≪質問項目≫
1、知事が目指す躍動する兵庫の姿について
2、食料安全保障について
3、エネルギー安全保障について
4、感染症安全保障について
5、空家活用特区条例の実効性について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、知事が目指す躍動する兵庫の姿について
(松田県議)世界中で猛威を振るう新型コロナの発祥から4年目を迎える。兵庫県では、現在約145万人が感染し、依然として流行の波を繰り返す中、社会活動を加速化している。
2025年には大阪・関西万博を契機に、観光需要の回復の起爆剤として期待されている。また、兵庫県域のベイエリアの将来像や念願であった神戸空港国際化、大阪湾道路西伸部の整備、三宮の再開発等2030年頃には新たな国際都市として生まれ変わろうとしている。
さらに、経済回復として期待される、次世代のクリーンエネルギーである水素サプライチェーンの拠点形成を目指すほか、行政、金融、教育、研究、情報発信の5者で脱炭素社会の推進に関する連携協定を結ぶなど、県独自のモデルの社会構築を進めようとしており、兵庫県の未来性を感じている。
一方、地域社会には高齢化に伴い、人口減少が進み、若者の流出に歯止めがかからず、財政悪化による行政サービスの低下、空き家の増加、コミュニティの維持など地域が抱える課題は複雑化、深刻化している。
今、様々な問題解決に向け、兵庫県としての基本方針「ひょうごビジョン2050」のもと、各種施策を推進し誰もが希望を持って生きられる、一人ひとりに可能性が広がる「躍動する兵庫」を目指し、「新時代への挑戦」と銘打って新年度度予算を編成されている。今こそ知事の手腕が問われている。県民生活が疲弊している中、コロナ禍や物価高騰といった危機をどう乗り越え、その後の知事が目指す兵庫県とはどういう姿なのか見解を伺う。
(斎藤知事)コロナ禍で3年間制限されていた社会経済活動が正常化する。ポストコロナに向けて、兵庫の持つポテンシャルを解き放ち「躍動する兵庫」づくりを加速化していくことが必要である。それが今年度の予算の大きな目標である。その目指す姿の一つは、チャレンジが次々と湧き上がる兵庫である。人や企業などが失敗を恐れず、持てる力を存分に発揮できる環境づくりをしていく。それによって、人口減少等への対応など地域の諸課題に立ち向かうと共に、水素・脱炭素など国内外の社会課題解決にも貢献する、そのような兵庫を創っていきたい。
また、国内外との交流がダイナミックに広がる兵庫県をつくっていくことも大事である。五国の多彩な地域資源に恵まれ、また、関西と瀬戸内海の結節点という兵庫県の優位性がある。2025年の万博、神戸空港の国際化といった大きなチャンスを生かして、若い方々を含めたあらゆる世代の方々が交流し活力を生み出す、そんな兵庫づくりをしていく。
そして、最も大事な土台となるのが安全安心な社会づくりであり、誰一人取り残されることのない兵庫を目指していくということが大事だ。孤立化・孤独化している方々への支援、社会的にも困っている方など、すべての県民が安心して、育ち、学び、働き、暮らせる兵庫を創っていくことが何よりも大事だと思っている。
2、食料安全保障について
(松田県議)食料の安定供給については不測の事態にどう対応するか日頃から具体的な取り組みが必要である。特に海外からの依存度が高い小麦や大豆、飼料作物においては、国内生産の拡大や安全供給のため、施設整備の支援や水田の畑地化などを強力に推進する必要がある。
国の食糧・農業・農村基本計画の2030年度における食料消費見通し及び生産努力目標では、大豆34万トン、飼料用米70万トン、米粉用米13万トン等を生産努力目標として、それぞれ21年比で拡大させる目標を掲げているが、さらに政府は農政の基本理念や政策の方向性を示す食料・農業・農村基本法の改正案を来年度国会に提出する予定である。
県は2030年までのビジョンを策定し、自給率は生産額ベースで国の75%に対し、県は42%を目標にしている。今後、輸入依存から食料安定供給を考えるとき、産地に適した農産物の生産振興からその販路開拓までの伴奏型の支援が必要である。そこで国の基本法の改正に合わせて、県でもしっかりと対応することが今こそ求められる。食料の安全保障・危機管理という観点から県の取り組みについて伺う。
(萬谷農林水産部長)令和5年度からは、構造改革のうち生産面の対策として、広域的な低コスト化に向けたスマート農業機械のシェアリングや有機農業を始めとする環境創造型農業の新たな展開を目指す検討会の設置、また、担い手面の対策として、地域農業に参画する企業や半農半Xなど農に携わる多様な人材が行う取り組みへの支援、そして出口対策では輸出拡大に向け、知事のトップセールスプロモーションを実施して、万博への誘客も含め国内外の販路開拓の一層強化を図っていく。
