議会質問(代表・一般)

第371回(令和7年6月)定例県議会

大塚公彦県議
[質問項目]
-
1. 匠の技を次世代へ―山田錦の持続的な生産と技術継承への支援策について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]最初に、「匠の技を次世代へ―山田錦の持続的な生産と技術継承への支援策」について、質問します。
昨年12月、ユネスコが日本の「伝統的酒造り」を無形文化遺産に登録。本年1月には「兵庫の酒米『山田錦』生産システム」が日本農業遺産に認定されました。
しかし、生産現場では深刻な課題が顕在化していることも事実です。
農林水産省が公表する「米の流通状況等について」によると、主食用米の小売価格は、令和7年に入り、5kg当たり4,000円を突破。2年前と比べて約2倍となりました。私の地元、神戸市北区の生産者からは、「品質、収量向上のため倒伏しない土づくりや水管理などに手間ひまがかかる。また、資材高騰も相まって相当なコスト増となっている。」との声や、「経営安定性を考えれば、主食用米に転作した方が良い。」と切実な意見もあり、生産の継続が懸念されます。
日本農業遺産の認定申請書内にある、「倒して倒さず」の匠の技は、熟練農家の余人を持って代えがたい技術です。しかし、「作業時間が長く、技術の継承が難しい」とのイメージは、次世代への継承を難しくする要因の1つでもあります。
話は変わりますが、私は先日、神戸市北区 有野町二郎の、いちご農園を訪問しました。100年の歴史を誇る、「二郎いちご」の産地では、今、若手生産者が、環境制御により植物にとって最適な栽培環境を作り出し、収量を34%増加させた事例。また、兵庫楽農生活センターの研修生だった生産者が、熟練農家の経験値を的確に数値化。高い生産力を実現している事例を目にしました。
山田錦は、兵庫県が日本に、世界に誇れる農産物であり、継承すべき伝統文化です。日本農業遺産認定はゴールではなく、出発点です。江戸時代から続く「村米制度」の精神は、現代に継承すべき不変の精神です。
生産者の減少や高齢化が加速。主食用米の高騰の影響も受けている今こそ、「山田錦」のブランド力の更なる強化。そして、生産方式の継承を絶やさない対策が急務であると考えますが、当局のご所見をお伺いします。[齋藤知事]ユネスコ無形文化遺産の登録や日本農業遺産の認定は、世界に誇る「匠の技」「村米制度」などを次世代に継承すべきと評価されたものである。この認定を好機と捉え、生産への思いや価値など物語や優位性を広く発信し、国内外の市場を拡大することがブランド力を向上し、生産意欲も高めていくと考えている。
これからも山田錦を持続的に生産するためには、酒蔵が求める高品質な山田錦を安定供給し、新たな需要を開拓していくこと、生産者の減少や高齢化に対応した技術継承が不可欠である。
このため、高品質化に向けては、高温の影響を受けにくい栽培や水管理を支援するとともに、今年度から衛星データを活用し、生育状況に応じた施肥等のスマート技術の確立に取り組む。
また、新たな需要の確保に向けては、産地と酒蔵が連携した商品開発や、国際的な日本酒コンクールへの出展に加え、今年度は大阪関西万博での日本酒試飲会をはじめ、海外バイヤーを県内酒蔵に招いた商談会やテロワールツーリズム等を通じて、その魅力を発信し、海外への輸出等を後押しする。
技術の継承にあたっては、熟練技術をもつ生産者による講演や酒米試験地でのセミナーを通じた新たな担い手の発掘と技術を伝承しつつ、アプリによる生育診断など熟練技術の見える化や、農作業を請け負うサービス事業体の育成を進めていく。
このような取組を産地と酒蔵等が一体となって進めることで、ブランド力の更なる強化や先進技術を組み合わせた熟練技術の継承を実現し、世界に誇る山田錦の持続的な生産を図っていく。[大塚県議]なぜ生産者は、厳しい環境でも生産者は生産を継続するのか?私なりの解釈では、先祖代々の伝統を絶やしてはいけない強い誇りと使命感が大きい。主食用の米を生産したほうが儲かるのではないかという声がある中山田錦を守っていかなくてはならないという使命感を皆さんお持ちである。
しかし、ある方は時間との闘い高齢化・担い手不足は待ったなしと言われているこれを打開する最も効果的な方法は、補助金、生産コストで直接生産コスト削減できる即効性のあるもの、持続性はスマート技術により労働時間を短縮して収量を上げること、広がりとしては、ブランド化、国内外で長期的な収益基盤を構築していくことが大事。
しかし、端的に究極は、高く売れる仕組みを作っていく。場合によっては所得を保障していく。あらゆる手法を排除せずに守っていくしかないと思っている。所得が安定すれば生産者は続ける勇気が持てる。
日本農業遺産の認定は、こうした危機感の中で不断の努力を続けてきた成果だと思っている。県は山田錦を守るため最大限の支援を強くお願いしたい。 -
2. 本県の地域公共交通を守る取組について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]つぎに、「本県の地域公共交通を守る取組」について、質問します。
全国的に、地域公共交通はかつてない危機に直面しています。人口減少と高齢化などが原因で地方を中心にバスの減便・廃止が相次いでいます。
先月5月30日に開催された、国土交通省「交通空白」解消本部での調査結果では、全国2057地区が、駅やバス停などの公共交通が近くにないなど、住民が日常の移動に困る「交通空白」地区に該当。約1400万人が、日常の移動に困難を抱えているとされています。
さらに2024年から自動車運転業務の時間外労働に上限が設定され、運転士不足が全国的に加速。慢性的な人材不足に悩まされているバス業界では、運行体制の維持が困難となっています。
兵庫県でも同様に、特に郊外や中山間地域では、公共交通の維持が難しくなっています。県民生活に最も身近な交通手段である、県内の路線バスでは、2023年からの2年間で、少なくとも14市町で441便が減便。20市町において30路線が休廃止されました。
神戸市北区でも、長年、”地域の足”、”観光の足”であった路線バス「三宮有馬線」が、2024年3月末で休止。
また、「三木三田線」は神姫バスが長年運行してきた主要路線で、鉄道が通っていない神戸市北区淡河町、三木市、三田市を結ぶ広域路線でしたが2024年度に廃止となりました。
こうした路線バスの廃止により特に高齢者は、移動手段が限られ、買い物や通院、そして、社会参加の機会が減ることへの不安が強まっています。
その中で、住民主体のコミュニティ交通も、新たな社会インフラとして注目されています。
たとえば、「八多淡河バス」は三木三田線の空白を埋める形で便数が拡充され、住民の声を反映し、行政と連携して、生活交通の維持が図られています。
また、先日、本格運行した神戸市北区唐櫃台の「からとんくるりんバス」や、昨年に本格運行した、主にJR西宮名塩駅と神戸市北区生野、通称“生野高原”などを結ぶ「ふれあいバス」も、住民の皆様の長年にわたる努力を、行政が伴走することで誕生した好事例です。
こうした地域の努力を後押しするため、国は「交通空白解消本部」を設置。令和7~9年度の3年間を「交通空白解消・集中対策期間」と定め、自治体や事業者による地域の足の確保に向けた取組を促進しています。
本県としても、この対策期間において、市町や地域と連携しながら、多様な取組をさらに進めるべきだと考えます。地域公共交通は、地域の安心と活力、人と人とのつながりを支える社会資本です。県民の持続可能な移動手段の確保に向け、県として、生活に身近な地域公共交通である路線バスやコミュニティバスをどのように守っていこうとされるのか、当局のご所見をお伺いします。[新井田技監]身近な地域公共交通である路線バスやコミュニティバスは、通勤・通学、通院、買い物など県民の日常生活に不可欠な社会インフラです。県としましては、引き続き「地域の足」として維持できるよう支援を行っていくことが重要であると考えておりまして、バス路線の維持や運転士の確保をはじめ、地域の実情に応じた新たな交通手段の確保にも取り組んでいます。
バス路線の維持では、路線撤退をできる限り防ぐため、運賃収入では賄いきれない路線バスやコミュニティバスの運行経費に対して、補助を行っています。
運転士確保では、第2種免許取得等の経費に対する補助のほか、今年度は県バス協会等が実施する合同就職説明会やバス運転体験会などに要する経費についても補助を行っています。
