議会質問(代表・一般)
Parliamentary questions
第344回(令和1年6月)定例県議会
代表質問
島山清史県議
[質問項目]
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1. 「若者が選ぶ兵庫」を目指した地域創生戦略の見直しについて
質問と答弁のダイジェスト
[島山県議]県では、これまで若者の県内定着及び県外からの環流を目的とした「次世代の兵庫県を担う若者の定着・環流に向けた地域創生PR事業」や地域中小企業と若者の雇用マッチングを図るなど、様々な取組を行ってきたが、若者の人口流出が止まらないのは、若者のニーズを的確にとらえた、そのニーズに合った対策が充分にとられていないということではないか。若者の視点に立った地域創生戦略が必要である。
県の党青年局長として、地域創生について、県下の若者層から意見をいただくことがあるが、その中からいくつかの課題を取り上げてみたい。
まず、働く場の確保の問題。県は本社機能移転策に取り組んでいるが、本社機能の全面移転は少なく、研究部門などの拡充が多くなっており、インパクトのある雇用の場の創出につながっていない。思い切った優遇装置等の検討も必要ではないか。 次に、まちづくり。若者が住みたいと思う、新たな発見に出会う、魅力のあるまちが形成されていないのではないか。神戸をはじめ阪神間の自然環境は、山と海が近接する、世界に誇れる素晴らしい景観を持っていながら、それを生かし切れていない。「都市機能と自然環境のバランス」がとれれば、世界からももっと多くの若者を呼び寄せられるポテンシャルを持っているのに、残念である。
昨年の私の一般質問でも、こうした課題の解決について、徳島県や長野県、山形県などで行っている、県の審議会等における若者委員の登用の制度化や若者対策専門官などの設置を知事に提案した。若者の声を積極的に取り入れる仕組みづくりに取り組んでいただきたい。
「若者が選ぶ兵庫」を目指して地域創生戦略の見直しを図り、若者を引き付けるような各般の施策に取り組む必要があると考えるが所見を伺う。[井戸知事]近年の若者の人口流出の主因は、第一に大企業の事務職や専門・技術サービスなど、若者のニーズにこたえる仕事が兵庫に不足していることにある。神戸のような大都市には商業・業務機能の充実による昼間人口の拡大が求められる。
神戸は、阪神・淡路大震災の影響で高次都市機能の充実が後手になっていたが、三宮の再開発が緒に就き都心のタワーマンションを規制し、商業・オフィス機能を充実する方向性が示されている。さらに、県庁周辺整備でも一定量の業務集積を創りだしたい。次期戦略では、こういった都心空間を活用し、産業立地条例による本社機能や事務所棟の誘致、知的交流を促すコワーキング集積支援、起業・創業支援などを強化していく。
一方で、多くの若者が丹波篠山や淡路などの多自然地域への移住を志向している。スキーや海水浴等が楽しめる豊かな自然と大都市との近接、御食国と呼ばれる豊かな食材、多彩な芸術文化施設など、兵庫の居住環境の良さはUJIターン希望者にとって大きな魅力となっている。次期戦略では、こうした五国のポテンシャルに磨きをかけると共に、e―県民制度等も活用し、若者が求める情報をダイレクトに届け、定着・環流を促進する。
次期戦略の策定にあたっては、30代から40代の若手有識者を登用するとともに、地域創生やコスチュームやひょうご若者ビジョンフォーラム等を活用し、若者のニーズを汲み上げていく。 -
2. 児童虐待防止の推進について
質問と答弁のダイジェスト
[島山県議]今月はじめ、札幌市で2歳の長女に暴行を加え、死亡させたとして当該児童の母親とその交際相手が逮捕された。今年の1月に発生した野田市の児童虐待死亡事件後、国をあげて児童虐待防止に取り組むこととされており、国会でも児童虐待防止法と児童福祉法の改正案が審議されている中で、またしても悲劇が繰り返された。
野田市の事案とは異なるが、札幌市の事案においても児童相談所や警察が関与していながら、幼い子どもの命を救うことができなかった。昨年3月の東京都目黒区の事案を受けて、国は虐待通告から原則48時間以内に安全確認できなかった場合、立ち入り調査を実施するという対策を進めている。
児童相談所はこのような対応をとっておらず、認識が甘かったと釈明しているとのことだが、憤りを覚える。また、親子と面会しようとした警察の二度にわたる同行要請に対し、児童相談所は夜間の人員不足などを理由に断っていたとのことで、警察と児童相談所の連携促進や児童相談所の一層の体制強化が急がれることの証左ではないか。
2月定例会の代表質問で、我が会派の岸本議員が千葉県野田市の事案を取り上げ、児童虐待への対応について質問した。その際にも、指摘しているが、今後、児童相談所や警察、学校等の関係機関の対応の誤りによって幼い子どもの命が奪われるようなことがあってはならない。
全国の児童相談所における虐待対応件数は年々増加しており、平成29年度では、前年度より1万件以上増え、13万件を超えている。このうち県(神戸市を除く)では、平成29年度は前年度より749件増の3616件となっている。これは、統計を取り始めた平成2年度以降、過去最多の数値である
