議会質問(代表・一般)
Parliamentary questions
第347回(令和2年2月)定例県議会
代表質問
谷井いさお県議
[質問項目]
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1. 新型コロナウイルス感染症への対策について
質問と答弁のダイジェスト
(1)新型コロナウイルス感染対策について
[谷井県議]政府は、2月14日に新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策を閣議決定した。
その内容は
①帰国者等への支援
②国内感染対策の強化
③水際対策の強化
④影響を受ける産業等への緊急対応
⑤国際連携の強化等
の5項目からなっており、国内のウイルスまん延を防止するため、患者を確認した場合に診療体制の整った医療機関につなげる「帰国者・接触者外来」を各都道府県に設置することや「帰国者・接触者相談センター」を設け、感染の疑いがある場合に適切な対応を助言することとなっている。
また同日、今回の事態を踏まえて我が会派をはじめ自由民主党、ひょうご県民連合の3会派で、新型コロナウイルスへの対策に関する申し入れを行い、知事から対策を速やかに実施する旨の回答をいただいた。
県においても我々からの申し入れや、国の緊急対応策に迅速に呼応し、2月14日夕刻に新型コロナウイルス緊急対策を実施することを発表している。さらに2月20日には、追加対策として入院医療体制の強化などを柱とする補正予算を編成する旨を発表された。近隣府県でもすでに対策本部を立ち上げたところもある中で、本県でも現在の感染症警戒本部をすみやかに知事をトップとする対策本部に移行し、県庁全部局が一丸となって取り組めるように体制を強化すべきである
ほかにも、県主催の大型イベント自粛の検討やマスク不足が深刻化しているといわれているが、県が防災用に備蓄している20万枚のマスクを介護施設等の不足している施設に配布し、施設の職員に配布することで介護施設・障がい者施設等へのウイルス持ち込み防止の徹底を図ることなどを含め、今、しっかりとした対策をとることが重要だ。
そこで、県民の安全と安心を確保するために、県として新型コロナウイルス感染症に対するまん延防止対策や医療提供体制の構築について、どのように取り組んでいくのか。[井戸知事]まん延防止対策として、国内1例目の患者発生を受け、県民に咳エチケットや手洗い等の感染対策の重要性について知事メッセージを発表した。その後、集客施設や高齢者施設等へ注意喚起を行うとともに県ホームページで適切な情報を提供している。
さらに近畿圏内初の患者発生を受け、健康福祉事務所12カ所と県庁に電話相談窓口を設置し、24時間体制で対応してきた。さらに、帰国者・接触者相談センターを設置し、診療体制が整った帰国者・接触者外来に疑いのある症例を確実につないでいる。
医療提供体制の構築については、外来の診療体制強化のため帰国者・接触者外来に動線分離のためのパーテーションの設置や更なる入院病床確保のため、簡易陰圧装置を整備する。マスクの不足に対しては、医薬品卸業協会や医療機器協会に円滑な供給を依頼し、国へも在庫不足や偏りの是正を申し入れている。なお、県が防災拠点で備蓄しているマスクは、災害時に避難所や被災自宅の清掃等の際に防塵が必要となる被災者向けに提供することを想定している。
県内で患者発生の際には、知事を本部長とする対策本部を立ち上げ、不要不急のイベント延期や学校の臨時休業措置等の検討、24時間体制のコールセンター設置、濃厚接触者への健康調査と保健指導等を実施する。 -
2. 第二期兵庫県地域創生戦略における効果的な事業の推進について
質問と答弁のダイジェスト
(1)第二期地域創生戦略の策定と展開方法について
[谷井県議]第一期地域創生戦略では、人口減少と東京一極集中という構造的な課題を克服するため、自然増対策としての子ども・子育て対策と健康長寿対策、社会増対策、東京一極集中の是正を目指す地域の元気づくりの4つの対策に取り組んでこられた。しかしながら、20代の若者を中心とする転出超過や女性人口減少、50歳時未婚率の上昇に伴う出生数の減少に歯止めをかけることができていないのが現状である。
その結果、本県の転出超過は2018年の5,330人から2019年では6,038人と708人増え、転出超過が拡大している。
本県から大阪府への転出は3,302人、東京圏への転出は8,716人であり、東京圏への歯止めも重要だが、大阪府への転出にも意識した地域創生戦略を実行するべきである。
そのためにも第二期地域創生戦略の立案に関しては、第一期の戦略目標が達成できていない原因の詳細な分析を徹底し、真に人口の自然増、特に社会増に結び付く施策の効果を適切なアウトカム指標で評価するなど、戦略や事業の実効性を高める斬新な取り組みが必要ではないか。
第二期地域創生戦略の対策では、まず1点目に「地域の元気づくり」を掲げ、展開方法では8つの地域プロジェクト・モデルを展開されようとしているが、まさにこれからのプロジェクト内容が地域ニーズに合致しているのか、さらなる検証が必要ではないか。具体的な施策は、今後策定されるアクションプランに示されると思うが、2030年までの前半の5か年で本県の地域活性化の大きな潮流を起こすような大胆かつメリハリがある予算編成を行い、知事を先頭に全部局が心ひとつに全力で取り組むことができる地域創生戦略にすべきと考えるが所見を伺う。[井戸知事]これまでの取組では、20歳代前半の転出超過数が拡大するなど数値目標は達成できていない。一方、移住希望者の増加等の明るい兆しも生まれた。人口対策は長期的な取り組み。今後も必要な対策を立案し、人口の定着・環流につなげ、次の5年間で少なくとも日本人の転出超過を解消したい。
このためには、県内就職の促進はもちろん、地域の魅力を高め外部からの人口流入を拡大する必要がある。特に、阪神間は大正時代から大阪で働く人々の住宅地として発展してきた。まちのリノベーションにより、豊かな自然、洗練された文化、教育環境の良さを活かし質の高い暮らしを実現できる、住みたい暮らしたい地域としての魅力を高める必要がある。今後、仕事は大阪でも生活は兵庫という潮流をつくりたい。
第二期戦略ではこれまで以上に、五穀の個性を活かした魅力ある地域づくりに取り組んでいきたい。このため、第一の戦略目標を、地域の元気づくりとし、第二に社会増対策、自然増対策として、第三に子ども・子育て対策、第四に健康長寿対策とした。地域プロジェクトモデルについては地域の参画を得ながら、新たな視点やニーズを踏まえ充実・追加していく。
施策の推進にあたっては喫緊の課題である
①若者の就業
②女性の定着・環流
③外国人材の活躍
④関係人口の創出をテーマに部局横断で取り組む。
もちろん、こうした対策を行政だけでは成し遂げられない。取り組みの主体となる県民や企業等との意見も聞きながら進めていく。(2)私立高等学校授業料無償化の更なる拡充について
[谷井県議]4月から国による年収590万円未満世帯の私立高等学校授業料の実質無償化が実現する。つまり、高等学校等就学支援金の制度改正によって私立高等学校等に通う生徒への支援が手厚くなる。一方、国の制度では年収590万円未満世帯については、私立高等学校授業料が実質無償化となるのに対し、年収590万円以上910万円未満世帯は支給額が118,800円となっており、所得のわずかな差によって世帯の授業料負担に大きな差が生じるという課題は知事も承知いただいていると思う。