地域の実情に応じた新たな交通手段の確保につきましては、公共 ライドシェア導入に係る車両購入等の立ち上げ支援のほか、今年度からは交通手段の再編に資する実証実験に要する経費につきましても幅広く補助対象とするなど、支援の拡充を図っています。
今後も、国の交通空白解消・集中対策期間における取組とも連携しつつ、持続可能な地域公共交通の確保に努めてまいります。 -
3. 地域包括支援センターの充実強化について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]次に、「地域包括支援センターの充実強化」について、質問します。
超高齢社会を迎えた今、要介護状態となった高齢者の方々が、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるためには、医療・介護・予防・住まい・生活支援などが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の構築と安定的な運営が不可欠です。
同システムの中核を担うのが、「地域包括支援センター」であり、「地域の支援の入り口」として重要な役割を果たしています。具体的には、総合相談業務や要支援者のケアマネジメント業務など、多岐にわたる業務を日々担っています。しかし、実際には、常駐する職員が非常に少なく、相談業務なども行き届かないことも課題と聞きます。
私自身、実際に各地の地域包括支援センターを訪問。職員の方々と意見交換を重ねる中、職員の皆さんが実に多種多様なご相談に対応され、最前線で日々奮闘されている姿に、深く感銘を受けました。
そうした中、先進的な取組に挑む地域もあります。私の地元、神戸市北区では、災害時の要介護者支援の強化に向け、北区地域包括支援協議会が中心となり、医師会や社会福祉協議会、介護支援専門員、訪問看護師など多職種・多機関が連携。災害時に配慮が必要な高齢者の支援計画の策定など、実践的な取組を進めています。その最前線で重責を担うのが同センターです災害時の対応などは、県下に共有すべき好事例だと認識しています。
兵庫県では、地域包括支援センターの機能強化を図るため、職員への相談対応研修などの取組を進めています。しかし、人員体制の不足に的確に対応し、より効率的かつ効果的な支援体制を築くためには、さらなる工夫が求められます。
例えば、研修で得られた先進事例の共有にとどまらず、県内各地の支援センターでの対応状況などを共有・横展開ができれば、各センターの対応力が底上げされ、地域全体の支援力向上につながると考えます。
地域包括ケアシステムがその機能を十分に発揮し、高齢者の皆さまが安心して暮らせる地域社会を実現するためには、最前線である地域包括支援センターの更なる充実強化が不可欠です。そこで、県としての現状認識と対応状況及び、今後の取組についてご所見を伺います。[岡田福祉部長]高齢者の多様なニーズや相談に総合的に対応し、必要なサービスを包括的・継続的に調整をいたします地域包括支援センターは、地域包括ケアシステムの構築に重要な役割を担っております。現在、県内にブランチ等含めまして297か所が設置されております。しかしながら、介護ニーズの増大等に伴い、センター業務の負担の増加や人材確保が困難であるといった課題が顕在化しております。
このため国では、令和6年度より、業務の負担軽減や効率化などを目指し、総合相談支援事業の一部について居宅介護支援事業所等への業務委託、また、センターに必置とされております保健師等の専門職について柔軟な配置を可能としましたほか、ICT等の導入支援や、介護予防ケアマネジメントに係る業務範囲の整理等を行ったところでございます。
県では、これまでからセンター職員の相談対応力向上研修や、通報件数が増加しております高齢者虐待への対応力向上研修を実施いたしますとともに、今年度からセンター管理者の更なるマネジメント力の向上のための研修内容を充実するなど、センター職員の資質向上を図っております。また、新たにAIを活用したケアプランの作成や、アプリの活用など市町におけますICT化への取組み事例を共有する会議を開催するなど、センター業務の効率化に向け横展開を図っているところでございます。
今後とも、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、災害時の備えなどを含め、地域包括支援センターの充実強化に向け取組んでまいります。[大塚県議]地域包括ケアの推進についてのコメントをさせていただきたいと思います。
先程ご答弁でもありました、業務効率化ですね、特に AI とかアプリとかを使って業務改善を図っていくということで、大変素晴らしいことをされているなと思いました。国の方針で市町が窓口でしているものなので、県として難しい部分もあるかと思いますけれども、研修の精度を高めることで、一人ひとりの業務負担を軽くしていきながら、効率的に相談対応できる体制を作ることが大事ではないかと思っています。
研修を様々されていますけれども、特に私が強調したいのは、質問でも触れました、多職種連携の充実強化、このようなテーマの研修もぜひ検討していただきたいと思います。
先程、事例を言いましたけれども、神戸市北区では進んでいまして、医師会や薬剤師会とか、いわゆる多職種のプレイヤー13の団体が集まって、今後避けては通れない、発災しないことを切に願ってはいますが、大規模災害への備えを欠かさずに行っているということで、すでに災害時の多職種連携による支援体制会議を開催しております。それぞれが情報を、いざという時には提供し合いながら、特に要介護者とか高齢者の方を速やかに、住民もある意味プレイヤーとなって助けていこうという仕組みがすでに構築され、そして訓練も始まっている、こうした先行事例もあります。
当然、県下にはたくさん地域包括支援センタ-がありまして、それぞれの事情が違うわけではありますが、このような課題にしっかりと対応するには、まずセンター職員の皆さんが的確な情報のもとで多職種の連携をすることが非常に大切だと感じておりますので、研修の充実を、さらに一層進めていただきたいと思っております。 -
4. 医療格差是正と持続可能な医療体制構築に向けたDX戦略について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]「医療格差是正と持続可能な医療体制構築に向けたDX戦略」について質問します。
日本の医療格差は非常に深刻です。2020年の統計では、OECD加盟国平均は人口1,000人当たり医師数3.6人ですが、日本は、OECD加盟38カ国中、36位の2.6人。明らかな不足状態です。国内では、京都府(3.56人)。埼玉県が(1.86人)で、約1.9倍の地域格差が発生。絶対的不足と、偏在問題が重なっています。
国内の2020年の統計では、兵庫県は全国平均をやや上回る2.66人です。しかし、神戸市(3.29人)と、但馬圏域(2.25人)で、約1.5倍の格差があります。
また、県全体の医師34.5%が神戸市に集中する「都市集中型偏在」で、医師が少ない地方部では、高齢化率40%超の地域で、在宅医療需要が急増するなど、医療体制の脆弱性が顕著です。
政府は2030年完全移行を目標に、「全国医療情報プラットフォーム」、「電子カルテ情報共有サービス」の整備やAI診断支援システム導入補助などを推進しています。
こうした中、民間事業者と連携した、地域医療のデジタル化も進んでいます。山口県防府市では、2024年から夜間のオンライン診療が開始。現在は週4回実施され、防府医師会と「ふるさと診療ドクター」が連携し、地域外医師も事前面談を経て参画しています。
こうした事例は一例にすぎませんが、誰もが安心して医療を受けられる社会の実現に向け、今後も官民連携によるDX化の取組などが期待されています。
国が医療DXを推進する中、本県でも各地の先進事例を踏まえ、医療格差是正と持続可能な医療体制の構築を目指し、地域の実情に応じたオンライン診療を始めとする、遠隔医療への取組を進めるべきだと考えますが、当局のご所見をお伺いします。[山下保健医療部長]少子高齢化や人口減少が進む中、医師の地域偏在を始めとする、医療格差の是正が大きな課題となっており、医療DXの推進は、特に医療資源に乏しい地域においては、今後の医療提供体制を維持していくうえで、極めて重要であると認識しております。