現在、国会で審議されている児童虐待防止法と児童福祉法の改正案では、親権者らによる体罰禁止を明記するとともに、児童相談所の子どもの一時保護を担当する部署と、保護者の相談を受ける部署を分け、虐待事案への対応力を高めることを盛り込んでいる。また、児童相談所には医師・保健師も配置するとしている。改正法は、今国会での成立が見込まれている。
児童虐待件数が増加する中、対応にあたる県下の児童相談所の職員の充分な配置、とりわけ専門知識を有する専門職の確保、児童の一時保護が必要な場合の児童を受け入れる態勢の強化など課題は山積している。児童虐待防止の推進について今後どのように取り組んでいくのか。[井戸知事]本県では、こども家庭センターが市町や警察、学校等関係機関と連携し、子どもの安全確保を最優先に児童虐待相談に対応している。具体には、警察、学校を含め関係機関で構成する市町要保護児童対策地域協議会への参画により要保護児童に関する情報共有を図っている。さらに、県警察とは協定に基づき児童虐待のリスクの高いケースの情報共有を行っているほか、学校とは校長会等の場を通じて情報共有の協力要請を行うなど、個々のケースへの対応をはじめとした連携体制の強化を図ってきた。
職員配置については、平成14年度から専門職の「児童福祉司」を計画的に採用するとともに、保護者などからの激しい抗議等に法的に対応するため弁護士や警察OBの配置、また、非常勤嘱託医及び保健師の配置も行っている。
今後県では、一層の児童福祉司・児童心理司等専門職の採用・配置を進め、児童虐待への体制強化に努めるとともに、児童福祉法等の改正を踏まえ、一時保護に係る介入的対応と支援との機能分化などについて速やかに対応を検討していく。[金澤副知事]県では、これまで農業者の収益性の向上を図るため
①農業改良普及センターによる作物の栽培技術指導
②パイプハウスでの施設栽培の推進③経営管理の基礎知識や販売戦略を学ぶ「ひょうご農業МBA塾」の開催などに取り組んできた。
農業者の高齢化がさらに進む中で収益性の向上を図り、就農意欲を高めるには
①大都市近郊の優位性を生かし、米から施設野菜等へのさらなる転換
②雇用や経営の多角化も見据えた法人経営への誘導が必要である。
このため、施設野菜等へのさらなる転換として
①初期投資の軽減を図る農業施設貸与事業を活用し、鮮度を活かした葉物野菜やイチゴ等の導入
②ICТの活用で環境制御を可能とするトマト等生産施設の整備
③県内に多数立地する食品会社等と若手農業者や集落営農法人との契約栽培を推進していく。
また、法人経営への誘導では
①中小企業診断士等の専門家派遣による経営改善指導と法人設立のサポート
②経営の多角化に向けた新品目の導入や加工品開発等の取り組みを支援していく。
さらに、今年度からは集落間調整を行う支援チームを設置し、複数集落から成る収益性の高い集落営農法人の育成も進める。 -
3. 農業の収益性の向上について
質問と答弁のダイジェスト
[島山県議]農業就業者の高齢化の問題は、相当以前から提起されており、従前の高齢の就業者がそのまま営農を継続していると考えられ、高齢化というより老齢化といっても過言ではない状況になっている。
その老齢化に歯止めがかからない要因は、後継者不足にある。また、農家を世襲する次の世代の継承も少なく、新規就農者がなかなか増えない原因は、農業の収益性の低さにある。特に、新規に就農しようとする人にとっては、農業用機械を購入するにも相当な初期費用が必要で、かつコストもかかる中で、さらに低収入となれば就農意欲がわかないのではないか。
相応の大規模な農業経営で、悠然と経営が行われており、後継者を育成されているところもあるが、一経営体あたりの経営耕地面積が1ha弱と全国平均の半分にも満たない本県の多くの農業者では、そこまでには至らないところが多いのではないか。
グローバル化の進展や消費者の食習慣の変化などから農業は今、変革期を迎えている。今後、力強い農業を確立し継続的に発展していくためには、県内に消費者や食品事業者を数多く抱える本県の特徴を生かしつつ、経営規模の拡大や野菜などのより収益性の高い作物に転換していくことが、重要である。
県では、農地の集約化、農業の大規模化を推進するとともに、集落営農組織の法人化等も進められている。また、野菜の栽培には気象条件を一定にできるハウスなど施設園芸の拡大を進めようとされている。さらに、新規就農者向けには農業施設貸与制度も創設されるなど、各般の取組を進めているが、もうかる農業を目指さなければ新規就農者も確保できず、円滑に兵庫の農業を維持、存続する道がないのではないか。そこで、県として農業の収益性の向上についてどのように取り組んでいくのか。 -
4. スポーツ環境の整備について
質問と答弁のダイジェスト
[島山県議]県はサッカー場のみならず、県内のアリーナ施設も国際大会の開催という視点から見れば、収容人数などに課題がある。例えば、紀平・坂本・三原選手など兵庫県に縁のある選手が活躍する女子フィギュアスケート界だが、国際大会開催に求められる施設の条件のひとつに最低6000席の観客席が挙げられている。