さらに、それらの基盤となる地域の将来の担い手と農地利用を具体化できるよう、地域に寄り添いながら地域計画の策定を支援していく。現場の状況に応じてやるべきことをしっかり進めていきたい。
現在、農林水産政策審議会では、ひょうご農林水産ビジョン2030策定後に顕在化した課題の一つとして「食料安全保障」を捉えて、今後の対応策について議論いただいている。今まさに答申のとりまとめを行っている。
今後は、国の食糧・農業・農村基本法の改正に向けた動きを注視するとともに、農林水産政策審議会からの答申を踏まえ、食料安全保障の強化に向け、将来に向けた本県農林水産業へ強固な生産基盤づくりを進めていく。
(松田県議(再質問))我々都市部の消費者はお金を出せば自由に食材が買えると思っていたが、昨今のロシアからウクライナへの侵攻を考えてみると、本当に当たり前と思っていたことがそうではない、そういう時期に来ている。一つの提案だが、生産者に対して食料が安定的に供給できる仕組みを考える時期が来ていると考えるが。
(萬谷農林水産部長(再答弁))都道府県の食糧自給率を考えると生産は県内、ただし、消費の方は県内に限らず計算されてしまうので、人口が多いとそれだけ自給率は下がるということになる。
私共としては、食料自給率を視野に置きつつも、生産力の向上を考え進めていきたい。例えば米の生産を考えてみると、兵庫県産のお米で兵庫県民に供給できている量は約半分ぐらい、、つまり県民のニーズに対して生産する農地が少ないということになる。安定的に供給できる役割りとなると、少しでも生産力を強化するというようなことを考えていきたい。
3、エネルギー安全保障について
(松田県議)日本では、コロナ禍、原油高円安などが日本経済にとって大きな影響を及ぼしている。特にエネルギー分野においては、一次エネルギーの自給率が現在12%と主要国の中では35位と低い水準となっており、海外からの輸入、化石燃料の比率も84%と大きく依存している。経済安全保障の観点からも、一次エネルギー供給の国産化をいまこそ協力に推進し、年間20兆円に及ぶ資源エネルギーの海外依存からの脱却が求められている。
そのためには、徹底した省エネや再エネの主力電源化、脱炭素の取組等を通して、将来的に原子力発電に依存しない社会、そして国際紛争や大規模災害にも左右されない安定的な供給が望まれる。国は、エネルギー基本計画において、2030年度におけるエネルギーの需要見通しを示しており、再生可能エネルギーについては、研究開発の成果を踏まえ電源構成で36~38%程度を目指し、2013年度比で46%の温室効果ガス削減を目指そうとしている。
県は2030年度までの温室効果ガス排出量削減を2013年度比-48%、再生可能エネルギー導入による発電量100億Kwhと目標を強化したところは評価するものであり、水素社会の実現に向けてもしっかりとしたビジョンを持ち進めるべきである。
次世代のエネルギーである、水素社会の実現に向け、播磨臨海部におけるカーボンニュートラルポート形成計画の策定に取り組むなど大きく動き出している。そうした温室効果ガス削減を実現する水素社会の構築に向け、今後どのように全県に広げようとしているのか所見を。
(斎藤知事)水素が安全保障に寄与する理由の一つとしては、エネルギー調達を多角化できるという点にある。石炭、それから天然ガスなどの化石燃料は産出国にかたよりがあるということ、これは国際情勢や地政学的なリスクが大きいという形になる。一方、これに対して水素は再生可能エネルギーや褐炭などのこれまであまり利用されていない、未利用資源から製造や輸送ができるため、広く世界中から調達が可能になる。
このため、水素の受入、それから供給拠点の形成などを含む、播磨臨海地域におけるカーボンニュートラルポートの形成計画の策定といういうものを現在進めており、今年の夏ごろをめどに取りまとめたいと考えている。そして、水素サプライチェーンの構築をめざしている関西電力、川崎重工は姫路エリアでやりたいとしている。あと神戸市も。神戸港を中心とする取組、この連携がすごく大事だと思っているので、そういった官民連携の取り組みも進めていく。また、水素製造に今力を入れているのはオーストラリア。先日、西オーストラリアのマガウワン首相も来られたが、そういった海外とのパートナーシップも県がやれることはやっていきたい。
