方について
(越田県議)国や地方公共団体の役割としては、新型コロナの現状や見通し等の正確な情報を迅速に収集し分かりやすく発信すると共に、発信した情報が信頼されうるものとして受診され、共感とともに不安を取り除くものでありえるのか、さらに発信した情報によって感染症対策に寄与する行動変容につなげていくことができるのかといった、広報活動によるコミュニケーションの成果を短期的に具現化することが求められている。
そのためには、単に感染者数や病床使用率といった数字だけではなく、変化していく数字から見える説得力のある状況分析や、感染防止対策の取り組みについて科学的な知見に基づき様々な角度で具体的にこうしてほしいといったように、知事自ら生の人間の言葉として県民に率直に語りかけ、対話を積み重ねていくような広報活動に取り組む必要がるのではないか。コロナ禍において広報のあり方が非常に大きく問われている。
兵庫県の広報におけるスタンスは、主体はあくまで情報発信元である各部署で、広報担当はあくまで各メディアへのつなぎや、情報発信に関するアドバイスといった裏方的な役割を担う体制となっている。しかし、コロナ禍という危機管理対応が求められている状況下では、もっと広報部門の専門性を高め、目的の実現に向け現在行っているコロナ対応の広報活動の有効性の検証に基づき、改善を重ねつつ精度を高めていく取組を強化しなければならない。そのためには、健康福祉部門の専門的な見地とともに、県民目線でどのような情報発信が有効であるのか、効果的な情報発信手法は何か、といった広報的な専門的知見を掛け合わせて情報発信を行うことが必要だと思う。
どのような情報発信が効果的なのか、アウトカムの分析や仮説検証、試行錯誤しながら精度の向上を図っていく取り組みをすべきであると考えるが、コロナ禍に対応するための効果的な広報のあり方について、現状の課題認識や今後の取組について所見を伺う。
(小橋企画県民部長)感染症対策本部会議開催時を中心に、広報戦略課と防災部門、医療部門、医療専門家とが連携して発信内容を決定している。具体的には、県のコロナ特設サイトで日々の陽性者数や病床使用率などの数値情報を提供すると共に。Twitterを活用してオンタイムでの発信も続けている。また、知事自ら医療現場に足を運び、SNSやメディアを通じて現場の声や現状の発信、県民への呼びかけを行っている。
さらに、民間登用の広報プロデューサーのアドバイスを得ての情報発信も行っている。例えば、①広報専門員と健康福祉部の医師職員によるmRNAワクチンの開設動画、県公式のYouTubeのチャンネルであるが、再生回数が2万9千回、また②「ひょうごチャンネル」のポスターは多くの事業者から掲示の申し出がある。これらは県が発信する情報への信頼感の表れではないかと考えている。
今後とも、ポストコロナウィズコロナ社会を見据え、幅広い広報媒体を組み合わせることによって、全ての県民に必要とされる情報、躍動の県政の取り組みを届けられるよう全庁一丸となった広報展開を図っていく。
(越田県議(コメント))現状分析と、どういう情報提供をすればいいかというところをしっかり仮説検証しながら。コロナ禍の広報というのは特別扱いでしっかり進めていただきたい。場合によっては県庁の職員、専門家の方にも来ていただいているが、コミュニケーションに長けた外部の広告代理店や外部の力も使って早急に結果が出るような広報に日々改善していく取り組みを強化していただきたい。
4、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーを活かしたスポーツ振興について
①障がい者スポーツ振興について
(越田県議)パラリンピックを見て、障がい者の方でパラスポーツに自らも挑戦したいと思った方が多くいるのではないでしょうか。障がい者がパラスポーツを始めるにあたっては、パラスポーツがどんな感じで自分もできるのか、気軽に体験する機会が身近にあることや、自らの障害特性や能力に応じた種目について、専門家から適切なアドバイスをもらい、競技を選択できるような環境整備が重要になる。そして、パラスポーツを始めた方が、まずは存分にスポーツを楽しむことができるようにして、さらにアスリートとして本格的に協議を極めたいと思った時も必要な環境や支援が提供できるような体制が必要である。
しかし、障がい者スポーツ用の器具は非常に高価なものが多く、スポーツ用の義足や車いすは、数十万円から百万円以上するものもあり、本県においては、気軽に試せるような環境がなく、パラスポーツの普及において大きな足かせとなっている。
ぜひ、県内で様々なパラスポーツ用に用具等を貸出せるように整備し、気軽に参加できる体験機会の提供を行う必要がある。また、障がい者スポーツの指導者や審判員等のサポートをする人材の育成にも取り組む必要がある。ぜひ、東京パラリンピック大会の感動とレガシーを活かした障がい者スポーツの振興策を大幅に強化すべきであると考えるが所見を。