これまで、国際大会が開催された大阪の「東和薬品ラクタブドーム」は、アリーナ面積が約3500㎡。収容人数は約1万人。埼玉スーパーアリーナは、メインアリーナ面積が約7100㎡で、約22500人が収容できる。広島グリーンアリーナは、アリーナ面積が約3500㎡で約1万人が収容可能だ。
本県では、最大の収容人数を持つアリーナは、神戸市中央区のワールド記念ホールでアリーナ面積が約3100㎡、収容人数は8千人、西宮市の県立総合体育館は、アリーナ面積が約1800㎡で収容人数は約3500人となっている。全国的にみると小規模の収容人数しかないといえるかもしれない。
県立総合体育館は築34年が経過し、施設の老朽化も目立ってきている。こうした、既存のアリーナ施設の大規模化を図れば、バレー、バスケット、柔道など、他のスポーツの国際大会誘致の可能性も広がると共に、大型コンサート等の興行収益も見込まれ、生涯スポーツの振興や競技スポーツの向上のみならず、大きな経済効果も期待できるのではないか。
また、東京にはオリンピックや世界大会で活躍するような選手を育成する大規模施設として、味の素ナショナルトレーニングセンターがあるが、西日本のトレーニングのメッカとなるようなトレーニング施設が本県にあれば、アスリートの育成を行うことができ、様々なスポーツにはげむ若者が集まってくると思う。県としても、国の財源や民間活力を利用しつつ、国際競技大会が可能な施設や県版トレーニングセンターの整備・誘致をしていくことが望ましい。こうした取組を進めることで、地域の活性化やスポーツ立県兵庫の推進に繋がっていくのではないか。そこで、ゴールデンスポーツイヤーズを迎え、県としてスポーツ環境の整備についてどのように取り組んでいくのか。[西上教育長]スポーツの環境整備として、ハード面では総合体育館や文化体育館、三木総合防災公園、尼崎スポーツの森、武道館等を整備してる。また、障害者スポーツの拠点として、現在「ひょうご障害者総合トレーニングセンター(仮称)」を整備している。五歩王、ソフト面では、県内の全小学校にSC21を設置すると共に、学校体育施設である運動場や体育館等の活用に取り組んできた。
今後、ゴールデンスポーツイヤーズを契機として県民が「する・みる・ささえる」といった様々な場面でスポーツに参加する機会が増える中、スポーツへの関心をさらに高めるためには、国際レベルの大会が開催できるアリーナやトップレベル競技者が強化活動に専念できるトレーニングセンターの必要性を感じている。新たなスポーツ環境について検討していく。
一般質問
竹尾ともえ県議
[質問項目]
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1. 待機児童対策について
質問と答弁のダイジェスト
[竹尾県議]公明党は、私費による家計負担が多い現実を踏まえ、安心して産み育てられる社会を構築するため、幼児教育・保育の無償化を一貫して訴え続けてきた。その結果、幼児教育・保育の無償化が実現することとなり、子ども・子育て支援法が改正され、本年10月からスタートする見込みである。
具体的には、幼児教育・保育を受ける全ての3~5歳児と住民税非課税世帯の0~2歳児の計約300万人が無償の対象となる見込みである。幼稚園・認可保育所、認定こども園の利用料を原則無料とし、補助額の上限があるなど一定の条件はあるものの、認可外保育施設や幼稚園の一時預かり事業なども無償化の対象とすることとなっている。
しかし、幼児教育・保育の無償化が推進されているとはいっても、その前提として保育所や認定こども園に入れないことには、実際に保育が必要な方にその恩恵が届かない。
今年の4月1日現在、兵庫県の待機児童は5年ぶりに減少に転じ、昨年の同時期より419人減少したものの、未だ1,569人もおり、県の待機児童解消の目標時期は、ずれ込む見込みである。昨年度中に県内の保育所等の定員は4,657人増加したにも関わらず、利用申込者も対前年比3,237人増加しており、保育ニーズの高まりに、行政が対応しきれていない現状がある。「待機児童対策」は幼児教育・保育の無償化と並ぶ車の両輪と捉え、両方ともに進めていくことが重要である。
現在は、各市町とも積極的な施設整備に力を入れて待機児童対策に取り組んでいるが、将来、人口減少が続く中にあってはハード面だけの対策に頼るのではなく、他の取組についても考慮していかなくてはならない。待機児童対策として、政府が整備を進める「企業主導型保育所」の全1,420施設の定員に占める利用児童の割合(充足率)が、2019年1月の内閣府の発表では、平均で6割程度にとどまり、40%が空きの状態であるとのことである。定員割れの影響が、経営状態の悪化につながり、結果として休園になってしまい、各地域の問題となっていると聞きている。
児童を受け入れる余裕がある企業主導型保育所の保育の質の向上を図るとともに、積極的に活用していく必要がある。また、私も推進させていただいたが、私の地元の西宮市では、私立幼稚園に「協力幼稚園」になってもらい、待機児童を対象とする「預かり保育」を行う事業も展開しているが、市町の取組も進んできている。