そして、安全保障に寄与するもう一つの理由は、今後増える再生可能エネルギーの能力を最大限生かすということで、水素が有用なためであるが、電力は需要と供給を絶えず一致させる必要がある。今後再生エネルギーが増えると出力の制御の頻度が上がる。そこで大量に長期に保存することが可能な水素の特性を生かして、余剰する電力を活かして、そこから水素を製造・貯蔵し、必要なときに利用できるので、余剰電力を活用して、かつエネルギー自給率を高めるということが重要になる。
このため、現在、県内で再エネの比率が高いのが淡路島なので、淡路をフィールドにして、余剰電力を活用して水素の地産地消を行うための調査を行っている。来年度、実証に向けて取り組む予定で、そこで得られた知見を他の地域にも展開していきたい。
(松田県議コメント)ほとんどが化石燃料に頼っているという状況の中で、石炭が25%、石油が37%、天然ガスが23%、計84,85パーセントになる。原子力が2.8、水力は3.5、再エネがまだ10%いくかいかないかという状況である。知事が答弁されたように、次世代エネルギーの水素の活用というのは、私は兵庫県の将来を変えてもいいぐらいの大きな転換であると思うので、ここはしっかり行っていってほしい。
4、感染症安全保障について
(松田県議)県では新型コロナウイルスの流行抑制のため先進的な未知のウイルスの研究が扱える神戸大学の研究室の調査を支援した。重症化コロナ病棟を開設していた、県立加古川医療センターの協力を得て、コロナ感染歴がありワクチンを2回接種した患者の血液を採取し、中和抗体をつくる膨大な細胞を分析するなど、中和抗体に適する研究を継続した結果、これらで得られた知見をもとに、他府県にはない最先端の情報を得ることができた。
オミクロン株に変異してから肺炎による死亡や重症化は減少したものの、発生数が多いため死亡総数は高くなっている。インフルエンザの死亡数は年間3千人程度ですんでいるのは、ワクチン接種やタミフルのような特効薬があるためである。新型コロナ死亡者数は、発生依頼すでに7万人を超えている。一方、新型コロナは抗体で重症化は防ぐことができるものの、変異が早いため抗体の効果が減少し、どんな変異株でも対応できる抗体をつくる必要があった。
研究の結果、昨年10月に神戸大学研究室がBA・5を含め全変異株に効果があるユニバーサル中和抗体の開発に成功したと発表した。そのことで発症や重症化を防ぐ治療薬につながることが大いに期待されている。しかし、画期的な中和抗体が発見されても、製薬として実用化されなければなんの意味もない。そこで、今までの研究成果をどう評価しているのか、また、産官学連携による研究開発の支援などをどのように取り組んでいくのか。
(山下保健医療部長)新たな治療薬の開発については、国が戦略的に推進し、有望な治療薬開発を重点的に支援することとしているが、県としても、十分な研究費の安定的かつ長期的な確保、薬事承認プロセスの迅速化等を引き続き国に働き掛けていく。また、産官学による研究開発を支援する県独自の枠組みである、成長産業育成コンソーシアムや研究開発支援事業の活用などを開発状況に応じて提案しながら神戸大学の取り組みを後押ししていく。
新型コロナは、5月8日以降5類の位置づけとなる予定だが、県としては、これまでの経験や教訓を踏まえつつ、必要な対策や知見の科学的根拠に基づいた、正しい情報の発信を実施するなど、今後とも感染症対策の推進に努めていく。
(松田県議(再質問))産官学連携による支援を後押しするとのことだが、何らかの立ち上げを予定しているのか。また、これまでの研究への評価は、ユニバーサル中和抗体の発見は、素晴らしいことだと評価されていることはありがたいが、これまで神戸大学に対していくらぐらいの支援を行ったのか、費用対効果はどう考えているのか。
(山下保健医療部長(再答弁))研究スタートの支援として3年間の支援を行うこととし、総額185百万円の支援を行った。国は、いろいろな結果に基づいて、非常に重要と判断したものに対しては、国家戦略として重点的に支援するとしているため、県から国への働きかけを行っていく。神戸大学に対してはしっかりとアピールしていただきたいと考えている。
県から神戸大学に直接的に膨大な資金を継続的に支援していくことは難しいが、創薬は長い道のりとなるため、様々なベンチャー企業や製薬会社とつないでいくというところで県の役割を果たしていきたい。
(松田県議コメント)5月8日以降、感染症法上の位置づけが変わるが、今後も感染の規模や時期も予想できない。今から20年以上前にインフルエンザが流行した際にも、治療薬や検査キットがなく、多くの高齢者の命が奪われることとなった。そういった経験があるため、医薬品の開発は極めて大事だ。