そうした懸念を払拭する上でも、我々公明党・県民会議議員団は過日知事に対して行った、私立高等学校生等生徒授業料負担軽減策の拡充に関する申し入れや、来年度当初予算編成に対する申し入れにおいて、本県でこれまで独自に私立高等学校授業料への支援制度を創設し支援してきた県単独事業費約10億円が国の制度でカバーされることから、こうした財源を活用してより多くの世帯が恩恵を受けられるよう、年収590万円以上の世帯への支援と、私立高等学校授業料の全国平均が約39万6千円であるのに対し、本県の平均は約40万8千円であることからその不足額を補う新制度を創設するよう提言した。
特に注意すべきは近隣府県で、大阪府や京都府などとの比較である。県内から京都府の私立高等学校に通う生徒には、県内私立高等学校に通う生徒に比べて2分の1、同じく大阪府、岡山県、鳥取県の私立高等学校に通う生徒には4分の1しか助成されない。他府県に通う高校生も県内私立高等学校に通う生徒と同様の助成に拡充すれば、子育て世代の転出を防ぐ一助になるのではないか。そこで、私立高等学校授業料無償化の更なる拡充が必要であると考えるが所見を。[井戸知事]国の制度見直しに合わせ、県では令和2年4月から、年収590万円未満の世帯を対象に、県内私立高校の平均授業料まで国の上限額に上乗せ補助を行い、実質無償化を実現する。あわせて、年収590万円を境に所得のわずかな差により生じる授業料負担を縮小するため、年収910万円未満の世帯について新たに所得に応じて2段階で加算した県独自の授業料軽減を行う。
また、県では子どもたちが住所地に近い場所で教育を受けることが望ましいとの考えから、授業料軽減補助については県内補助を基本としているが、交通環境の変化や多様な学校選択等を踏まえ、近隣府県に通学する生徒への補助も行っている。県外補助については相互主義の考えの元、通学先の府県が兵庫県内に通学する生徒に同様の補助をする場合は県内通学者の2分の1補助、補助がない府県に対しても4分の1補助としている。
今回の国の見直しにより、県内外どこの学校に通っても年収590万円未満世帯については全国平均授業料並みに補助上限額が引き上げられることから、通う学校による支援格差は大幅に解消されたと認識しているまた、県独自の授業料軽減についても、県外通学者も対象を910万円未満世帯まで拡充した。 -
3. 訪問看護療養費の助成実現について
質問と答弁のダイジェスト
[谷井県議]訪問看護療養費の助成対象は、障がいの程度が身障者手帳1級・2級の身体障がい者、療育手帳A判定の知的障がい者、精神障害者保険福祉手帳1級の精神障がい者で所得制限は市町民税所得割23.5万円未満の方となっている。
病気やケガをして医療機関等を受診した場合の一般医療について、通院の場合は一医療機関等あたり1日600円(低所得者は400円)を限度に月2回までが自己負担、入院の場合は定率1割負担、負担限度額月額2,400円(低所得者は1,600円)までとなっている。財源の負担割合は県と市町で1:1の折半を基本としつつ市町によって上乗せ助成を行っているケースもある。
本制度は重度心身障がい者の方の保健の向上と福祉の増進に大いに役立っているが、ひとつ大きな欠点がある。それは、助成の対象から訪問看護療育費を除いていること。その理由として訪問看護は治療行為ではないとして、保険診療であっても医療費助成の対象対象外となっている。
しかしながら、全国の都道府県が実施している重度障害者医療費助成事業において、訪問看護療養費を助成対象としていないのは全国で唯一兵庫県の身となっている。介護保険の対象年齢に達していない場合、訪問看護により病気療養を行うと、訪問看護費用が多額となって支払えなかったり、同居家族に多大な負担を強いているケースがあると伺っている。
そのため、過日、我が会派は知事に対し障がい者の生活基盤の充実に関する申し入れを行い、重度障がい者が訪問看護ステーションによる訪問看護や訪問リハビリを利用する場合の利用料を助成するよう求めたところである。
健康福祉分野において、常に全国をリードする先進的な事業に取り組んできた兵庫県において、大きなハンディキャップを負っている重度心身障がい者への支援制度の内容が、他府県に比べ大きく劣っている現状は看過できない。来年度当初予算では、訪問リハビリについては補助対象とすることが示されている。さらに、令和2年度中に全ての訪問看護療養費を助成の対象にすべきではないか。[井戸知事]介護保険制度創設や在宅医療の進展により、重度障がい者に対する訪問看護ステーションの役割は少しずつ変化していることから、本県では在宅で生活する遷延性意識障がい者で介護保険の対象外となるものや、医療的なケアが必要であるが通院が困難な重度の肢体不自由と知的障がいをあわせ持つ障がい者を対象とした訪問看護ステーション利用料の一部助成事業などの個別事業を実施することにより、この変化に対応してきた。
さらに来年度からは、脳性まひ等肢体不自由児者の身体機能の維持と頸椎症等の二次障害防止を目的としたリハビリ受診促進のため、市町民税所得割23・5万円未満の身体障害者手帳1,2級の重度肢体不自由児者を対象に、今年2月に診療開始した県立障害者リハビリテーションセンター等の医療機関と連携して訪問リハビリを提供する訪問看護ステーションの自己負担が1割となるよう利用料の一部を助成する事業を開始する。
訪問看護療養費への助成は、居宅で生活する重度障害者等の実態やニーズ把握を十分に行い、実施主体となる市町や関係機関の意見を聞きながら検討していく。
一般質問
伊藤勝正県議
[質問項目]
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1. 多胎育児の支援について
質問と答弁のダイジェスト
[伊藤県議答弁]双子以上の多胎妊娠は、近年の不妊治療技術の進展と治療の普及により、この30年間で2倍となったともいわれ、多胎育児の問題も徐々に認知されることとなったが、その支援となると充分とは言えない。
ある子育て支援団体の多胎育児に関する調査では、「外出・移動が困難」との回答が約9割にのぼった。ファミリー・サポート・センター事業などが展開されているがサポート役の自宅まで行くことが困難なため、その制度を利用できる多胎家庭は少ないことが浮き彫りになった。多胎家庭の自宅に出向いて育児や家事を支援するアウトリーチ(訪問)型の支援や通院や健診時の動向など伴奏型の支援は欠かせない。
それ以上に重要となるのが、産後の多胎育児支援に結び付けていくために妊娠期から病院や自宅を訪問して創り出す母親との信頼関係である。特に、外出困難な多胎家庭は長期間にわたり孤立する傾向にあり、産後うつになってからの多胎家庭との信頼構築は困難だ。
ある多胎支援サークルが実施したイベントに参加した妊娠中の家族へのアンケートでは、参加して良かった点として、多くの参加者が多胎育児の先輩から双子がいる暮らしや育児の体験談が聞けたことを挙げている。その家族の多くは産後も支援サークルが開催するイベントへ参加しており、孤立が防止できているといえる。このような活動をされている団体は兵庫県には全国最多の17団体あるが、そのほとんどがボランティアであり頭が下がる思いだ。
今回の国の多胎育児に特化した支援策は、多胎という言葉を表出し従来からの支援策を拡充・推進しようとするものだが、本県でも実施主体である各市町への財政的な支援や人的支援、アウトリーチ支援など多胎家庭への直接支援や支援団体・ピアサポーターへの活動支援など妊娠期から切れ目のない多胎家庭支援を充実させていくべきではないか。[井戸知事答弁]市町では妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行っている。「子育て世代包括支援センター」が設置され、保健師等が妊娠・出産・育児に関する相談・指導を行っているのが実情である。
特に支援が必要な多胎育児家庭については、まず、妊娠段階から「養育支援ネット」により医療機関と連携して早期に把握され、対応していくことになる。その次の「産後ケア事業」により育児支援や宿泊による休養の機会等が提供される。そして、専門的相談支援や保育士等による育児・家事援助を行う「養育支援訪問事業」等支援の充実が図られている。