本県でも様々な待機児童対策に取り組んでおられるが、10月からの幼児教育・保育の無償化を見据えた「待機児童対策」は喫緊の問題である。これまでの取組に加え、待機児童ゼロを目指した、一層の取組が必要であると考える。今後、待機児童対策にどのように取り組んでいくつもりか。[井戸知事]触れていただいたように、待機児童は1,569人残ってしまったが、4,657人の受け皿を拡大した。令和元年も約3,000人の受け皿拡大に取り組んでいく。そのためには、まずは、当然保育所等の整備。2番目としては、既存の保育所等の定員弾力化による受入支援を行っていく。3番目には、保護者の預かり保育のニーズに対応できるように、私立幼稚園における預かる保育への支援を拡大した。
今年度は、新たに企業主導型保育事業を促進するため、開設・運営に関する相談を強化したり、あるいは、先行する好事例の紹介等を実施する開設支援窓口を設置することにした。また、空き定員を活用して、新たに地域の保育が必要な子どもを受け入れる事業者を支援する助成制度を創設している。このように、保育の受け皿拡大にしっかりとこれからも取り組んでいく。
また、保育人材の確保を図る必要がある。国には機会あるごとに配置基準の改善や公定価格の引き上げの要望を行っている。県単独事業としては、職員の配置基準以上に配置している保育士に人件費の支援を行っている。昨年度からは、国の処遇改善加算の対象外である中堅保育士にも技能や経験に応じた処遇改善を実施してきた。[竹尾県議(再質問)]企業主導型保育開設支援窓口について、どういうものか詳しく聞きたい。[井戸知事]企業でようやく従業員のための保育所を作る機運が生まれてきているが、ただどのように作ればいいか、ノウハウを持っている企業が少ないので、そのような意味で開設や運営に関する相談ができる窓口、あるいは好事例を紹介する開設支援の窓口を置いていく。 -
2. 食品ロスの削減について
質問と答弁のダイジェスト
(1)食品ロス削減に向けた普及啓発の推進について
[竹尾県議]先月24日、食べられる食品の廃棄の抑制に国民運動として取り組むための、いわゆる食品ロス削減推進法が参議院本会議で可決され成立した。この食品ロス削減推進法は、公明党が2015年12月に党内プロジェクトチームを立ち上げ、食品業界やフードバンクの関係者と幅広い議論を重ねて意見集約を行い、2017年に法案骨子を作成したもので、それから2年かけて成立した。
具体的な施策としては、消費者や事業者等が食品ロスの削減について、理解と関心を深めるとともに、それぞれの立場から取り組むことを促進するような普及啓発、食品ロスの削減に関し顕著な功績があると認められるものに対する表彰の実施、いわゆるフードバンク活動への支援などに取り組むこととしている。また、大手コンビニ各社は、ポイント還元による食品の実質的な値引き販売や、季節商品を完全予約制にするなどの取組を進めようとしている。
県は、家庭系ごみの排出抑制目標の達成に向け、食品ロスを2014年度比で2020年度の20%、2025年度に30%削減することを打ち出し、30・10(さんまる・いちまる)運動やフードバンク事業の取組支援など、食品ロスの削減に取り組んでいるところだが、今後は食品ロス削減推進法成立の趣旨に則り、一層の取組の強化が必要ではないか。
企業の自主的な行動に加え、その取組を推進することと同時に、国民運動として食品ロス削減を推進するために消費者に対しても参画と協働による取組を働きかけることが必要ではないか。そこで県として実効性のある食品ロス削減の実現に向けた普及啓発の推進について、どのように取り組んでいくつもりか伺う。[松森女性生活部長]本県では「兵庫県消費者教育推進計画」を策定し、その重点取組項目として、エシカル消費に関する消費者学習や啓発の取組を強化している。特に食品ロスの削減については、消費者団体による意識調査や削減に向けたアイデア集の作成のほか、生活協同組合によるキャンペーンの実施など、一定の取り組みが進んできている。
さらに今年度は、7月にリニューアルオープンする消費生活総合センターに、消費者学習の拠点となる「消費生活情報プラザ」を新たに開設して、環境教育や食育等に取り組む団体にも活用いただき、食品ロスの削減に向けた参画と協働による一層の取組を推進していく。また、9月には消費者庁と共催で開催する啓発イベントや県内各地でのリレーイベント等を通じて、食品ロス削減に向けた機運を更に高めていく。
本県では、これまでから30・10運動やフードバンク活動の推進に取り組んできた。加えて、今回の食品ロス削減推進法の制定を契機に事業者への働きかけを強化するとともに、消費者団体や生活協同組合等と連携して、より多くの県民において、食品ロスの削減に対する意識が一層高まるよう推進していく。 -
3. ホームドアの整備について
質問と答弁のダイジェスト