県では、持続的な地域医療の提供のため、専門医が遠隔で行う画像診断や病理診断、また、対面診療に代わって実施されますオンライン診療に係る通信機器整備等の支援を行ってまいりました。
また、昨年度には、オンライン診療の実証モデル事業を、県内の2か所の地域において実施いたしました。それぞれの地域の実情に応じまして、宍粟市では拠点病院と診療所とを繋ぐ固定式モデル、養父市では通信可能な移動診療車、いわゆる医療MaaS(マース)を患者宅に配送する移動式モデルを行いました。実証後に、県内市町関係者等を対象といたしました報告会を開催し、そこで得られた検証結果とノウハウを共有するなど、導入を検討しております自治体の後押しを行っているところです。
今後、遠隔医療をさらに推進するためには、患者情報の共有化や、高速で高精度な通信環境の整備、加えて導入費用の負担などの課題もありますが、引き続き、全国的に医療情報等を共有するプラットフォームの構築など、医療DXに関する国の動きや先進事例を注視しながら、医療格差の是正に向けた遠隔医療の活用を検討してまいりたいと思っております。 -
5. クビアカツヤカミキリの防除に向けた広域的な対策について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]「クビアカツヤカミキリの防除に向けた広域的な対策」について質問します。
今、本県のサクラやウメ、モモなどバラ科樹木が、特定外来生物であるクビアカツヤカミキリによって危機に瀕しています。
兵庫県では令和4年6月、明石市で初確認されて以来、神戸市、芦屋市、西宮市、三田市へと被害が拡大し、神戸市北区では令和4~6年度だけでサクラやウメ、モモなど131本の樹木が被害を受けました。特に箕谷、谷上、淡河地域では被害が急速に拡大し、三木市との境界にまで迫っています。地域の春祭りや桜まつりが困難になれば観光客が減少し、地域経済に大きな影響が及び、果樹農家にとっても経営を揺るがす事態です。
カミキリムシは自力飛翔だけでなく、物流資材に付着して市町をまたいで拡散します。よって、次の被害発生地を予測しづらい状況です。これまで県は、神戸市などと連携し、被害木の調査・防除、専門家派遣、資材提供などに取り組んできましたが、被害拡大のスピードに対策が追いついていけない恐れがあります。何より、市町単独では財政・人員に限界があり、国の補助金も十分とは言えません。県が主導して広域的な対策を強化することが不可欠です。
徳島県では、クラウドファンディングで成虫誘引技術や有効薬剤の研究資金を調達するなどにより3年間で被害面積を78%削減。5年間で56億円規模の経済損失を回避しました。また、大阪府では、市民参加型モニタリングアプリ「バイオーム」や、ドローンによる広域監視を導入。早期発見率を大幅に高めました。
本県では、先日の定例記者会見で齋藤知事が、県民に対し、クビアカツヤカミキリを見つけた際の県への通報を呼びかけました。早期発見・早期防除が重要な点からは大変評価できますが、被害確認後の体制整備を強化することが重要です。今後、被害が拡大する可能性があることも見据え、より広域的かつ技術的な対策が必要であると考えられます。
私は先日、被害が確認された、北区の「ひょうご県立こころの医療センター」のサクラを視察しました。この桜は入院患者や来訪者の心を支える、大切な存在であることを教えていただきました。少ない予算で雨の日も風の日も、防除に奔走する職員や関係者の努力を目の当たりにし、県民の誇りである樹木を守ることの重要性を、改めて痛感しました。
サクラや梅の木を守ることは、地域の文化・経済・安全を守る投資です。兵庫県として防除に向けた広域的な対策にどのように取り組んでいくのか、当局のご所見をお伺いいたします。[福山環境部長]クビアカツヤカミキリは、令和4年6月に明石市で発見されて以来、神戸市や三田市など5市に被害が拡大しており、隣接する市町への拡大防止に向け、県として広域的な取組が必要と認識しています。
被害の拡大防止には県民からの情報提供が必要不可欠であるため、テレビやラジオ等で発見時の通報を呼びかけるほか、この度、著名なラジオDJが出演する啓発動画を作成いたしました。今後、県・市町HPやSNS、街中のサイネージ等で発信を強化してまいります。
また、県が主導して、市町との情報共有の場を定期的に設定し、被害未発生の市町に対しても、体制整備の必要性を訴えてきたほか、隣接する府県との間においても、被害が発生した場合における本県への連絡体制を新たに構築いたしました。
実際に被害が発生した場合には、緊急の対策を要するため、市町に代わり、県が主体的に専門家派遣、周辺状況の調査、初期防除を実施し、その後、市町が実施する初期防除後の対策に繋げることとしております。
今後も県では、県民への普及啓発や市町・近隣府県との連携、初期防除等の取組により、重要な地域資源であるサクラや梅の木を、クビアカツヤカミキリからしっかりと保全をしてまいります。 -
6. 神戸特別支援学校の教育環境改善について
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]「神戸特別支援学校の教育環境改善」について、質問します。
神戸市北区大脇台にある、神戸特別支援学校は、昭和53年に知的障害部門の養護学校として開校。平成25年度には肢体不自由部門も併置され、現在は神戸市北区を通学区域としています。長い歴史を持つこの学校が、障害のある児童生徒とそのご家族をお支え続けてくださったことに、まず深い敬意と感謝を申し上げます。
5月上旬、私自身が学校を視察した際、教職員の皆さんが、子どもたち一人ひとりに寄り添い、懸命にサポートされている姿に胸を打たれました。と、同時に、マンパワーだけでは補えない構造的な限界を痛感しました。
例えば、急傾斜で危険なスロープ、全館空調がないため体温調節が難しい教室環境。そして15メートルもの高低差をジグザグの長いスロープで移動しなければならない運動場やプール。どれも子どもたちの学びと安全を脅かす深刻な問題です。
一方、同じ神戸市内でも、神戸市西区にある、平成29年に開校した市立いぶき明生支援学校は、知的障害部門と肢体不自由部門を併置し、当初から完全なバリアフリー設計を実現しています。同日、私は、同校も見学しましたが、障がいのある子どもたちが安心して学べる最新の設備が整っています。
もちろん、開校時期の違いも大きいでしょう。しかし、特別支援学校は通学区域が定められています。学校ごとに教育環境が異なると、その違いが子どもたちの学びの質や将来を左右する「教育格差」として現れる恐れもあります。
そのことは、データからも推察されます。神戸市北区では、令和6年度の特別支援学級在籍生徒数が438人です。北区内の小中学校の総児童生徒数15,309人に対し、約2.9%という数値です。
これは神戸市内の平均値を上回る数値であり、その背景には、神戸特支の施設の老朽化が少なからず影響していると推測されます。設備の違いがそのまま進学先の選択に直結。そして、地域ごとの進学傾向にも、差を生じさせてしまっているのではないかと危惧しています。
神戸市では、充実した施設を有する特別支援学校が次々と開校し、学びの環境が整いました。県では、神戸特別支援学校の主体的な整備が十分に進まず、北区の児童生徒や保護者の間に不安や格差を生んでしまった、といっても過言ではありません。
もはや対症療法で乗り切るのは限界です。私は、この教育格差を是正し、根本から改善するには、「移転・建て替え」しかないと強く求めます。
県は主体的に新たな学校づくりに取り組むべきです。神戸特別支援学校の移転、そして充実した環境が整った校舎の建設を早急に実現すべきと考えますが、当局のご所見をお伺いします。[藤原教育長]神戸特別支援学校は、昭和53年に知的障害部門の養護学校として開校し、更に障害の多様化に対応するため、平成25年度に肢体不自由部門を併置した。この間、耐震改修のほか、手すりやスロープの設置、教室・トイレ改修等を行ってきたものの、エレベーターが上層階まで通じていない等残された課題もあり、児童生徒の移動支援を教職員のマンパワーに頼っている状況である。
昨年、現地視察を行ったが、築50年を迎える中、校舎等の老朽化がかなり進んでいること、また、敷地内での移動の高低差がご指摘のとおり最大で15mあること、敷地の有効面積が狭く仮設校舎を設置できないことなど、学校の教育環境を改善するためには、移転改築により対応せざるを得ない状況であると認識している。