いくつかの段階でそれぞれ手は尽くされているが、ご指摘のように十分に行き届いていない状況もある。現在、多胎児教室の実施等支援を実施しているのは20市町に限られているが、そのうち7市町が、多胎育児経験者等で構成する自主活動グループ「ひょうご多胎ネット」と連携している。母親の信頼を得やすい多胎育児経験者による支援は有効である。今回の国の支援策として拡充された交流会や訪問相談等を行うピアサポーターとして、これらの方々が活用されるよう市町に働きかけていきたい。
また、身近な育児相談の場である「地域子育て支援拠点事業」や「利用者支援事業」を活用して多胎育児家庭への相談・情報提供をさらに強化していきたい。 -
2. 実効性ある豊かな海づくり施策について
質問と答弁のダイジェスト
[伊藤県議答弁]令和3年、第41回全国豊かな海づくり大会が本県で開催されることとなり、地元市の明石市、漁業関係者をはじめ多くの方々が、豊かで美しい海づくりへの大きな一歩となると期待がよせられている。この大会が、豊かな海の重要性とその再生への取組を全国民、全県民に広く知ってもらう機会となるよう、1年前プレイベントなどにより開催機運を高め同一県で全国初の二度目の大会を成功させなければならない。
平成27年、漁業関係者の悲願でもあった改正瀬戸内海環境保全特別措置法が施行され、海域ごとの実状に応じた管理により豊かな海づくりを進めていくという基本理念が新たに定められ、その理念をいかに実現していくかという新たな段階を迎えた。平成30年には、日本水産資源保護協会が水産動植物の正常な生育および繁殖を維持し、その水域において漁業を支障なく行なうことが出来、かつその漁獲物の経済価値を損なわないための、「水生生物の生息環境として維持することが望ましい」基準である、水産用水基準について「全窒素0.2mg/L以下・全リン0.02mg/L以下の海域は、閉鎖性内湾では生物生産性の低い海域」と改定した。本県の瀬戸内海海域は、この基準を大きく下回る「漁船漁業に適さない海」となり、漁業関係者に危機感が強まった。
知事は平成30年12月定例会の私の代表質問に対し、瀬戸内海を豊かで美しい海にするための要件として、適切な栄養塩の供給と生物生息域の再生や創出の2つを挙げられているとおり、県では、漁場整備の推進とともに、県下14か所の下水処理場での季節別運転をはじめ、昨年にはその実効性を高めるための栄養塩濃度の目標を設定する環境条例を改正し、あわせて下水処理場のBOD上乗せ排水基準を撤廃した。しかしながら、現実は下水処理場の放流水の栄養塩濃度を高めるだけでは、貧栄養化は解消されず、イカナゴ漁も昨年と同様に不良の恐れがあるとされ、実効性のある施策展開が待ったなしの状況である。
その実効性を高めるためには、大阪湾北東部沿岸とそれ以外(兵庫県沖含む)との栄養塩濃度の差の解消や更なる栄養塩の供給に向けた施策の展開など、隣接府県や国の関係省庁と連携を図って解決していかなければならない課題も少なくない。先日、国では農水省・国交省・環境省の大臣級による省庁横断の検討会議も行われたと伺っており、県も来年の全国豊かな海づくり大会に向け、実効性のある施策とそれを実行する部局の垣根を越えた更なる取組が不可欠ではないか。所見を伺う。[井戸知事答弁]豊かで美しい瀬戸内海の再生には、安定的かつ継続的な栄養塩供給拡大が必要である。このうち、生活系では下水処理場35カ所のBOD上乗せ排水基準を撤廃し、現在14カ所で取り組んでいる季節別運転の拡大を図っていく。特に昨年度より窒素濃度が高まっている県加古川下流浄化センターでは、さらなる運転方法の改善のほか、施設改善についても専門家の意見を聞きながら検討を進めている。産業系については、県内工場での製造過程や排水処理の見直しなどの取組事例を収集しているので、栄養塩供給ガイドラインの3月末までの完成を目指して、工場の協力も得たいと考えている。
あわせて、豊かな森づくりやため池のかいぼり、藻場の造成、海底耕うんなどを進めていく。今回、最終補正予算で漁協の協力の元に海底耕うんを行う事業を拡充することにしている。海域のモニタリングや栄養塩循環メカニズムの研究も行っていく。
また、豊かな海づくりについての研修会や季節別運転に関する連絡協議会を開催して、季節別運転に関するノウハウの蓄積と情報共有を進めていく。このように、下水道、農林・水産、環境の各部局、市町、農林漁業者等が連携して陸からの栄養塩の供給拡大にも取り組んでいく。
一方、国では、平成27年の瀬戸内法の改正後、栄養塩管理の明確化、制度化が検討されている。中央環境審議会の答申案では、栄養塩濃度の目標値の設定や季節別運転の推進など、本県の取組と提案が盛り込まれている。今後、法改正や栄養塩管理方策への支援について、瀬戸内海再生議員連盟や瀬戸内海環境保全知事・市長会議と共に国に働きかけていく。
来年の秋には、全国豊かな海づくり大会が本県の、明石市で開催される。絶好の機会であり、県民一体となって機運を盛り上げていく。 -
3. ひょうご住まいの耐震化促進事業について
質問と答弁のダイジェスト
[伊藤県議答弁]1月の各会派政務調査会で住宅耐震化の進ちょく状況を伺ったところ、5年に1回の住宅・土地統計調査の数値しかわからず、最新データは平成30年調査分で、集計中であるが耐震化率90%近くまでに改善しているのではとのことだった。確かに、平成28年度から2期目となる兵庫県耐震改修促進計画により、市町が主体的に実施し補助メニューも市町が行う補助に一本化されたことから、実態が把握しにくい面があるとはいえ、年度ごとの県の助成や件数や新築着工数から進ちょくはある程度把握できるはずである。
また、当初計画で設定された目標・平成27年耐震化率97%も、第2期計画では10年間先延ばしされ、その計画では平成25年からの12年間で耐震化率を約12%向上させる、つまり1年あたり耐震化進ちょく率は1パーセント程度、戸数は約2万3千戸で目標達成とされている。しかしながら、これらの数字には耐震改修された住宅に加え除却や住替えによる進捗も含まれていることから実際に耐震改修の再演が必要な住宅に目が届きにくい状況である。耐震化率の管理も必要だが、経済的な事情等により建替えや改修ができず耐震性が不足する住宅に住まわれている人の命を守る取組を進めていくべきである。
また、25年前の被災度合いで耐震化率に地域間のバラツキがある。「大規模地震はどこでも起こりえる」が阪神・淡路大震災の最大の教訓の一つではないか。市町が進める耐震化についても県下一律の支援ではなく、地域に合わせた支援メニューとしたり高齢世帯には耐震性が確保された安全な住宅への住み替えや防災ベッドも積極的に推進するなど、地域や住まわれている人の実態に合わせてきめ細やかな支援を行い、まったく何も対策していない住宅を実質的にゼロにする意気込みで協力に進めることが、阪神・淡路大震災を経験した本県の使命だと考えるが所見を伺う。[出野上まちづくり部長答弁]これまで、補助を活用して約5,200戸の住宅で、耐震改修工事等が実施された。また、個別訪問やポスティング等により、年間約3万5千戸の住宅の耐震化を働きかけてきた。
この結果、平成30年の耐震化率は速報値で89%、目標値97%を達成するための平成30年時点の中間値90%と比べると、1%低いものの率的には概ね計画どおり進ちょくしているものと考えている。しかしながら、アンケート調査によれば、旧耐震住宅に住む人の約半数が耐震診断や改修工事を実施しておらず、その7割は60歳以上であるとの結果もある。実施していない主な理由としては、改修費用が高価なことや分譲マンションにおいては、資産価値低下の懸念から改修に向けての合意形成が困難なことが挙げられており、さらに取組を加速させる必要がある。