(齋藤知事)今回のパラリンピックを見て、スポーツを通じて自己表現をされている姿は応援すべきであると強く感じた。県では、全国大会への予選を兼ねた「のじぎくスポーツ大会」や全国大会派遣選手を中心とした練習会の開催、講習会開催による指導者等の養成、企業等との「障害者スポーツ応援協定」を活用した練習場の確保など、幅広い取り組みを展開している。
加えて、東京パラリンピックやワールドマスターズゲームズ関西の開催を契機とし、パラアスリートの競技力向上とパラスポーツのさらなる普及を図ることが大事である。これらの事業を展開する中で、パラスポーツを始める或いは継続するにあたり、競技種目によっては装具が非常に高価であることや障害者専用の用具が必要な場合があることなどが課題であることを再認識している。
パラリンピックの報道において、競技開始当初は通常の車いすで参加していたが、本格的に競技をするにあたり競技用車いすを購入したというお話もありました。また、県立障害者スポーツ交流館においても、競技用車いすやボッチャ等の用具を利用できるが、子ども用車いすがないなどの課題がある。
このため、東京パラで高揚しているパラスポーツへの関心とレガシーの継続、発展に向け「ふるさとひょうご寄附金」のメニューとしている「障害者スポーツ応援プロジェクト」への寄附を活用し、体験できる用具等を充実するとともに将来有望な若年選手への用具等の一部助成なども検討していく。また、子どもを含めて障害をお持ちの方がパラスポーツを始めるきっかけ作りや、障害の有無に関係なく共にスポーツを行う環境作りなど新たな施策展開を図っていく。
(越田県議(コメント))レーサー用いす35万円、ランニング用義足100万円など価格が示された資料をいただいた。本格的に協議をはじめるとなれば、用具を購入する必要があるが、多額の出費が伴うため県としてはまず用具を試すことができる環境を整備していただきたい。ふるさとひょうご寄附金だけではなく、県としても予算計上し、障がい者スポーツ振興に取り組んでほしい。
②アーバンスポーツの振興について
(越田県議)東京オリンピックの新種目として採用されたBMXフリースタイルやスケートボードなどアーバンスポーツといわれる新しいスポーツ分野がある。国際オリンピック委員会(IOC)は若者の五輪離れ、スポーツ離れなどに危機感を抱いて新種目として採用したといわれている。
アーバンスポーツの特徴として、音楽やファッション、アートなど若者文化が融合したものとして、従来のスポーツの枠を超えた領域に展開するものであり、競技者もスポーツという側面にかかわらず、遊び、カルチャーの延長線上に捉えているという側面がある。さらに子どもからプロの競技者まで、皆が同じフィールドで練習に取り組む等、風通しの良さがあるともいわれ、時代の変化の中で生み出された新しいスポーツカルチャーの潮流といえる。
東京オリンピックでもスケートボードやスポーツクライミングでは男女ともメダリストが誕生し、大いに注目を集めたことから、新たに協議を始めたいと思う子どもたちや大人も多くいることを踏まえ、このようなアーバンスポーツという新しい分野のスポーツ振興として、競技力の向上だけではなく、新たなスポーツ文化を活かした地域振興や観光振興、健康増進に結びつけることなどに取り組む必要がある。
練習会場や競技会場等のハード整備を進めるための投資等も含め、総合的・戦略的にアーバンスポーツの振興を図っていただきたい。当局の所見を伺う。
(西上教育長)アーバンスポーツは、その名の通リ都市との一体化ということで、広場やストリートが会場となる特徴を持っている。また、スポーツと音楽やファッションが融合した特徴を持ち、これはまちづくりや地域の特色化への活用が期待され、地域振興における魅力あるコンテンツとなる可能性を充分に秘めている。県内でも一部で施設があったり、競技が行われたりしていることを承知しているが、今後どのように振興していくかということになると、正直なところ、これからがスタートといった状況である。
国においては、アーバンスポーツツーリズム研究会が発足し、アーバンスポーツの現状と課題をふまえながら、東京オリンピックのレガシーの継承やスポーツツーリズムの創出などの研究が進められている。本県では、現在、今年度中の策定を進めている次期兵庫県スポーツ推進計画にアーバンスポーツをどのように盛り込むか、その取り扱いをどうするのかについて、県スポーツ推進審議会に諮問している。
今後、こうした議論を踏まえ、県庁内にスポーツ推進本部を設置しているので全庁的な取り組みも検討しながら対応を進めていく。
(越田県議(コメント))アーバンスポーツなど新しいスポーツは地域創生に非常に適した素材であり、スポーツ庁ではスポーツを成長産業化していく動きがある。こうした潮流に乗っていくための体制を県の中で作り、スポーツを活かした兵庫県の活性化に取り組んでいただきたい。