このため、移転改築にあたっては、まずは近隣での適地の確保が必須であると考えており、現在、神戸市教育委員会に対し、統廃合等により活用できる学校施設・敷地についての情報提供を依頼している。また、新たに、県と神戸市の担当部署による意見交換の場を設けており、神戸特別支援学校の移転改築が県市双方にとって最優先の課題であることも認識している。平成29年に開校した西神戸高等特別支援学校では、神戸市が所有する土地の無償貸与により整備するなど、県と神戸市が協調して課題解決を図ってきた実績もある。
今後とも、引き続き神戸市と協議を重ねるとともに、神戸特別支援学校の移転改築整備について、今年度策定する「県立特別支援学校整備推進計画」の中に位置付け、知事関係部局ともしっかり協議していく中で、計画の推進を図り、児童生徒の安全安心で質の高い教育環境の確保に努めるのでご理解いただきたい。[大塚県議]移転建替への検討を進めたい、今年度計画を策定していくという教育長の力強い答弁に心から敬意を表し、子どもたちの未来を最優先に据えた英断に深く感動した。
昭和54年度以降、特別支援学校の設置義務は県とされており、今後は県がより主体的に取り組んでいくことを切望している。また、昭和54年以前に神戸市他各市町が設置した学校は、県市で役割分担を協議してきたと承知している。平成19年に神戸市内の特別支援学校については、通学区域を含む役割分担を協議し、神戸市北区の肢体不自由児童生徒を神戸特別支援学校で受け入れることとなっている。
しかし、そこから20年近く経過し、神戸市立いぶき明生支援学校に在籍する知的障害児童生徒が急増し、今後、神戸市が分校設置を予定するなど、従来の役割分担では対応が困難となっている。大切なのは、県立・市立に関係なく、どこに住んでいても充実した環境を整えるこの一点に尽きる。県市の担当者間でこの枠組みの意見交換をしたことは意義深く高く評価したい。県市が今後一層手を携えて、役割分担を含めた協議を未来志向で継続し、児童生徒が笑顔で学べる環境づくりに邁進してもらいたい。 -
7. 職員のモチベーション向上と風通しのよい組織づくりについて
質問と答弁のダイジェスト
[大塚県議]「職員のモチベーション向上と風通しのよい組織づくり」について質問します。
昨今、人口減少や少子高齢化、デジタル社会の急速な進展など、自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。行政課題はますます複雑・多様化し、限られた人材で、より質の高い県民サービスを提供することが、全国の自治体共通の課題となっています。
こうした背景のもと、総務省は、全国の自治体に対して「エンゲージメント」、すなわち職員一人ひとりの組織や仕事への貢献意欲を高めることを強く推奨しています。
エンゲージメントの調査は、各自治体が導入を始めています。例えば、大阪府四条畷市は、「日本一前向きな市役所」を目指し、同調査を本格的に導入。職場ごとの「働きがい」や「コミュニケーションの状態」などを細かく数値化。その結果から各部署の強みと課題を抽出。課題は、職員自らが改善案を考え、実行。調査による客観的なデータを根拠に提案ができるため、現場の納得感が高まり、皆が前向きに改善に取り組めるようになった好事例となりました。
また、同調査をもとにした改善は、若年層の離職防止。さらに、新たな人材の確保という点でも大きな効果を発揮します。少子化・人手不足の中にあって、公務員も、「選ばれる職業」でなくてはなりません。働きがいのある職場には、優秀な人材が集まります。全国の自治体でも、エンゲージメントスコアが高い組織ほど離職率が低く、職員の満足度や生産性が向上するという調査結果が出ています。
兵庫県庁でも、職員がモチベーションを高く持って働ける環境を整備し、県民の皆さまに質の高い行政サービスを提供するため、令和6年度から「エンゲージメント調査」を導入しました。
また、兵庫県庁では令和5年3月に「兵庫県人材マネジメント方針」を策定。全職員が共有する価値観と行動指針「HYOGO’s WAY」を定めました。求められる職員像である「HYOGO’s WAY」では、多様性を力に、すべての職員が一丸となり、「新時代への挑戦」に向けて進んでいくものとあります。大変すばらしい、そして誇らしい指針だと心から思います。だからこそ、どんな時代にあっても、職員の皆さんが「この職場で働いてよかった」と心から実感できる環境づくりを強く念願します。このエンゲージメント調査の現状と課題を踏まえ、職員のモチベーション向上と風通しの良い組織づくりにどう活かしていくのか、当局のご所見を伺います。[齋藤知事]県民本位で質の高い行政サービスを実現するためには、行政サービスを担う職員一人ひとりが高いモチベーションで、持てる力を最大限発揮できる組織づくりが必要でございます。そうした組織を実現するための1つの手法として、令和6年度から本県として、職員の職場への愛着心や貢献意欲をはかるエンゲージメント調査というものを実施しております。
昨年11月の第1回では職員と組織の信頼関係を表す偏差値である、エンゲージメントスコアは全庁で47.2ということで、11段階中7番目の評価であり、全庁的な課題として、組織の理念・方針が、職員と共有(されていないこと)が課題で、職員が仕事のやりがいを見いだしていくということが大事だということが挙げられました。
そのため、「ひょうごビジョン2050」や「HYOGO'sWAY」等の計画・理念を、研修の機会などを通じて繰り返し情報発信を行うなど、改善に向けた取り組みを進めて参ります。
所属ごとにもスコア及び強み・弱みをフィードバックした上で、管理監督職が中心となって、各所属の課題に応じたアクションプランを策定し、モチベーションの向上に向けた取組を職場全体で進めております。
今年度からは5月と11月の2回、定期的に調査を行うということにしております。エンゲージメントを高める取組を中長期的に推進することで、職員がやりがいを持って生き生きと業務に取り組める職場環境を整え、組織のパフォーマンスを最大化して、行政サービスの質の向上につなげて参ります。

里見孝枝県議
[質問項目]
-
1. 第三期兵庫県地域創生戦略の推進に向けた取組について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]令和7年度、斎藤知事のもと、「新たな躍動が広がる兵庫」の次なるステー
ジがいよいよ本格的に始動しました。
本年度は、「誰も取り残さない安全・安心な兵庫」「若者が輝く兵庫」「活力
がわきあがる兵庫」という三本柱と、それらを支える「県政運営基盤の構築」
が重点項目として掲げられています。
阪神・淡路大震災から30年の節目に向けた「創造的復興サミット」の開催
をはじめ、県立大学の授業料無償化や県立高校への重点投資、不登校対策の
推進、さらには大阪・関西万博や「ひょうごフィールドパビリオン」への取
り組みなど、県民にとって分かりやすく希望を感じられる施策が着実に進め
られているものと受け止めております。
また、人口が減少しても地域の活力を維持し、将来への希望を持てる地域
創生を実現するため、今後 5 年間の取組方針を定めた「第三期兵庫県地域創
生戦略」を政策コーディネーターが中心的な役割を担い、昨年度末策定しま
した。
この戦略においては、重点的に取り組む課題への対応について、子育て世帯
向けの住環境整備の促進などに取り組む「若者・Z世代応援プロジェクト」や、
社会で生きづらさを感じている人への孤立防止・居場所づくりなどに取り組む
「ひとりじゃないプロジェクト」など、6つの「戦略推進プロジェクト」とし
て設定しており、今年度はそのプロジェクトに基づいた具体的な取組を展開し
ていくことと認識しております。
そこで、新型コロナ感染拡大の影響による婚姻数及び出生数減少の加速化や、
東京一極集中の再加速による20歳代の若者を中心とした県外転出等を背景に、
本県の総人口が減少を続けているという課題に対しては、政策コーディネータ
ーがどのように関わり、兵庫県の特色や強みを、どのように戦略へ反映し課題
を解決しようとしているのか。また、実施に当たっては、関係部局とどのよう
に連携をとって実行し、実効性と成果を上げていくのか、ご所見を伺います。[齋藤知事]第三期地域創生戦略の策定にあたりましては、中心的な役割を担った政策コ