そういった中で、感染症から県民の命を守るということは、知事が言われている「誰一人取り残さない」ことになるが、多くの患者が亡くなっている状況にあることから、県はもう少し強く後押しするべきである。資金を出す、出さないではなく、県にはほかにもいろいろなお手伝いができると思っている。それが県民に応えることであり、新時代への知事の挑戦がそこにある。
5、空家活用特区条例の実効性について
(松田県議)県では、「空家発生予防の手引」を作成・配布するなど、これまで様々な取り組みを行っており、この手引きにも記載のある空家の適正管理についてのチラシを固定資産税の納税通知書等に同封するなどの啓発が28市町で進められている。さらに、昨年4月には全国初となる規制緩和規定を含む「空家活用特区条例」が施行され、その活用が大いに期待されるところだ。
しかし、この条例は市町がある一定の区域を決め、県が特区指定すれば、住宅の建替や商業施設等への用途変更の規制緩和等を可能とするものである。国も居住目的のない空家がこの20年で約1.9倍に増加し、今後2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、居住目的のない空家が420万戸程度となると推計されている。
認知症等の増加等により空家の所有者の特定が困難になり、地域社会に悪影響を与え、活力を阻害する空家を未然に防止するため、国では空家等対策の推進に関する特別措置法の改正を検討している。この法改正は、空家の活用の促進区域を市町が決め、他の施設に転用しやすくするもので、施行後5年間で100区域を目指すとしている。
しかし、県の条例、国の特別措置法の改正も空き家活用に重点が置かれているため、いったん空家になると管理不全に陥ることになり、流通や活用がさらに困難になるため、空家がいっこうに減らない原因となっている。この法改正では主勇者責任の強化として、国・自治体の施策に協力する努力義務が追加され、また、特定空家となる恐れのある空家に対し、市町が指導・勧告でき、勧告された空家は固定資産税の住宅用地特例を解除できることとなっている。
私は以前から質問しているように、管理責任が明確になっている以上、空家になる前の予防策として市町に対する届け出を義務化することの条例改正を検討するべきであると考えるが所見を伺う。
(西谷まちづくり部長)県では議員からご指導もいただき、空家活用特区条例を制定した。条例の中では、特区内の空家所有者からの届出も義務化しており、4月から施行している。県でも市町に特区指定の働きかけを行った結果、現在2市から特区指定の申出を受けており、今年度中に指定する予定で手続きを進めている。更に複数の市町でも指定に向けた検討が進められている。
ご提案の空家になる前の予防策としての届出義務化については、所有者からの届出の処理、未届けへの対応等、市町の負担が大きい点が課題である。空家の所有者に対する届出の義務化について、市町にアンケートした結果では、届出が期待できない、空家の特定が難しい、業務量に見合った効果が見込めない等、消極的な意見が多数であったので、空家になる前の届出義務化では、さらに業務量が増えることから市町の理解を得ながら検討する必要がある。
このため、まずは特区内での届出義務化制度の運用実績を積み重ねて、特区指定による効果の検証を行うと共に、その成果を広く県民や市町に発信することで、特区指定の拡大に努める。
(松田県議(再質問))私は空家を減らすというよりは空家をつくらない、こういう方向に政策を展開していく必要がある。今、2市が手を挙げておられ、これから特区に向けて県が指定することになるが、手をあげている地区がどういう状況かというと、そこに区域を決めるだけの要素があるわけである。そこに観光地があるとかというところに対して一定の区域を決めて、そこに旅館を持ってくるとか商業施設を持ってくることに意義がある。
けれども、空家を減らそうと思うと、そういうところばかりではない。それを待っていたら、いくらでも空家が増えていく。所有者の責任のもとで空家になる前に届出をするということを、市町の負担を県が行うなどして、本気でやらなければならない。
(斎藤知事)予防策として、観光地以外のところでも空家がなるべく出てこないようにしていくことが、本当に大事である。これは観光のみならず、地域コミュニティの安全・安心のためにも大事なことだ。移住がだんだんと増えてきている中で、住むところとなる空き家がなかなか見つからないという声もある。その一方で、空家が増えてきているという状況もあり、そのミスマッチをしっかりと解消していくことがこの条例の一つの目的でもある。まずは各市町に首長さんを含めて条例について今一度、プロモーションして、そして活用していただくということをやっていきたい。