このため、来年度1つには詳細な耐震診断に基づく改修工事費の低減モデルを紹介するパンフレットを作成して、市町の個別相談会等でPRしていく。2つには、旧耐震住宅の多いオールドニュータウン等において、地元の建築士、市町職員と自治会役員が一緒になり、高齢世帯を訪問し経済的負担の少ない対策をアドバイスする取組を実施していく。さらには3つ目として、明舞団地で実施するモデル検討を踏まえ、マンションでのピロティ補強や一室だけの補強等の部分改修工事への支援を検討するなど取組を充実させていく。 -
4. 県立がんセンターの建替整備計画について
質問と答弁のダイジェスト
[伊藤県議答弁]昨年3月の「県立がんセンターのあり方検討委員会」での現地建替が望ましいとの検討報告に基づき、今年度に基本計画を策定することとし、昨年12月に基本計画案の発表があった。
新たに整備されるがんセンターは、県内のがん診療におけるリーディングホスピタルにふさわしい最先端のがん医療の提供はもとより、先進的な治験の実施やがんゲノム医療外来でのがん遺伝子パネル検査、AI等を活用した診断レベルの向上など、いわば専門的かつハード面での整備が進むものとも言える。
一方、近年のがん医療では緩和ケアサポートや治療と仕事の両立相談など、ソフト面での充実も求められている。とりわけ、がん治療を受けるうえでの患者の不安を取り除く相談機能の充実は重要で、特にアピアランス外来相談はハード・ソフト両面で充実されることを期待する。先日、医療美容の資格をもった美容師のお話を伺った。女性のがん患者は、副作用等で外観の変化を期にされ、特に髪の毛が抜けていく精神的ダメージは大きいため、医療用ウイッグの提供について支援を強化し、県独自の助成制度創設や相談対応機能の充実を医療美容師と連携して実現してほしいと訴えられていた。
また、現地建替なので今まで県立がんセンターとその患者さんとともに歩んできた地元住民や商店からは公共交通アクセス、患者用駐車場の拡充、外来町時間短縮、院内での物品販売や飲食提供と地域商店との共存など多くの声が寄せられており、十分配慮のうえ設計検討されることを期待されていた。
ところが、当初予算案では基本設計の予算が計上されておらず、合併症患者に対する総合病院等との連携方策を検討するための予算が計上されているだけである。このことについては、非常に残念である。様々な要因が重なって、基本計画の策定が遅れることは仕方ないが、その分、県内のがん診療のリーディングホスピタルにふさわしい病院となるよう、十分検討を深めてほしい。
一方、がん医療を取り巻く環境は目まぐるしく進展している中で、現在のがんセンターは老朽化や狭隘化により、様々な支障が生じているので早期開院に向けた取組も必要である。そこで、来年度の基本計画策定に向け、合併症患者への対応についてどのように検討していくのか、あわせて新病院の一日も早い開院に向けた取組について所見を伺う。[長嶋病院事業管理者答弁]新たな県立がんセンターの合併症患者への対応については、建替整備基本計画案では糖尿病や循環器疾患などの一定の合併症は院内で対応できる診療体制を構築し、必要に応じて他の医療機関と連携することとしていた。しかし、1月下旬に開催された総合事業等審査会で、速やかな転院等が可能なように近隣の総合病院等との密接な連携方策を十分に検討するよう強い指摘を受けた。
このため、来年度合併症の重症度合いに応じて適切かつ速やかに対応できるよう検討会を設置し、医師会等の関係者の意見もいただきながら、総合病院等との更なる連携方策の構築を検討していく。
一方で、現病院は老朽化や狭隘化の進行により、最先端のがん医療の提供に様々な支障が生じていることから、新病院の早期会委員を目指す取り組みも必要となっている。
そのため、来年度、埋蔵文化財の状況により設計業務の手戻りが生じないよう、試掘調査を先行実施する。また、通常、設計段階で行っている各部門の業務手順の検討や諸室の必要面積の精査などをあらかじめ行うことで、設計期間の短縮に努めるなど、早期開院に向けて取り組んでいく。
一般質問
坪井謙治県議
[質問項目]
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1. 地域医療構想の実現について
質問と答弁のダイジェスト
[坪井県議]「経済財政運営と改革の基本方針2018」において、「公立・公的医療機関については、地域の医療需要等を踏まえつつ、地域の民間医療機関では担うことのできない高度急性期・急性期医療や不採用部門、過疎地等の医療提供等に重点化するよう医療機関を見直し、これを達成するための再編・統合の議論を進める」とされたことを踏まえて、高度急性期や急性期機能に着目した診療実績データの分析結果が公表され、公立・公的医療機関等に対して、地域の民間医療機関では担うことができない機能に重点化するよう具体的対応方針の再検証等が求められている。
このような状況の中、阪神北準圏域では、「市立伊丹病院と近畿中央病院の統合再編に係る基本方針(案)」が取りまとめられている。この基本方針(案)が掲げる「地域医療構想において果たすべき役割」については、統合再編により600床規模の基幹病院を設置し、阪神北準圏域で不足する高度急性期病床の確保に努め、住み慣れた地域で生活しながら、状態に応じた適切で必要な医療を安心して受診することが出来るよう、地域医療の提供体制の構築を目指すことが記されている。
伊丹市で進められている公立・公的医療機関等との統合再編のように、現在も、そして将来においても、多くの地域で推進されていくことが予測されるが、その実現のためには県による財政的な支援等が欠かせない。
そこで伺うが地域医療構想を着実に推進するためには、医療介護推進基金を有効に活用することが重要になってくるが、病院の統合再編整備や病床の機能分化にかかる事業の実施状況、また、今後どのように事業を展開しようとしているのか。さらに、国の方では来年度より、地域医療構想の実現を図るための新たな財政支援が予定されていると聞いているが、全額国費で実施されるという新たな制度を、どのように有効活用してくのかということについても所見を伺う。[藪本健康福祉部長]病院の再編統合について、これまで県は北播磨総合医療センター、加古川中央市民病院の統合を支援するとともに、尼崎総合医療センター、丹波医療センターなど県立病院の統合も推進してきた。
また、病床の機能分化については急性期や慢性期の過剰な病床から回復期等の不足している病床への機能転換の支援を促進しており、例えば回復期病床については、地域医療構想策定時には約4,500床であったのが昨年時点で約7,900床と約3,400床増加した。
2025年を目前にして、さらに病院の再編統合等を推進する必要があることから、新年度、県では新たに医療介護推進基金を活用して医療機関の再編統合、また病床機能集約化に伴う病院整備やダウンサイジングについても支援することとしている。
あわせて、国の新たな財政支援を活用して、病床の削減や統廃合により病床を廃止する病院に対し、病床削減に伴う過失利益や病床削減コストについても支援していく。さらに、医療機関の再編等に向けて、国からの直接の助言や財政支援の上乗せ等を行う「重点支援区域」の選定についても、市立伊丹病院等の事例等について圏域の地域医療構想調整会議での協議を踏まえ、国に申請していく。 -
2. 日本遺産認定を視野に入れた今後の清酒販路拡大支援について
質問と答弁のダイジェスト
[坪井県議]地元である伊丹は「清酒発祥の地」ともいわれ、関ヶ原の合戦のあった1600年頃から清酒を造り、江戸に販売して大変栄えた。いまでも、市内には白雪の小西酒造、伊丹郷の伊丹老松酒造があり、地域経済において重要な役割を果たしている。現存する最古の酒造である国指定重要文化財の旧岡田家住宅・酒蔵や江戸時代19世紀の酒蔵を活用したレストラン「白雪ブルワリービレッジ長寿蔵」、そして伊丹酒蔵通りもあり、観光資源としても重要な存在となっている。