ーディネーターのもと、兵庫の強みを活かした分野横断的な取組を強化してい
くことに意を用いさせていただきました。
そこで新たに設定したのが、6つの戦略推進プロジェクトであります。この中
では、兵庫の強みである①良好な住環境や質の高い教育環境を活かした「若者・
子育て世代の定着促進」、②地場産業や成長産業などの集積を活かした「多様な
産業の競争力強化」、③フィールドパビリオン等の五国の多彩な資源を活かした
「新たな価値の創出」などを進めることとしています。
これらの取組が成果を上げるには、政策コーディネーターが関わりつつ、部局
横断的に推進する必要があります。例えば、すでに日本酒・山田錦の振興に向け
て、地場産業・観光振興に取り組む産業労働部、酒米振興に取り組む農林水産部、
フィールドパビリオンのさらなる展開をめざす企画部が連携した勉強会を立ち
上げ、検討に着手していますが、こうした具体的な課題に応じた分野横断の取組
を広げてまいりたいと考えています。
地域の課題がますます多様化・複雑化する中で、これまで以上に部局の枠を超
えた総合的な対応を強化し、新たな躍動を生み出す兵庫づくりを進めてまいり
ます。[里見県議]兵庫県地域創生戦略につきまして、知事から現場の状況をお聞かせいただき
ました。出生数の減少について、ニュースでも見る中、兵庫県では、20歳代の
若者を中心として、県外へ転出している背景があり、部局横断的に物事を図って
いくことは、非常に重要だと思っています。多様化する時代ですので、戦略を進
めていただく中で、五国兵庫をしっかり前に進めていただきたいので、どうぞよ
ろしくお願いします。 -
2. 第三者委員会及び調査報告書の位置付けについて
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]文書問題や情報漏洩問題に関して、知事が自ら設置した第三者委員会及び
その調査報告書の位置付けについて確認します。
第三者委員会は、利害関係をもたない外部の専門家などによる第三者が、
企業や組織から独立して客観的に調査する委員会として設置され、調査の公
正性と透明性を担保しながら、事実関係や不祥事の原因、経緯等を調査し、
その結果を対外的に公表することで、企業・組織の信頼と持続可能性を回復
するために設置されるものと理解しています。
文書問題の第三者委員会は、知事や当時の副知事、総務部長等の県幹部の
違法行為の疑いを告発する文書の調査を、知事等の利益相反する幹部の指示
のもとで、人事課が行ったことに対して、多くの県民から疑問が呈され、県
議会からも申し入れを行い、県が設置することを決定したものです。
従って、設置の理由、目的は、県から独立して客観性、公正性、透明性を
担保した第三者による調査を改めて行い、県民の信頼回復を実現することに
あったはずであります。今回、3つの第三者委員会に県民の血税を合計で約
5,200 万円も投じて調査を実施しました。
しかしながら、3つの第三者委員会の調査報告書のうち、公益通報者保護
法違反の指摘や、元県民局長の私的情報の漏洩に関する元総務部長への指示
の疑いといった指摘について、齋藤知事は報告書を重く受け止めるとしなが
らも、報告書の内容とは異なる主張を述べており、内容を受け入れていませ
ん。
齋藤知事は、第三者委員会や、調査報告書について、どのような位置付け
にあると認識されているのでしょうか。
第三者委員会の報告書を受け入れないとすると、かかった経費は無駄にな
ってしまいますが、この点についてもどのように考えているのかあわせてご
所見をお伺いします。[齋藤知事]第三者委員会の調査は、県から独立した第三者が行うことにより、公正・中立な立場から、客観的に事実関係を究明・把握・認定し、必要に応じて再発防止等
に関する意見を形成し、これを報告することを目的としています。
報告書の指摘を踏まえ、具体的には、先月12日には、風通しの良い職場づく
りのための研修を行い、その中で、公益通報、個人情報保護についても理解を深
めました。また、公益通報については、職員等が安心して公益通報できるよう全
職員への丁寧な制度周知等を行うとともに、情報漏えいに関しても、改めて、全
職員に対し、公文書や個人情報の適正な取扱い、情報セキュリティ対策について
周知徹底を行いました。
なお、3つの第三者調査委員会は、県組織による内部調査だけでなく、独立し
た第三者による調査の必要性を指摘する意見があったことも踏まえまして、県
民の信頼を回復するために設置したものであります。その実施経費については
公正・中立性が担保された調査に要した経費であり適正なものであったと認識
しております。
引き続き、第三者委員会から指摘された課題等を踏まえて、反省すべきところ
は反省し、改めるべきところは改めて参ります。
今後は、より風通しのよい職場環境を構築することで、よりよい県政を実現し、
県民の信頼回復に努めて参ります。
[里見県議]知事の方からございました、第三者委員会の報告書について、私の方からは
5200 万円の税金が投入されたというお話をさせていただいたところでございま
す。適正だったという知事からのお話ではございましたが、報告書をどう受け入
れるかというのは、まだまだこれから、知事にたくさんご説明をしていただく必
要があるのかなと思っているところであります。この設置した第三者委員会の
報告書を受け取る、受け止める中で、しかるべき対処が必要なのではないかなと、
また、そこに思い切って踏み込むことが、知事の信頼回復の第一歩になるのでは
ないかな、と考えるところでございます。 -
3. 兵庫県における公益通報の対応体制について
質問と答弁のダイジェスト
(1)「組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置」及び「公益通報 対応業務における利益相反の排除に関する措置」に係る2号通報、3号通報 の取り扱いについて
[里見県議]次の質問は、兵庫県における公益通報の対応体制についてです。
昨年の百条委員会において、公益通報を所管している財務部長への尋問の中
で、兵庫県における内部公益通報、つまり1号通報以外の公益通報について、
どのような体制や業務フローに基づいて対応するのかが不明確であることが
明らかになっています。
また、文書問題を契機に様々な指摘があり、県としても検証等を行い、「兵
庫県職員公益通報制度実施要綱」を昨年12月及び本年4月に改訂し、外部窓
口の設置や、公益通報対応業務従事者の指定、財務部長が公益通報の事務を統
括してきました。そこで、公益通報の対応体制の改善、整備がどのように進ん
だのか確認したいと思います。
まず、法定指針では内部公益通報については「部門横断的な公益通報対応
業務を行う体制の整備」として「組織の長その他幹部からの独立性の確保に
関する措置」と「公益通報対応業務における利益相反の排除に関する措置」
が求められています。しかしこれらの措置は、2号通報、3号通報には適用
されないようにも法定指針の文言から見えます。
この点について、県として2号通報、3号通報に関して、事実確認等の調
査を実施する場合に、これらの法定指針の措置はどのように対応するのかに
ついてお伺いします。
[齋藤知事]公益通報者保護法に基づく法定指針では、内部通報、すなわち1号通
報への体制整備として、「組織の長その他幹部からの独立性の確保」や
「公益通報対応業務における利益相反の排除」などを求めております。
一方、2号・3号通報に係る「独立性の確保」や「利益相反の排除」
が指針上明記されておらず、県においても体制整備は十分にはなされておりませんでした。
今後、この度の法改正やそれに伴うガイドラインの変更を踏まえまし
て、適切な対応を図っていきたいという風に考えております。
(2)「不利益な取り扱いの防止に関する措置」及び「範囲外共有等の防止に関 する措置」に係る県の対応体制について
[里見県議]次に、2号通報、3号通報であっても公益通報者の「不利益な取り扱いの
防止に関する措置」や「範囲外共有等の防止に関する措置」を取ることが
体制整備義務として法定指針で定められています。
これらの2つの措置の内容として、不利益取り扱いや範囲外共有等が行わ
れないように防止することや、状況を把握するような体制が求められており、
不利益取り扱いや範囲外共有を把握した場合には、救済・回復措置を取ると
ともに、当該行為を行なった者に対して、懲戒処分その他適切な措置を取る