[竹尾県議]本県でもJR三ノ宮駅などでホームドアの整備が進められている。しかし、私の地元西宮市では、ホームドアの計画も整備も進んでいない。特に阪急電鉄西宮北口駅については、住民の方や高齢者、視覚障害団体などからも強い要望がある。1日あたりの平均利用者数が10万人以上ある西宮北口駅は、大阪、神戸の中間地点でもあり、南北に今津線が通っている交通の要衝でもある。また、近くには県立芸術文化センターや大型ショッピングセンターなども立地しており、他地域からの駅の利用者も多くホームドアの早期設置の必要性を強く感じる。
また、次に要望が多いのは、阪神電鉄甲子園駅である。甲子園球場で試合観戦する方が多く利用し、試合が開催されるときには、高齢者や子どもも含めて一度に多くの方がホームに上がられることもあり、中には飲酒している方もいる。リニューアル工事が行われて広く使い勝手のいい駅になったとはいえ、現状を鑑みるとホームドア設置は急がれる。
国のホームドア整備基準となる1日あたりの平均利用者数が10万人以上である、西宮北口駅はもちろん、それに満たない場合でも地域 の実情に応じて、必要とされる場合には整備を推進するべきである。そこで、整備に対する考え方と今後どのように取り組むつもりなのか所見を。[出野上まちづくり部長]ご指摘の阪急西宮北口駅については、平成29年度末に乗降客数が10万以上となったことから県としても事業者に対し、ホームドア整備の実現に向けて働きかけていく。
一方、阪神甲子園駅は鉄道駅総合改善事業により、エレベーター設置やホームの拡幅等を行い、安全性・利便性が向上している。なお、ホームドア設置については、阪神と近鉄の車両が停車しそれぞれの車両の長さや扉位置が一定ではないため、現時点では技術的な改良が必要であると事業者から聞いている。
県としては、10万人未満の駅であっても転落事故の発生状況等を勘案し、10万人以上と同程度に優先的整備が必要な駅については支援の対象としている。乗降客数約5万人の阪神甲子園駅については、ホームドアの設置技術の進展を注視しつつ、駅の利用状況も踏まえ事業者と共に、設置に向けて検討していく。 -
4. 名神湾岸連絡線の整備について
質問と答弁のダイジェスト
[竹尾県議]現在、阪神南地域社会基盤整備プログラムに従って、平成26年度から高潮・津波対策として、新川の水門工事が進められており、引き続き統合排水機場の事業に着手するなど、該当地域周辺では複数の大規模事業が続くことになる。整備予定の道路は、市街地と海上を横切る巨大な高架構造になることもあり、住環境や景観に対する影響が大きいことから、都市計画の手続きを進める段階から環境や景観に十分な思慮をしてほしい。
そのような事情から、地域住民は早ければ今年の夏にも市の都市計画審議会で示される予定のルートについて、関心を深めている。特に、名神湾岸連絡線ができた後の「まちづくり」について心配する声も聞いている。そのことからも、地域住民へは環境影響評価や都市計画の手続きの中で、地域住民が意見を言えるよう、わかりやすく丁寧に説明することが大切だ。県として、名神湾岸連絡線の整備を今後どのように進めていくのか。[井戸知事]環境については国が、昨年度から県条例に準拠した環境アセスメント手続きに着手して、昨年8月に現況調査や影響予測、評価の方法について地元説明会を実施した。現在、現況調査、影響予測等を進めており、結果をとりまとめた上で地元説明会を行い住民からの意見を聴き、環境の保全対策を決定していく。
景観やまちづくりについては、まずはルートと幅員が課題である。本年3月に国からルート計画案の提示があった。これを受けて、現在、西宮市が都市計画の素案を作成中である。市の都市計画審議会でルート等を審議のため報告したのち、地元説明会を行うこととしている。その後、市からの申し出を受け県が都市計画案を作成・縦覧し住民の方々からの意見を聴いたうえで、県の都市計画審議会を経て決定することになる。
さらに、事業実施には事業者が詳細の構造を検討し、地元説明会を実施していく。県としては、市街地や海辺を通るルートであるので、まちと調和した景観で地域分断が生じにくい構造となるよう、西宮市とともに先進事例の収集や地域特性の把握などを進めて、事業者に対しても構造等を提案していく。 -
5. 県立西宮病院と西宮市立中央病院の統合再編について
質問と答弁のダイジェスト
[竹尾県議]県と西宮市は、今年1月に「兵庫県立西宮病院と西宮市立中央病院の統合再編基本協定」を締結した。今後、基本計画の策定が進められる中で、病院の具体的な体制等が決定されてくると思われるが、この間、西宮市はじめ周辺住民は「西宮病院や中央病院はどうなるのか」と不安に思ったり、心配もされている。
しかるべき段階で、住民への説明会やパブリックコメントが行われると思うが、新病院整備の方向性や計画については、できるだけ早期に住民にお知らせし、新病院への理解を深めていくことによって、住民に愛され、見守ってもらえる病院となる。地元西宮の住民からの要望や指摘なども踏まえ、特に重要だと思う点について、述べさせていただく。
まず、救急医療の充実について。現状の稼働病床は県立西宮病院が400床、西宮市立中央病院が193床、単純に合計すると593床の大きな病院となる。規模にあった救急医療を担う医師の確保や救命救急センターの整備など、救急医療の充実に力を入れていただきたい。また、ヘリポートを設置し、公明党が全国で推進しているドクターヘリの一層の活躍をすることも必要だと考える。このヘリポートの設置については、防災機能の強化の点からも重要である。