しかし、国内人口減による酒類全体の販売量減少、特に嗜好の変化から日本酒の販売量は大きく減少している。ただし、明るい兆しもある。清酒の出荷量を見ると、平成20年から平成30年の10年間に国内出荷量は約25%減少しているが、海外への輸出量は和食ブームもあり、1万2千キロリットルから2万6千キロリットルに倍増している。
清酒は日本の誇る食の文化遺産。神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市、伊丹市の阪神5市は、清酒を江戸に送った「下り酒」の歴史と文化をストーリーにして、清酒文化の日本遺産認定を目指している。昨年の申請は残念ながら不採択だったが、令和2年度の認定を目指し、現在再度申請中と聞いている。ぜひとも、日本遺産に認定を実現してもらいたい。
重要なのは日本遺産に認定されたとしても、日本遺産認定をどうやって産地振興、販路拡大に結び付けていくのかということであり、行政は地場産業振興の立場からそれをどうやって支援していくのかということだ。私は国内の販路開拓も重要だが、今輸出が伸びているこの時期をチャンスとして、海外向けの販路拡大の支援が必要だと思う。
そこで、兵庫県における清酒産地の現状と課題を踏まえ、日本遺産認定を視野に入れ、今後どのように清酒の販路拡大を支援していくのか。[井戸知事]今後はブランド化、市場開拓、技術開発といった海外市場への取組を産官連携で戦略的に展開することが課題である。清酒の日本遺産認定をめざす業界・市町の動きは、こういった状況を踏まえた清酒のブランド再構築に繋がる。昨年国指定を受けた灘五郷のGI地理的表示制度と共に海外浸透に向けた効果は大きい。
県ではこうした取組と連動し、フランスの見本市への出展支援等を行ってきた。今後は日本遺産認定も視野に、様々な歴史資源や和食、山田錦等の酒米と合わせ、清酒を育んだ地域文化全体を物語としてアピールし、清酒のブランド化戦略や市場開拓戦略を強化していきたい。
さらに、経営資源が弱い中小酒蔵が多い現状から見て、多様な海外市場や遠距離物流に対応した技術開発戦略も必要である。工業技術センターを軸に産学官での共同開発に引き続き積極的に取組んでいく。
今年は、ワインで世界最大級の「ブリュッセル国際コンクール」の日本酒部門が兵庫で開かれ、海外プロモーションに絶好の機会となる。また、兵庫の日本酒のブランド力を高めるため、県独自の日本酒コンテストの創設を検討できないか考えている。 -
3. 伊丹空港への国際線就航について
質問と答弁のダイジェスト
[坪井県議]関西エアポート株式会社が発表している2019年の利用状況をみると、関西国際空港、伊丹空港、神戸空港を合わせて関西3空港の旅客数は、5千万人を突破し発着回数と共に過去最高を記録するなど好調に推移している。私はいよいよ伊丹空港への国際線就航を強く推し進める時期が来たと認識している。
そう考える理由は3つある。1つは、3空港を取り巻く環境の変化。神戸空港は関西3空港懇談会の新たな合意を踏まえ、1日あたりの最大発着回数が60回から80回に拡大され、運用時間も22時から23時までに延長することとなった。現状を見ると、スカイマークと新規就航したフジドリームエアラインズが拡大した発着枠で既存路線の増分、新規路線の就航をしている。また、次の夏ダイヤにおいては1時間延長された運用時間も活用されると共に、拡大された発着回数は満杯状況となる。
過去においては神戸空港の規制緩和は他の空港の利用者を奪うのではないかというような意見も聞かれたが、むしろ3空港の相乗効果で関西全体の発展に寄与しているように見受けられる。関西エアポートによる3空港の一体運営の実現、そして訪日外国人の劇的な増加という環境変化を踏まえると、3空港を取り巻く環境は大きく変化している。
2つめの理由は危機管理。関西エアポートは、2018年の台風21号により甚大な被害を受けて、機能停止に陥った経験も踏まえ関西空港の防災機能強化対策事業計画を策定し、災害対策に取り組まれている。しかし、関西空港の災害対応能力が強化されたとしても、想定外の災害事象が発生する可能性はゼロにはならない。そこで、短期的な視点の取組に整理されている発生時の3空港の相互支援体制を早期に構築することが重要だ。
また、今後ますます関西空港の発着回数が増加していくことを考えると、想定できないトラブル等で一時的に関西空港が利用できなくなった場合、関西空港の機能を代替する空港として位置付けられている国際線が就航できるよう、「国際線が就航する空港は、今後とも関空に限定することが適当」と定められている空港法に基づき、国が定めた基本方針を見直しておくことがリスク管理的に重要である。
3つめの理由は、今後のインバウンド需要の拡大が見込まれることだ。今年の東京オリンピック・パラリンピック、来年のワールドマスターズゲームス2021関西、2025年の大阪・関西万博やIR構想等のインバウンド需要の拡大が見込まれる国際的イベントの開催が連続する。伊丹空港に国際線が就航していないことは兵庫県の発展につながるチャンスを逃すことになる。
国が平成2年に地元と締結した存続協定を踏まえると、伊丹空港は利用者利便の確保だけではなく、周辺地域との調和を図っていかなければならないことは承知しており、地元の理解を得ることが前提とはなるが、伊丹空港への国際線就航を前向きに検討する時期が来ている。ついては、伊丹空港を名実ともに「大阪国際空港」とするために、まずはインバウンドが一時的に増加する期間限定で就航させるべきである。そこで、今後の伊丹空港の国際線就航の実現可能性について所見を伺う。[井戸知事]昨年5月の関西3空港懇談会では伊丹空港について
①国際便の就航可能性を含めた今後のあり方を議論すること
②国際イベント開催時の臨時的対応についてはその時々に検討して議論すること
③災害発生時の3空港相互支援体制を構築すること、
この3つの点を伊丹空港について合意した。
一方、伊丹空港には平成2年に国と地元で結んだ存続協定があるが「関西空港開港後も伊丹空港を存続するに当たり、騒音の環境基準の達成に向け環境対策を進めること」を合意している。空港周辺の一部地域で未だ環境基準値を達成できない状況にあるので、まずは地元市と連携し、航空会社に低騒音機のさらなる導入を働きかけていくなど、この解決に取り組むべきである。その状況を踏まえた上で、これ以上騒音域を拡大させない範囲において、国際線就航について航空需要の動向、航空会社や旅行会社のニーズを把握しながら3空港懇談会で議論していくことになる。
国際イベント開催時の臨時的対応については、ワールドマスターズゲームズ2021関西、大阪・関西万博等が予定されており、あらゆる機会をとらえ、国際チャーター便が運航できるよう関係者と協議していきたい。災害発生時の3空港相互支援体制については、関西エアポートがすでに昨年4月に空港事業継続計画BCPを改訂し、3空港間の人的・物的な応援体制を構築している。さらに、災害時の国際線受入れを可能とするよう、国にも提案していく。
伊丹空港の国際線就航に向けては、3空港懇談会でしっかり議論し、空港法に基づく「基本方針」を見直し、まずは国際チャーター便の実現を目指していきたい。 -
4. 入管法改正を踏まえた今後の外国人児童生徒の受入体制の充実について
質問と答弁のダイジェスト
[坪井県議]外国人児童生徒の受入の入り口となるのが学校。県では「子ども多文化共生サポーター」制度を設け、日本語と母語ができるサポーターを県立学校や市町組合立学校に派遣し、日本語がわからない児童生徒の生活適応や学習支援、こころの安定を図ることに先進的に取り組んでいるところで高く評価している。