とされています。
これらの点について兵庫県ではどのように指針にそった対応をすること
となっているのでしょうか?特にこの度の文書問題のように、知事や副知事、
総務部長等の幹部が関与するようなケースのことも踏まえた対応体制につ
いて詳細をお伺いします。[齋藤知事]「不利益な取扱いの防止」に関しましては、1号・2号通報について、「兵
庫県職員公益通報制度実施要綱」等の内部規程において禁止しております。不
利益な取扱いが確認された場合には、速やかに救済措置を講じることとして
おります。
また、「範囲外共有等の防止」に関しても同様に、内部規程において対応者
に通報内容や通報者に関する情報に係る秘密保持の徹底を定め、法の罰則規
定を引用し適切な対応を求めております。
一方、3号通報に関しては、現時点では内部規程は存在しておらず、他府県
の先行事例なども参考に受理対応や調査対応などの運用ルール等について検
討を始めております。
1号通報については、知事や幹部職員が通報対象となる場合、利益相反を回
避すべく、通報対象者が事案に直接関与しないことを徹底しております。また、
昨年12月の要綱改正により、必要に応じ調査を外部の専門家に委任できる体
制を整えるなど、中立性・客観性を担保しております。今後、2号・3号通報
に関しても同様の対応を検討してまいります。
これらの取組には、職員の理解と行動が何より重要でございます。私を含
め幹部職員への研修を継続して行っていくほか、全職員に対して制度理解の
促進を図ってまいります。(3)公益通報制度における体制について
[里見県議]公益通報者保護法の立法趣旨は、公益のために事業者の法令違反を内部
告発した人が、その通報を理由として解雇や不利益な扱いを受けないよう
に、通報者を保護することにあります。この通報者保護が担保されること
により、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関する法令の遵守
を促し、国民生活の安定と社会経済の健全な発展に貢献することに繋がり
ます。
兵庫県としても、行政の立場として模範となるよう、法の趣旨に基づいた
対応体制を整備しておくことが非常に重要ですし、第三者委員会の報告書の
中で、想定外の事態が生じた場合に公益通報者保護法が定められた趣旨とそ
の目的、その理念に従って行動できるよう事業者が守るべきことについての
啓発活動が不十分であったとの指摘を形にしておく必要があります。そこで、「兵庫県職員公益通報制度実施要綱」の改訂等により、現状の兵
庫県の公益通報の対応体制が、現行法が求める体制にもれなく適応できてい
るのかどうか?もし課題が残っているとするならどのような課題があり、今
後の検討の方向性等についてどのように考えているのかご所見を伺います。
[齋藤知事]本県では、全ての公益通報者が不利益な取扱いを受けることのないよう、内
部規程に改正を加えつつ、法の趣旨に沿った体制を整備し、適切に対応してき
てまいりました。
一方、2号・3号の外部通報につきましては、通報窓口の設置や一元化が困
難であり各部局で個別に対応せざるを得ないということで、内部通報に比べ
まして、ノウハウが蓄積されない等の課題もございました。
これを踏まえ、今年度から、公益通報制度全般を財務部で統括し、制度運用・
研修・周知等の一体的実施や相談・支援体制の集約等による対応強化を図って
おります。
今後、今般の公益通報者保護法の改正後の改正の内容や、そして指針、ガイ
ドライン、他の団体の先進事例、有識者の視点も踏まえ制度の充実を図り、通
報者が安心して声を上げられる、風通しの良い通報環境を整えてまいります。
[里見県議]公益通報ってやはり、事業者や県庁においても、やはりそれを告発する人が
最大限守られなければならないというところが一番だというふうに思う中、
今回前回までは、なされていなかったこの2号・3号通報は適切な扱いではな
かったというふうに思いますが、今後適正に2号・3号であっても検討してい
くというようなお話でもございました。
この2号・3号の通報であっても、やはり公益性や不正の可能性をしっかり
訴える、その人たちが守られるように県としても事実確認の調査がしっかり
行っていただける体制を作っていただきたいというふうに思います。
まだまだ分断が起きている兵庫県でございます。県民が納得できるように
主観的な主張だけで収まるのではなくて、また本当に客観性、公正性、透明性、
質問にも書かせていただきました。これが本当に、この調査報告書を尊重して
いけるように体制整備も含め、この先を進んで行っていただきたいなという
ふうに思っておりますので、そこはよろしくお願いいたします。 -
4. 新庁舎整備について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]次の質問は、新庁舎整備についてです。
県庁舎の再編計画案につきましては、令和4年3月に「県庁舎等再整備基本
構想」が一旦凍結された後、改めて令和6年8月に「県庁舎のあり方等に関す
る検討会」が設置され、第1回検討会を皮切りに、「新しい働き方部会」およ
び「にぎわいづくり部会」において、専門的な議論が進められてまいりました。
現在示されている計画案では、まちづくりとの連動を図りながら、平時・
災害時の双方に対応可能な庁舎整備を目指すとされております。具体的には、
広域防災拠点として、災害対応業務の予備スペースや、応援職員の受け入れ
スペースを確保するほか、災害対応力の強化と働き方改革を志向した、いわ
ゆる「コンパクトな新庁舎整備」に着手するものとされています。
その中では、災害時のみならず平時にも県民や観光客等が利用できる多目
的空間の整備や、神戸都心の回遊性向上に資するオープンスペースの創出な
ど、地域のにぎわいづくりにも資する構想が示されております。あわせて、
有利な財源を活用することにより、財政的負担の軽減も図られるとのことで
す。
こうした取組により、兵庫県の新たなシンボルとしての庁舎整備が期待さ
れる一方で、県政改革調査特別委員会においても指摘があったとおり、「コン
パクト」という言葉だけが先行し、その具体像が十分に共有されていないと
の懸念もあります。県民や職員と新庁舎の目指すべき姿を共有するためにも、
さらなる具体的な議論が必要と考えます。
加えて、基本計画から実施設計に 3 年を要し、解体工事を建設工事と一体
的に実施する手法については、物価高騰や大規模災害のリスクが高まる中に
あって、防災面・コスト面の双方においてリスクを増大させるおそれがあり
ます。また、現行案では 2 度の庁舎移転が必要となることに加え、長期間に
わたり民間オフィスを賃借することによるコスト増も避けられず、この点に
ついては、予算委員会において、わが会派の伊藤勝正議員からも指摘がなさ
れたところであります。
以上を踏まえ、計画期間や整備期間の短縮化の検討について、改めて当局の
ご所見を伺います。[齋藤知事]新庁舎整備においては、災害対応力の強化と新しい働き方への対応、
また周辺地域にふさわしいにぎわいづくりの観点も踏まえながら、秋頃
を目途に基本構想の策定を進めております。
策定にあたりましては、県民の多様な意見を幅広く聴取するため、パ
ブリックコメントを実施いたします。加えて、新庁舎での働き方について若
手職員を中心とした議論の場の設置や新庁舎整備に係る職員提案の募集
も行う等、職員とも一緒になって検討して参ります。このような取り組
みを進めながら、新庁舎の目指すべき姿を県民や職員の皆さんと共有し
ていきたいと思います。
一方で、新庁舎が完成するまでの間は、県庁1・2号館の耐震性が不足し、
空調や配管等の設備の老朽化も進んでいる状況であることから、職員の
安全・安心を早期に確保するためには、暫定的な移転は避けられないとい
うふうに考えております。
物価高騰や人手不足等、今後の社会経済情勢は不確実性が高まっており、防災面においても南海トラフ地震の30年発生確率が80%程度に引き
上げられる等、整備期間の短縮を図る必要性は十分に認識をしておりま
す。整備内容の具体的な検討を行う基本計画において、整備手法や発注
方法等の工夫を図り、工事期間の短縮を図っていくとともに、基本計画・
基本設計期間の更なる短縮化についても検討していきたいというふうに
考えております。
-