次に診療機能の充実である。心臓血管外科等の不足している診療機能の充実に加え、がん対策の推進などが望まれる。女性の視点から申し上げると、女性専用外来の設置や産科・小児科の医療体制の整備、宿泊型の産後ケア事業の導入など、女性にとっても安心して利用できる病院になっていくことが期待される。
最後に、病院周辺環境の整備について、新病院が建設される予定のアサヒビール西宮工場跡は最寄駅が阪神国道駅だが、駅舎の老朽化が進んでおり、車いすの患者や妊婦・高齢者・障がい者などの利便性向上を考えた、新たな整備の費用性も考えられる。
また、予定地がJR神戸線の線路沿いに立地している。当該地区周辺は、歩行者や自転車が安全に横断できる道路がないため、名神高速道路の西側付近に線路をまたぐ形の南北道路の開通による交通環境の整備が必要であると考える。西宮市や阪急電鉄・JR西日本などの交通機関と調整したうえで、できるだけ速やかに新病院へのアクセスを確立しなければならない。このことは、救急搬送経路の確保や通院される方のための交通網の整備とあわせ、早期着手が必要である。
以上のような課題を踏まえ、今後両病院の統合再編基本計画をどのように進めていくのか。[長島病院事業管理者]あり方検討委員会からも
①不足する診療科の充実による救急医療体制の強化
②産科・小児科の診療機能充実
③ヘリポートや免震構造等の災害に強い施設整備など多岐にわたる課題に対応するため、両病院を統合し新用地に新病院を整備することが望ましいとの報告を受けている。
今年度は統合再編基本計画を策定することとしているが、これらの課題に対応するため、関連大学とも十分調整を図りながら新病院の診療機能充実に努める。その中で、がん医療をはじめとする高度専門医療を提供する県立病院にふさわしい機能を備えつつ、女性の視点をも大切にした病院整備にも意を用いていく。
また、計画策定にあたっては早い段階から有識者や地域の医療関係者・住民代表等で構成する「統合再編検討懇話会」を開催し、ご意見を伺うとともに、計画案に対するパブリックコメントを実施する。
なお、阪神国道駅からのアクセス等の周辺整備についても西宮市と連携し関係機関とも十分協議し検討していく。今後も県民の理解を深めながら圏域における中核的な医療機関としての新病院整備を早期に進めたい。 -
6. 特別な支援を必要とする児童生徒への自立と社会参加に向けた支援体制について
質問と答弁のダイジェスト
[竹尾県議]県が平成31年3月に定めた「兵庫県特別支援教育第三次推進計画」に基づき、自立と社会参加の実現に向け様々な取り組みを推進しているが、更なる取り組みの強化を図ると共に、ハローワークや企業等との連携の強化などを一層推進していくべきである。
個々の子どもたちの特性を生かしつつ、子どもたちが学校卒業後も社会の一員として働き、充実した生活を送っていくためには、在学中から職業的自立を見据えたキャリア教育の視点を踏まえた支援体制を構築し、就労後も職場に定着できるような形になっていくことが、結果的に障がいのある生徒や保護者だけでなく社会全体への貢献につながるのではないか。
県として特別な支援を必要とする児童生徒への自立と社会参加に向けた支援体制について、現状と課題、今後の取り組みについて伺う。[西上教育長]特別な支援を必要とする児童生徒に対しては、一つには卒業後の生活を見据えた個別の教育支援計画等を作成し、就学前から卒業後まで確実に引き継ぐこと、二つ目は児童生徒が社会で適応できない場合に、本人・保護者が相談できるという支援体制が求められている。
昨年度策定した、兵庫県特別支援教育第三次推進計画では、特に次のような観点から体制づくりとして就職に向けた支援体制の構築を進めていくこととしている。1点目は、特別支援教育コーディネーターや担任が本人及び保護者に対して就職後の生活を見据えて就労支援機関等の情報を適切に助言できる体制をつくること。
2点目は、個別支援会議等で本人及び保護者とハローワークなど関係者が直接顔を合わせて個別の教育支援計画を着実に就職先に引き継ぐ体制をつくること。3点目は、就職先での定着を進めるため、就職支援コーディネーターを活用し、企業等との連携体制を作ること。この3点に取り組む。
一般質問
天野文夫県議
[質問項目]
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1. 播磨圏域連携中枢都市圏の取組と県の役割について
質問と答弁のダイジェスト
[天野県議]姫路が中枢都市となり8市8町で構成された播磨圏域連携中枢都市圏構想の推進が重要である。これは、播磨広域連携協議会を構成する13市9町に参加を呼びかけたことからはじまり、総務省の「新たな広域連携モデル構築事業」のモデル都市に選定され、平成27年4月には連携する7市8町と連携協約の締結及び播磨圏域連携中枢都市圏ビジョンの策定を行い、その後赤穂市が加わっている。