しかし、入管法改正によって今後、外国人児童生徒が全体として増加することはもちろんだが、地域によっては外国人児童生徒が急増する学校が生じるのではないかと考える。現時点でも多文化共生サポーターの人材確保に苦労されていると聞いており、現状の受入体制では対応困難な場面が生じることも予想される。私は特に、日本語指導は単に日本語を教えるだけでなく、そのことを通して生活や文化の違いを教えることにつながるため、日本語指導の体制の充実が重要だと考えている。
充実のためにはまず、現在の教員のレベルアップが必要である。日本語がわかる児童生徒への国語の教科指導と、日本語が分からない児童生徒への日本語指導は異なると聞いているので、教員の中に日本語指導を行うことが出来る教員を増加させる必要がある。
教員をサポートする体制も必要である。専門的に日本語教育を行うことが出来る人材を派遣するという組み合わせが必要となる。おりしも、現在、文化庁では日本語教育の水準を向上させることを狙いとして国家資格の「公認日本語教師」(仮称)の創設について検討している。この資格制度はすぐにできるわけではないようだが、制度創設後はそのような資格取得者の活用も検討してはどうか。
そこで、入管法改正を踏まえた、学校での外国人児童生徒等の受入体制の現状と課題についてどのように認識し、今後特に日本語指導についてどのように充実していこうと考えているのか。[西上教育長]本県の公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童生徒は、5年前の平成26年度は802人だったが、令和元年度は1,076人と1.34倍に増加している。また、この約8割が小・中学生という状況になっている。この児童生徒に対する支援のうち、アイデンティティの確立に必要となる母語や、母語の文化については主に県の国際交流協会や支援団体が担っているが、一方、日常必要とされる生活言語、また、授業の内容を理解するための学習言語、この習得は主に学校教育が担っている。県と市町で連携して取り組んでいる。
県の教育委員会としては課題となっている学習言語の習得が効果的に行えるよう、教職員向けには「外国人児童生徒等受入マニュアル」を作っている。具体的な取組としては母語による支援を行う子ども多文化共生サポーターの派遣、また翻訳機の導入をしている。2点目は日本語指導担当教員の配置をしている。令和元年度で27人がいる。3点目は支援に携わる教員の資質向上の研修も行っている。4点目は、日本語指導研究推進校を指定してその成果の発信・活用を行っているところである。5点目として、日本語指導を行う支援員を派遣して、対象となる児童生徒を特に指導する、取り出しによる日本語指導を行う市町教育委員会を支援しているなど、様々な取組を行っている。
なお、ご指摘いただいた有資格者の任用については、今後の検討課題とさせていただきたい。
一般質問
小泉弘喜県議
[質問項目]
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1. 震災の教訓の継承について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]震災を経験していない世代が増え、また県職員の中でも職員として震災を経験していない方も増えてきており、今後の震災の教訓の継承に関して、その記憶が薄れてきてしまうのではないかと懸念されている。
昨年11月、私は会派の管外調査で、東日本大震災の被災地である宮城県を視察した。来月11日で9年が経過するが、復興公営住宅や津波避難塔、津波避難のための人工的な高台が各所に設置され、まだまだ支援は必要だが、防災・減災対策は着実に進んできていると感じた。
そうした中で、私は仙台市の荒浜小学校や石巻市の大川小学校などの震災遺構、また、その時の映像などを交えてリアルに教えてくれる語り部、また、まちのいたる所に震災継承の取組として当時の痕跡や物が展示されており、それを見聞きするたびに心が震えた。
本県でも例えば、震災遺構である神戸港震災メモリアルパークのメリケン波止場の岸壁や北淡震災記念公園の野島断層などの震災遺構の場所を記したモニュメントマップの作成や地域における写真等の展示会や語り部の会開催などの取組が考えられるのではないか。
行政としてできる防災・減災はもちろんのこと、一人ひとりが自然災害への危機感を持ち、災害に備えることも大変重要である。そのためには、25年前の阪神・淡路大震災の教訓を10年、20年後また、その先の未来に向けてしっかりと継承していく必要がある。そこで、今後の震災の教訓の継承について、県の取り組みを伺う。[井戸知事]本県では、1月17日を「ひょうご安全の日」と定め、毎年追悼行事やメモリアルウォークを開催してきた。あわせて、この日を中心に様々な警鐘・発信事業を行ってきている。また、地域での防災学習や訓練・語り継ぎイベント等に対する助成事業も実施してきた。さらに、人と防災未来センターで映像・ジオラマ模型等で震災を追体験できる展示や語り部活動、防災人材育成等を通じて、教訓を継承している。そして、今後の備えに活かしている。
また、被災市町や民間団体、新聞社が中心となって震災モニュメント120カ所を記載したマップが作成・公表されている。このモニュメントを訪ねるウォーキングなども開催されている。
震災25年となる今年度は、特に「震災を風化させない」これをテーマに「忘れない」「伝える」「活かす」「備える」を基本コンセプトに記念事業を展開した。「世界災害語り継ぎフォーラム」も開催され、「震災を伝える語り部フォーラム」も行った。また、次代を担う若者世代への継承を目的とした「若者キャンペーンプロジェクト」なども実施している。メモリアルウォークではご指摘いただいたが、防災学習を組み込んだ「子ども・若者ウォーク」も行い、県内の小中学校から700名の児童・生徒の参加を得た。
来年度も震災25年事業の成果を踏まえ、まず、若者が主体的に取り組む防災・減災活動への支援を行う。2つ目に、震災経験者等への取材を通じて若者が震災を学び、発信する事業を実施する。また、人と防災未来センターの改修を行うことにしているが体験型展示を充実するとともに、語り部映像コーナーの多言語化などにより、語り部の貴重な経験を後世に引き継ぐことにしている。
このように、今後も県民・関係団体・市町等とともに、震災の経験・教訓を継承する取組をしっかり進めていく。あわせて、日常的に防災を生活の中に定着させなければならない。このことは、究極的な経験や教訓の成果になると考えている。そのような意味で、防災意識をしっかりと各個人が持っていただくことを進めていきたい。 -
2. 歯科口腔保健対策の推進について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]現在、乳幼児期の歯科健診の受診率は9割を超え、小・中・高校では毎年歯科健診が実施されている。しかし、青年期の大学生や社会人になってからの歯科健診受診率は低いのが現状だ。10歳刻みのライフステージに合わせた歯科健診等で口腔ケアを意識することが重要であり、健康診断と同様に高齢期までの切れ目ない対策が必要である。
本県では、「青年期からの健口力向上モデル事業」として、大学、短期大学、歯科医師会への実態調査、県内大学職員等を対象とした研修会の実施、県内大学生への啓発に取り組んでいる。平成30年度に、5つの大学で歯科健診を実施したところ、歯肉炎と診断された方が高校3年生の約3倍もいたとの結果になっており、大学生以上になるとやはり口腔ケアの意識が下がっているのではないかと思う。