5. 物価・エネルギー価格高騰対策について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]次の質問は、物価・エネルギー価格高騰対策についてです。
物価・エネルギー価格高騰対策について、我が会派は、県民の生活を守るた
め、5月21日に知事に対して緊急要望を行い、プレミアム付デジタル券「は
ばタンPay+」の継続実施及びLPガスの負担軽減策の実施について、令和
7年度6月補正予算編成へ反映するよう申し入れたところですが、改めて質問
いたします。
5月に発表された4月の全国の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を
除く総合指数が前年同月比で3.5%上昇し、長引くコメ価格など食料品中心に
高騰し、物価やエネルギー価格の高騰も、いまだに家計や事業活動に深刻な影
響を与え続けています。
本県は、国の「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を
踏まえ、「重点支援地方交付金」を活用し、令和6年度12月補正予算編成にお
いて、我が会派が要望し続けてきた、はばタンPay+第4弾の申込枠の拡大
や子育て応援枠の追加などの緊急経済対策を実施してきました。
今6月補正においても、長引く物価高騰対策として、県民の消費喚起を促す
実効性のある対策である、はばタンPay+の継続実施が必要と考えておりま
すが、今後は、高齢者や子育て世代など多様な世帯に対して、現状に合った支
援が行き届くよう、プレミアム率や購入限度の事業概要を見直し、事業展開す
るべきと考えます。
また、LPガスの支援について、この度、国において、米国の関税措置が輸
出産業、関連する中小企業や地域経済、国民生活に与える影響を鑑み、緊急対
応パッケージの一つとして、電力使用量が増加する7・8・9月の電気・都市ガ
ス料金の支援を実施する予定であることを踏まえ、県においては、LPガス販
売事業者を通じた利用者負担軽減策を実施する予定です。
一方、令和5年12月補正や令和6年12月補正などにおいて、福祉施設や私
立学校、医療機関等の一時支援金等も実施してきましたが、支援金が減額され
ている私立幼稚園や医師会などからは「物価は上がり続け、高騰が長引いてい
るのに支援金は減額されている」と厳しい声も届いてきております。
再度の支援が必要であると考えるとともに、前回措置時より物価が高騰して
いることを踏まえると支援金の増額についても検討の必要があると考えます。
そこで、この度どのような観点から6月補正を編成したのか、その考え方に
ついて当局の見解を伺います。[齋藤知事]コメの平均価格が前年同期と比べて2倍となるなど、長期化する物価
高騰による県民生活への影響や、燃料油などの価格高騰に対応する必要
がございます。このため、国の「重点支援地方交付金」の残高を最大限
活用しまして、米国の関税措置適用の影響に備えるため、事業者支援と
合わせて、県民生活を下支えするための補正予算を編成させていただき
ます。
具体的な対策としては、公明党の皆様方からもご要望いただきました
とおり、「はばタンPay+」第4弾の一般枠を追加販売させていただ
きたいと考えています。第4弾は一般枠・子育て応援枠とも5月末で期
限が終了しており、限られた財源の中、ニーズの高い一般枠に絞って再
度販売することにより、少しでも家計の応援をさせていただきたいと考
えています。
また、国における電気・ガス利用者への高騰緩和策の対象外となって
いる家庭用LPガス利用者や、特別高圧電力を利用する事業者等の負担
軽減を行います。
県の予算編成後に、国から交付金の追加配分が決定されましたが、ご
指摘の「はばタンPay+」の拡充や、医療機関や社会福祉施設等への
一時支援金の支給を行うには十分な規模ではなかったというのが現状で
ございます。
このため、本県が主導しまして、近畿ブロック知事会での、この交付金の追加交
付に向けた共同提案を取りまとめるなど積極的に取り組んでおります。今後、国
の経済対策の状況等も踏まえながら、さらなる対策を検討してまいります。 -
6. 県内のリンパ浮腫に関する現状と取組について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]次の質問は、県内のリンパ浮腫に関する現状と取組についてです。
がん治療の進歩により、長期生存される患者が増える中、治療後のQOL(生
活の質)の維持がますます重要な課題となっております。とりわけ、がんの
術後や放射線治療の副作用として発症するリンパ浮腫は、身体的な苦痛に加
え、精神的・社会的な負担を伴う疾患であります。
リンパ浮腫とは、リンパ液の流れが滞ることで手足などに慢性的なむくみ
を生じる疾患であり、がんの手術や放射線治療によってリンパ管が損傷され
た結果として生じることが多いとされています。
2017 年に公開された大阪市立大学大学院看護学研究科の研究によれば、
その発症率は子宮がん術後で10~18%とも報告されており、特に女性が多
く罹患する傾向にあります。発症時期は術後すぐではなく、1年以内が約7
割とされる一方で、10年以上経過した後に発症するケースもあり、再発と
の混同や情報不足によって医療機関への受診が遅れる実態が指摘されてい
ます。また、予防ケアの実施率が5割にとどまり、退院時の説明を受けたと
認識している患者も約半数にとどまるとの報告もあると記載されており、発
症予防や早期対応のための情報提供と教育の不足が大きな課題となってい
ます。この研究によって、「リンパ浮腫」に関する情報は、専門家向けの論
文では一定数増加しているものの、一般向けの情報発信は著しく不足してお
り、インターネットニュースや図書館・書店などでの流通は極めて限定的で
あることが明らかになりました。
このような情報不足により、患者やその家族が「リンパ浮腫」に気づかず、
潜在的な症状を放置して重症化するケースも少なくありません。また、専門
的な治療を行う施設は限られており、地理的・経済的な障壁から継続的な通
院治療が困難となるケースも報告されています。
厚生労働省においては、第4期がん対策推進基本計画において支持療法や
緩和療法の推進が明記されており、全国的にはリンパ浮腫診療の実態調査や、
患者が治療施設を検索できるウェブサイト構築などの取り組みが進みつつ
あります。
本県の「兵庫県がん対策推進計画」においても、支持療法に関する記述は
ありますが、「リンパ浮腫」については十分に具体化されているとは言えま
せん。がん患者が術後もその人らしい人生を歩み、再び地域で安心して生活
を営めるよう、リンパ浮腫に対する支援体制の明文化と強化が必要不可欠で
あります。
そこで、がん治療後の生活の質を支える支持療法の一環として、「リンパ
浮腫」への対応を本県の「がん対策推進計画」に明確に位置づけるとともに、
県内で不足しているリンパ浮腫を専門的に診療できる医師やリンパ浮腫療
法士といった専門人材の育成・確保など診療体制の整備が急務と考えますが、
県の見解をお示し下さい。[服部副知事]リンパ浮腫に関する現状の取組みについてお答えいたします。
多くのリンパ浮腫は、がんの手術治療として行うリンパ節郭清や放射線・抗がん剤治療などによって、術後にリンパ液の流れが悪くなること
で発症するがん後遺症の一つであり、根治は困難であるものの、適切な
運動等による予防や早期治療により、進行の抑制や症状の軽減が期待で
きます。
しかしながら現状では、がん治療後に行う患者へのリンパ浮腫に関す
る病態・症状・ケア方法などの情報提供が必ずしも患者の正しい理解へ
と結びついていないケースもあること、また、専門的なリンパ浮腫の治
療を実施できる医療機関が多くないことなど、改善すべき課題があるも
のと認識してございます。
これらのことから、がん診療拠点病院を中心としたリンパ浮腫に係る
積極的な情報発信により、退院後の患者の認知度や意識の向上、そして
既存の相談支援センターの活用の周知でありますとか、リンパ浮腫治療
を行う医療機関やリンパ浮腫療法士等を配置する医療機関への橋渡しな
ど、シームレスな支援による早期介入を促進する必要があると考えてお
ります。がん診療連携協議会等の場を活用して関係者等で協議を進めて
まいります。
また、これらの取り組みを関係機関とともに推進するため、県の「が
ん対策推進計画」へのリンパ浮腫に関する記載内容について「健康づく