私は、この構想には、播磨国風土記をはじめ、長い歴史の中で培われた歴史文化、人々のたくましい生業、山海の自然に育まれた多彩な食文化など、様々な地域資源に恵まれた「豊穣の地・播磨」に新たな種を「播」き、豊かな地域資源に「磨」きをかけ、「人口減少社会でも光輝く播磨圏域」を創造することにより、地域創生の先駆けの役割を果たしてほしいと願っている。取組は平成27年度から始まっており、さらなる発展が期待されるところだが、私が心配するのは、この都市圏は姫路市が中心となりながらも、近隣市町が対等な関係のもと独立・主体的に連携し、それぞれがその個性を発揮してこそ成果を発揮するのに、ともすれば近隣市町が姫路市に飲み込まれてしまうのではないかと懸念したり各市町間の利害が対立したりして、取り組みが停滞するのではないかということである。したがって、潤滑油としての県の役割は非常に大きい。
そこで、県として兵庫五国の一国である播磨圏域連携中枢都市圏構想のこれまでの取組に対する評価、そして今後県が果たすべき役割とそのための取組について所見を。[井戸知事]周辺地域の中心都市への人口や産業、施設等の過度な集中という課題、圏域住民の一体感の醸成などは、もともと中心市とその周辺地域との関係としても生じるもので、連携中枢都市圏制度自体が持つ課題とは言えないのではないか。逆に、姫路市を含む構成市町がそれぞれの持つ強みを尊重しながら圏域で取り組むことにより、それらの課題を克服して概ね円滑に事業が展開されているのではないか。
特に、中枢都市以外の市町単独では実施が困難であった事業が、制度の枠組みにより実施され、例えば、各市町の地域資源を圏域ブランド「豊穣の国・はりま」と位置付けた結果、国内外の商談会への参加が実現できたこと、
2つに播磨の日本酒の認知度向上を目的として酒蔵と観光資源をめぐるファムトリップを実施していること。
3つに姫路市からの紹介により、大阪市に本社がある食品メーカーが宍粟市に進出するなどの成果が出ている。
県としても構成市町がそれぞれの特色、強みを活かしつつ、連携によるメリットを享受できるようにする必要があると考えている。まず、構成市町間の潤滑油として協議の場に参画している。
2つに、たとえば中播磨県民センターにおいて重要施策として位置付けている「播磨の日本酒」、あるいは「日本遺産銀の馬車道・鉱石の道」のPRなど、圏域と共通した事業を連携していって、相乗効果を高めていこうとしている。 -
2. 外国人観光客の災害発生時の支援体制について
質問と答弁のダイジェスト
[天野県議]本県においてもさらなる外国人観光客の増加が見込まれる中、昨年9月には台風21号の上陸や北海道胆振東部地震で大きな被害が発生し、関西国際空港や新千歳空港の一時閉鎖、ブラックアウトによる停電等で観光客に大きな影響が出た。とりわけ外国人観光客にとっては多言語での災害・交通・避難情報の提供が充分でないなど、災害時の対応に大きな課題を残した。これからは外国人観光客に安心して旅行をしていただく環境を構築し発信することが重要であり、そのことが兵庫県に外国人観光客を呼び込むことにもつながる。
そこで県における外国人観光客への災害発生時の支援体制について伺う。「地域防災計画」等に外国人観光客のための情報伝達や避難に関する事項、災害時のホテル協会や旅館組合との連携などのついては定められているのか。外国人観光客の安全・安心の確保のために災害時の支援体制を整え、その情報を発信することが大切である。
災害時の支援体制の構築は県と市町が役割分担して進める必要があるが、「ひょうごゴールでルート」のような広域的な取り組みを推進するにあたっては各市町の支援体制構築を先導するためにも県が果たすべき役割は大きい。
そこで、外国人観光客の災害発生時の支援体制の現状と今後の取組について所見を伺う。[早金防災監]県の地域防災計画では、県・市町等による外国人の被災状況の把握、外国語による相談や情報提供の実施の他、ホテル等における避難誘導等について定めている。そこで、災害時には駐日外国公館等と連携して、外国人の安否確認を行うほか、外国人県民インフォメーションセンター等による外国語での相談対応や情報提供を実施する。
また、今年度開発した「ひょうご防災ネット」アプリを通じて、12の外国語による災害情報を提供すると共に、音声読み上げ機能、あるいは絵文字の表示により外国人にもわかりやすい情報提供に努める。
今後さらに、災害時の外国人支援の一層の充実を図るためには、防災部門と観光・国際部門との連携と共に、県と市町との緊密な連携が不可欠である。昨年度、但馬地域で実施した合同防災訓練では、県の国際交流協会と市町の国際交流協会がともに参加し、外国人への多言語情報の表示訓練や避難誘導訓練を行った。このような連携を広げながら、効果的な支援につなげていきたい。 -
3. 播磨地域の滞在型観光への転換のための取り組みについて
質問と答弁のダイジェスト
[天野県議]姫路には多くの観光客が訪れているが通過型になっている。2018年度の姫路城の外国人入場者数は約38万7千人と最多を更新したが、市が実施した2017年度の観光動向調査では、姫路を訪れた外国人観光客のうち、市内に宿泊した割合は15%未満、日本人客も10%しか市内に泊まっていない。「滞在型観光」への転換は姫路の長年の課題だったが、近年姫路駅周辺ではホテルの新規開業が相次ぎ、大きなチャンスになりつつある。