高齢期までの切れ目のない対策のため、まずは県内すべての大学、短期大学等での歯科健診の実施、また成人期に対しての歯科健診の啓発など、意識向上のための一層の歯科口腔保健対策が必要ではないか。また、歯科衛生士などの人材育成や歯科健診の受診促進・保健指導などを担っている「兵庫県口腔保健支援センター」の運営の充実を図るためにも常勤歯科医師の配置等の対策も必要である。
そこで、高齢期までの切れ目のない歯科口腔保健対策について、今後どのように取り組んでいくつもりか。[藪本健康福祉部長]具体的には妊娠期においては、歯周病が低体重児出生や早産のリスクを高めることから、市町歯科健診の実施と受診促進、青年期以降については、高校卒業後に歯科健診が制度化されていない状況を踏まえて、大学での歯科健診と歯科保健指導のモデル事業の実施、働き盛り世代には、健康づくりチャレンジ企業への歯科健診費用の助成、高齢期には、誤嚥性肺炎を予防するため口腔体操の取り組みなどライフステージに応じた取り組みを推進している。
歯科診療所だけでなく社会福祉施設や行政など、今後歯科衛生士の活躍の場が広がる中、歯科衛生士未設置市町が未だ27あることから、来年度は新たに市町に対して歯科衛生士を派遣する仕組みづくりも行っていく。
また、青年期からの歯科健診の習慣化が、将来の歯の健康につながることから、モデル事業の結果も踏まえて県内全ての大学等で歯科健診を促進していく。加えて、噛む力や飲み込む力を測定する検査や保健指導などオーラルフレイル対策のモデル事業も実施していく。 -
3. 産後ケアについて
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]産後ケア事業は、我が公明党も協力に推進してきたところだが、全国でも様々な形で展開されている。核家族化や晩婚・晩産化が進み産後直後から誰にも頼ることができない方も増えるなど、育児の孤立化が進んでいる。その結果、産後うつになったり、乳児虐待をする母親が増えているのではないか。
私が以前住んでいた、東京都中野区では妊娠・出産・育児トータルケア事業が4年前から実施されている。
事業内容は
①産後宿泊(ショートステイ)
②専門委員(産後ドゥーラ)によるアウトリーチ
③産後デイケアなどである。
先日、産後ドゥーラとして活躍されている元中野区議会議員の方と話す機会があった。産後ドゥーラとは、心身ともに疲弊している母親の元に訪問し、火事や育児など母親サポート、家事サポート、育児サポートの3本柱を一人で請け負い、丸ごと親を支え寄り添う専門家。母親は出産後、妊娠・出産による身体の変化だけでなく、ホルモンバランスの急激な変化に伴い、精神的にも不安定になりがちな時期であり、なおかつ昼夜関係なしの2~3時間おきの授乳など、日常生活も一変する。
産後ドゥーラを養成している一般社団法人・ドゥーラ協会は東京助産師会が後援し、約70時間に及ぶ専門的な知識や技術を体系的に習得できるプログラムを実施している。その後、認定を受け産後ドゥーラとして仕事をする。
現在産後ドゥーラは、全国で472人、東京都では209人、本県では8人と聞いている。産後ドゥーラが増えれば困っている親をもっと助けることができる。例えば、本県でも産後ドゥーラを産後ケア事業として派遣できるようにするとともに、現在8人しかいない産後ドゥーラを育成するための補助等の支援を行うべきではないか。県として産後ケアについて今後、どのように取り組んでいくのか。[藪本健康福祉部長]市町では、4カ月までの乳児のいるすべての家庭を訪問する「乳児家庭全戸訪問事業」、子育て経験者等が話し相手になり、妊産婦の孤立感を解消する「産前・産後サポート事業」、産後うつのスクリーニングもあわせて行う「産婦健康診査事業」など、退院直後から母子に対してきめ細かいサポートを行っている。
県では、市町保健師の資質向上を図るため、産後ケアについて効果のあった事例を紹介する研修会を開催するほか、産後うつの早期発見のためのメンタルヘルス研修会も実施している。また、支援を要する母親等に、医療機関と地域が連携して対応する「養育支援ネット」や産科医療機関から精神科医療機関へ紹介する仕組みの構築など、支援体制の充実も図っている。
この度の改正母子保健法に位置づけられた産後ケア事業については、現在33市町で実施されているが、県ではこれの全市町での実施を目指して、市町ごとの取組内容の把握、また担当者会議等を通じた情報交換、そしてマンパワー育成のための研修などを実施することにより、産後ケアの充実に向けて取り組んでいく。
産後ドゥーラについては、出産後の母親のいる各家庭を訪問し、家事や育児など日常生活のサポートを行うなど母親を支える人材であり、少子化対策・産後うつや児童虐待防止に一定の役割を果たすのではないかと考えているが、その育成については、市町での産後ケア事業の取組の進ちょく状況や他府県での産後ドゥーラの活動状況等を踏まえ、研究していきたい。 -
4. 商工会・商工会議所を通じた小規模事業者支援について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]本県では商工会議所、商工会及び商工会連合会に経営指導員を設置して、地区の小規模事業者等を対象に経営改善普及事業等を行っている。また、小規模事業者が抱える経営課題が多様かつ高度化する中で従来にも増して、よりきめ細かな支援や指導が求められていることから、今年度より伴走型指導員を新たに設置し様々な課題に対応しておられる。
しかし、質・量共に増大している経営指導員の業務の現状を考えると今後、設置基準の見直しも含めた経営指導員の定数の拡充や人件費補助の単価を引き上げることも重要である。昨年9月に実施した、公明党の政策要望懇談会においても、兵庫県商工会議所連合会から同様の要望をいただいた。このような当事者団体の声に応え、県としてもこれまでの取り組みに加え、より一層の支援が必要ではないか。
商工会・商工会議所を通じた小規模事業者支援のこれまでの取り組みの現状と課題、今後の展開について伺う。[井戸知事]県では、経済センサスの小規模事業者数を基にする指導員定数に応じた補助を基本としつつも、合併前の旧町区域を考慮した広域指導員を重ねて配置するとか、あるいは事業者数減に伴う指導員定数減の影響をふまえ、本年度より事業承継やBCP(事業継続計画)策定など小規模事業者が抱える新たな課題の解決を図る伴走型指導員を設けた。
そして、来年度には指導員の職責に応じた手当なども充実することにしている。このように、体制強化を図ることにより小規模事業者に対する指導の強化を図っていく。
商工会・商工会議所が担う小規模事業者向けの取り組みについては、事業承継を後押しする事業継続支援補助の拡充や販路開拓を支援する補助事業等の継続を図るとともに、こうした施策の経営指導員への理解を深める研修機会も確保することでより多くの小規模事業者の施策利用へとつないでいく。 -
5. 阪神間における人口増に向けた空き家対策について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]人口減少が進む中で東京一極集中の弊害が叫ばれているが、本県にとっては大阪府への転出も大きな要因になっている。一方、尼崎市では4年連続で社会増となっており、特に20代の若者が転入超過になっている。そのまま尼崎市で結婚し定住してもらえるような子育て支援や教育環境の充実など、魅力的な街にしていくことも重要だが、ファミリー層から選んでもらえる住環境を整備するなど、住宅政策を打ち出すことが最重要である。
尼崎市は大阪府への通勤、通学圏内に位置しており、住宅政策を進めることによって大阪府への転出を防げる可能性がある。阪神間には新たな開発用地は見込めないが、空き家問題が深刻化しており、空き家を利活用することで若者の住宅確保策を実施すれば一石二鳥である。
空き家対策にも課題はある。老朽危険空き家除去支援事業において、所有者が空家法に基づく市町の助言または指導に応じる場合は補助の対象になっているが、勧告になると国では補助対象としているにも関わらず、本県では補助対象外になっている等の理由から、市町では勧告しにくい状況になっている。所有者の中には、助言や指導の段階では空き家の処分を決断する所有者もふえるのではないか。
加えて、市町が勧告、命令を経て行政代執行にまで及んだ場合に、それにかかわる経費補助等の支援が必要ではないかと考える。また、民間が投資したくなるような規制緩和や各市町における土地の用途変更への後押しなど、県が主導して規制緩和の方針を打ち出し、積極的な開発を促進していくべきである。
さらに、若者やファミリー層が選びやすい神戸市や阪神間の市町と協力して、若者目線で住みたい街となるような住宅政策を大胆に進めるべきであり、そのためにも、空き家の活用を一層推進することが重要である。そこで、阪神間における人口増に向けた空き家対策について、今後どのように取り組んでいくのか所見を伺う。[出野上まちづくり部長]県では既成市街地やオールドニュータウン等において空き家改修への補助を行い、移住・定住につなげている。除却支援では早期の除却を促すため、助言・指導段階のみを支援の対象としているが、一層の事業推進を図る観点から市町の意見も踏まえながら勧告段階も加える等、制度拡充を検討していく。
また、行政代執行に関しては、来年度から支援対象となる国庫補助の活用を市町に促すとともに、技術的支援により除却の推進を図っていく。さらに阪神地域への転入者増につなげるためには、空き家・空き地を再生し、都市の魅力を高める必要がある。このため、来年度改訂する阪神地域の都市計画区域マスタープランにおいて、容積率緩和等により都市型住宅の民間投資を誘導する方針を明記するほか、鉄道駅周辺での市街地再開発事業により、空き家・空き地の多い低未利用地の居住環境の改善と商業・業務等の都市機能の充実を図っていく。
加えて、市町とともに密集市街地の狭小敷地における空き家の除却や敷地統合を行うランドバンクといった新しい仕組みを検討する等、県と市町、民間事業が一体となり対策に取り組んでいく。 -
6. 尼崎宝塚線(阪急立体工区)街路事業の推進について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]本県では社会基盤整備プログラムの中で日常生活や地域を支える社会基盤の充実として、地域間交流を支えるため地域課題に対応した幹線道路の整備を推進している。南武庫之荘から武庫町にかかる尼崎宝塚線(阪急立体工区)の街路事業が同プログラムの令和5年度までの前期完了箇所に、また、分別計画である地域の防災道路強靭化プランにも位置付けられている。
現在、阪急立体工区から南北に延びる道路は4車線になっているが、阪急立体工区では急に2車線になり、混雑している状況だ。尼崎宝塚線を利用されている方からは、早く4車線にしてほしいとの声をたくさんいただいており、完成が待望されている。
しかし、平成31年3月に県が行った事業説明会では、地域住民の方から阪急北側の東西方向の横断ボックスの新設、南側は既存ボックスの拡幅等、また現状ある緑地帯にかわる新しい緑地帯の確保や目隠し・防音壁の設置等の要望があったとのことである。特に、擁壁の高さが一部4mにもなる箇所があり、側道をはさんですぐに擁壁となるため圧迫感があり日常生活に支障を来すのではないかとのご意見を踏まえ、擁壁構造の変更が求められた。
その後、県でも検討を重ねていただき、令和元年12月、地域住民のご要望にお応えする形で2度目の事業説明会が行われた。その結果、地域住民のご理解もいただき、来年度に工事着手予定と聞いているが、工事内容や工程、また工事中の騒音や通行規制など地域住民の工事中の不安解消に至っていない。一方、尼崎宝塚線を利用されてる方は早期完成を望まれている。
今後、県は工事説明会を実施する予定とのことだが、地域住民の不安を取り除くとともに施工業者には安全に工事をしていただくのは大前提だが、地域住民、利用者のためにも早期に工事に着手し、令和5年度には完成させることが重要と考える。そこで、尼崎宝塚線街路事業の推進について、今後どのように取り組んでいくのか。[濱県土整備部長]全体約12・4kmのうち、事業中の阪急立体工区と宝塚氏の小浜南工区以外の約11・4kmで4車線化が完了している。阪急立体工区では、阪急神戸線との立体交差部を含む約600mで4車線化を進めている。昨年末の事業説明会で、交差部前後の擁壁を宅地から遠ざける変更や現在の緑地帯に代わる新しい緑地計画について説明し、理解を得たところである。また、本路線下を東西に横断する市道の2箇所のボックスについて、管理者の尼崎市と整備に向け、協議を進めるとともに、目隠しや騒音対策についても実施に向けて検討を進めている。
令和2年度は、6月までに擁壁230mの工事に着手するとともに、交差部の工事は鉄道の安全な運行を確保するため、上半期中には阪急電車と工事委託協定を締結することとしている。さらに、現道の東西に1車線ずつ仮設道路を設置し、自動車等の交通を切り替え交差部の橋梁上下部工、橋梁前後の擁壁等の工事を進め、令和5年度の完成を目指している。
工事内容、工程、工事中の騒音対策や通行規制等については、毎年度施工業者が決まり次第、工事着手前に説明会の実施等、丁寧な説明を行い、地域住民の不安解消に努めていく。 -
7. 特殊詐欺対策について
質問と答弁のダイジェスト
[小泉県議]本県では、特殊詐欺の認知件数は過去5年間でみると、平成26年以降増加傾向にあり、平成30年に773件、総被害額は約18.3億円と増加していたが、令和元年は認知件数が657件、被害額約10.9億円と減少している。その理由の一つとして、事前警告機能付通話録音装置の貸し出し事業などの対策が一定の効果を発揮していると考える。
県警では貸し出し中の事前警告機能付通話録音装置利用者を対象に、アンケート調査を行った。貸与者2,500中、1,779人から回答があったが、その結果は「装置を設置してよかった」と回答した方が92.9%、「迷惑電話がなくなった、減った」と回答した方が83.4%、「防犯意識が高まった」と回答した方が91.2%となっており、本事業が特殊詐欺被害防止に相当の効果があると見込まれるとのことだった。
さらに「行政や警察による貸出事業を継続してほしい」と回答した方が97.8%にのぼり、事業継続を望む声が多くあった。一方で「防犯機器を自分で購入したい」と回答した方は4.4%にとどまり、「貸出希望」と回答した方が89.3%となるなど、購入意欲は低いという結果となった。
もちろん、県警では警察官による個別訪問や特殊詐欺を理解してもらえるように、老人会等で落語やボランティアによる寸劇等を活用して普及啓発を行うなど、さまざまな広報活動を実施している。しかし、事前警告機能付通話録音装置の貸し出し台数を増やす、または購入する際に補助金を出すなど、直接的に事前警告機能付通話録音装置の設置を促すことが、特殊詐欺被害防止につながるのではないか。県警として、特殊詐欺対策について今後どのように取り組んでいくつもりか。[加藤警察本部長]県警察においては当該録音装置のほか、固定電話を常に留守番電話設定にすることや防犯機能付電話等の有効性について、県警ホームページへの掲載や関係団体と協働した防犯機器の展示会の開催等を通じて、広報啓発を図ると共に自治体に対して機器購入補助事業や貸し出し事業の働き掛けを行っている。
今後も、防犯機能付電話機の普及促進を含めた啓発活動を、警察官による個別訪問や注意喚起に加え、高齢者と接する機会が多い関係機関と連携して継続していくほか、金融機関における声掛けなど水際での被害防止対策や、だまされた振り作戦などによる徹底した検挙対策を強力に推進して抑止を図っていく。