滞在型観光の転換のためには姫路市及び周辺市町での、ここでしか体験できない魅力的な観光資源の提供が重要になる。県では、滞在型観光等を推進する地域の主体的な取り組みを支援する「外国人観光客体験観光促進支援事業」を実施し、平成30年度に中・西播磨地域では、家島ならではの体験プログラム「家島ほたるシップ事業」、神河町のサイクリングイベント「神河ヒルライム」、姫路城にまつわる体験ウォーキング、峰山高原リゾートスキー場での雪遊びやそば打ち体験等計7件が採択された。
有意義な事業展開だが、両事業合わせて全県で事業費約1500万円では本当に限界がある。もっともっと中・西播磨地域ならではの観光資源を数多く魅力アップしていかなければ滞在型観光には転換できない。私は当選後、姫路市周辺の赤穂市、相生市、神河町、福崎町を訪問し、各首長とお話をする機会があった。どの首長も姫路の観光客増を絶好の機会と捉え、地元観光地の魅力アップのために懸命に頑張っている。
県においては地元市町の動きを力強く後押しする、より一層の取り組みが必要である。「観光魅力アップ支援事業」等の拡充を含め、滞在型観光への転換のために県として姫路市や周辺市町の観光地の魅力アップの取り組みをどのように支援し、どう情報発信していくのか。[谷口産業労働部長]今後さらなる滞在を促すためには①観光客の関心を引く情報発信と②地域の観光資源の魅力を観光客のニーズに即して高めていくことが重要となる。
情報発信としては
①ファムトリップによる旅行会社等への宿泊施設や体験観光の魅力紹介
②リニューアルした県公式観光サイト「HYОGО!ナビ」での周遊ルートや口コミ情報の紹介
③銀の馬車道をはじめとする日本遺産や、お城をテーマにした「あいたい兵庫」キャンペーンの展開に取り組む。
次に観光資源の魅力アップについては、今年度から「外国人観光客体験観光促進支援事業」を拡充するとともに、「観光地魅力アップ支援事業」では、採択後のブラッシュアップやPRのアドバイスを行っている。また、多言語化やキャッシュレスを推進する「外国人観光客受入基盤整備事業」も拡充し、支援強化を図っている。 -
4. 防災・減災対策について
質問と答弁のダイジェスト
(1)-
(2)参画と協働による砂防堰堤の点検、維持管理の推進について
[天野県議]砂防事業とは、降雨や地震などに伴って発生する土石流に対し、砂防堰堤等を設置することによって県民の生命や財産を守る重要な公共事業である。現在、県下の土石流危険渓流のうち、土石流により被害を受ける可能性のある人家が5戸以上または官公署、学校、病院、旅館等のある個所は、4,310にものぼる。これらのうち、平成31年3月の調査では砂防施設の整備に1,511カ所に着手、整備率は約35%となっており、今後も土砂災害対策を強力に推進していかねばならない。
一方で、整備済み堰堤は県内に約2,900基と多数あり、険しい山中にあることも多く、既設堰堤の点検や維持管理について行政のみで実施していくのは限界がある。そのため、地域住民の自助・共助による地域防災力を高めていく必要がある。
平成27年9月定例議会一般質問で私は、地域住民による砂防堰堤見守り隊の推進を提案した。この見守り隊には、砂防堰堤の見守り以外に、見守り隊の調査した情報に基づいた土木事務所による適切な維持管理、見守り隊メンバーがリーダーとなって地元県民に対して防災意識の啓発と不安を取り除くための活動をしてくださり地域防災力の向上にもつながるといった効果も期待できる。そして、実際に姫路土木事務所と連携して、私の地元自治会で試験的に先行実施していただいているところだ。
近年、局地的豪雨が増加傾向にあり、土砂・流木災害が激甚化・頻発化していることを考えると、このような地域防災力の向上にもつながる住民主体の参画と協働による点検活動の重要性はますます高まっており、県下に広く推進していく必要がある。そこで、砂防堰堤見守り隊を含めた参画と協働による砂防堰堤の点検、維持管理の現状と今後の推進方策について伺う。[濱県土整備部長]地元住民等の参画と協働による点検活動は、県の定期点検を補完できることから有効であると考えている。姫路市白国地区の増位川堰堤では、地元住民が「砂防堰堤見守り隊」を立ち上げ、平成28年度から砂防堰堤の構造や土砂補足の仕組み等について、姫路土木事務所の出前講座を受けた上で、年2回程度の点検活動を行って頂いている。
また、姫路市の家島や坊勢島では県OB職員等で構成する兵庫県砂防ボランティア協会が、毎年出水期前に県、姫路市、地元役員と協働して砂防堰堤等の防災施設を点検する「防災パトロール」を行って頂いている。
これら地元住民等による点検活動の取り組みをさらに推進していくため、砂防堰堤まで容易に近づける箇所を中心に、地元自治会等への点検活動の働きかけを行っていく。特に新たな砂防堰堤が完成した地域では、防災意識が高まっていることから、積極的に参画を求めていく。また、砂防ボランティア協会に対しても防災パトロールの活動範囲の拡大について協議していく。