り審議会対がん戦略部会」等において検討するなど、さらなるリンパ浮
腫対策の充実に努めてまいります。
[里見県議]リンパ浮腫は、がんの再発の恐れがなくなって寛解した後、10年も
経った頃に出てくるということで、教えていただいた経過であっても忘
れてしまうということがあります。広く関係者の皆様方が発信していた
だくことがより重要だと思っていますが、兵庫県においてがん診療連携
協議会というものがございますが、そちらでリンパ浮腫について取り扱
っていただいたり、また大きく発信していただいたりすることは、現在
行われているのでしょうか。[服部副知事]兵庫県がん診療連携協議会でございますけれども、現在、この協議会
の内容でございますが、研修教育、情報連携、がん登録、緩和ケア、地
域連携の部会において課題に対する検討をして、情報の共有・交換を行
っているというような活動を行っているところでございます。
ご質問のリンパ浮腫でございますが、現時点では、これに特化した部会はございませんけれども、今後はご提案いただきましたリンパ浮腫に
対する医療従事者の意識向上でありますとか専門人材の育成、そして答
弁で申し上げました相談支援センターの周知等について、協議会の中で
関係者と十分共有して、広く発信に取り組んで参りたいと考えておりま
す。
[里見県議]先日の21日に、全国の患者団体の関係者等から成り立つリンパ浮腫ネ
ットワークジャパンという方たちが、実態調査を踏まえて発表している
のですが、707人中62人の人が、自分がリンパ難民だと感じると。それは
なぜかというと、77%の方が医療環境に困ったことがあって、がんの主
治医に相談しても対応してもらえなく、また近くに診療施設がないと、
また見つけられないと。私はどこに行ったらいいのかというような、そ
ういう方がたくさん手上げをされたというようなことを踏まえ、国の方
に要望書を、緊急要望を持って行かれておりました。
そうみますと、ご答弁にもございました、兵庫県のがん対策推進計画
にも支持療法のところで、しっかりとこのリンパ浮腫というところを位
置付けて、本当にこういう方たち、今からがんのこの疾患が減っていく
かというと、減っていく病気ではないと思います。そうした中、女性特
有のがんだけではなく、男性の前立腺がんであったりとか、男性の方は
特にこのリンパ浮腫になった場合、寝たきりになってしまうというお話
もございました。
またしっかり周知していただけたらと思いますし、今ご答弁にもあっ
たように、改めて兵庫県のがん診療連携協議会で取り上げていただける
ようにということでもお話をいただきましたので、しっかり、全国でも、
このリンパ浮腫に特化して、さらに第一歩踏み込んでいる都道府県はな
かなかございませんので、ぜひ兵庫が先頭に立って、がん治療に、そし
て支持療法に、緩和療法に特化しているのだと、前に大きく進んでいる
のだと言っていただけるような、県を目指して頑張っていただきたいと
思いますので、よろしくお願いいたします。 -
7. 南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しと対策について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]次の質問は、南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しと対策についてです。
本年3月に、政府の作業部会が、南海トラフ巨大地震が発生した場合の被害
想定の見直しを行いました。津波や建物倒壊などによる死者数は太平洋沿岸を
中心に全国で最大29万8千人、建物の全壊・焼失は235万棟、経済被害は交
通寸断の影響も含め292兆円に達するとの新たな被害想定を公表しました。兵
庫県内においては、最悪で死者が5,200人に達し、全壊・焼失は最大5万棟、
避難者数では、全人口の1割に当たる1,230万人で、兵庫県内では同50万4
千人に上るとされました。そして、直接死とは別に、昨年発生した能登半島地
震や熊本地震でも指摘された、避難生活に伴う体調悪化などで生じる「災害関
連死」を初めて試算し、その数は全国で最大5万2千人とされ、高齢化の進展
に伴い、関連死を防ぐ避難所環境の改善は我が県のみならず全国自治体にとっ
て喫緊の課題であります。
今後、県においては政府の想定を基にし、令和9年3月を目途に新たな県
の被害想定を見直すこととしております。阪神・淡路大震災から30年がたち、
県内では人口減や、高齢化・過疎化の進展に伴う地域コミュニティの弱体化
に伴い、今後、要配慮者や避難行動要支援者が増加する可能性が高く市町に
とって大きな問題であります。
現在、県が公表している令和8年度までの計画で南海トラフ巨大地震対策を
総合的に示す「南海トラフ地震・津波対策アクションプログラム」においても
減災アクションのうち進捗が遅れている指標「防災訓練の実施」や「避難行動
要支援者の支援体制の充実」等も課題であります。政府の新たな被害想定を受
けて、今後、県として南海トラフ巨大地震の被害想定の設定とその対策となる
アクションプログラムについて、進捗が遅れている指標への対策を踏まえ、ど
のように進めていくのか。当局のご所見をお伺い致します。[池田防災監]国では、議員からのご指摘のありました通り、今年3月、平成24年度
以来、12 年ぶりとなります南海トラフ巨大地震の被害想定の見直しが行わ
れております。新たな被害想定では、地形データの精度向上等により、津波浸水面積は拡大をし、人的被害や建物被害も、前回より若干の減少に
留まったことから、さらなる住宅の耐震化や避難意識の向上の必要性が
指摘されたところであります。また、今回から新たに、ご指摘のとおり、
災害関連死者数についても推計値が記載されたところでございます。
県におきましては、平成26年度に算定した被害想定に基づきまして、
翌年度に「南海トラフ地震・津波対策アクションプログラム」を策定しまして、防潮堤
等の整備や建物の耐震化、津波避難意識の向上など積極的に防災・減災対
策を進めてきたところでございます。今後、国の被害想定に加え、これ
までの取組を反映いたしました県独自の詳細な地形データ等を用いまして、
今年度から2ヶ年の予定で想定の見直しを行ってまいります。
現行のアクションプログラムにおきましては、概ね 85%の指標が目標を達成す
る一方で、ご指摘の避難対策など目標を下回っている指標もございます。
これらは、高齢化の進展や地域コミュニティの希薄化、資材高騰による工事の
遅延等により即時の改善が困難なものもあるが、引き続き市町とも連携
し粘り強く改善に取組んでいきたいと考えております。
今後、被害想定の見直しの結果や現行のプログラムで明らかになりました
課題、更には昨年実施いたしました「能登半島地震を踏まえたひょうご
災害対策検討会」の成果も踏まえ、避難所の環境改善をはじめとするハー
ド・ソフトの両面から各種指標の見直しを行ってまいります。これらの対策
を着実に取り組み、誰も取り残さない安全・安心な兵庫づくりを推進して
まいりますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
-
8. 「ひょうご農村RMO」の推進と今後の展開について
質問と答弁のダイジェスト
[里見県議]次の質問は、「ひょうご農村RMO」の推進と今後の展開についてです。
現在、わが国の中山間地域や農村部では、人口減少と高齢化が急速に進行
し、農地や農業集落の存続が危機に瀕しています。農林水産政策研究所の推
計によれば、2015年を100とした場合、2045年には山間地域の人口が46%、
中山間地域では58%まで減少し、集落戸数が9戸以下になると農地や水路の
保全や伝統的な祭りなど地域文化の継承が困難になるなど集落活動の実施率
が急激に低下することが明らかになっています。こうした人口減少と高齢化
は、農業従事者の減少、耕作放棄地の増加、農業生産基盤や地域インフラの
維持困難化、さらには地域コミュニティ機能の衰退など、農村全体の持続可
能性を大きく脅かしています。兵庫県においてもこの問題は深刻です。基幹的農業従事者の平均年齢は
70.6 歳と全国平均67.8歳を上回っており、高齢化が進行しています。また、
一農業経営体当たりの経営耕地面積は1.2haと全国平均3.1haの半分以下と
なっており、小規模高齢農家による経営が大半を占めている状況です。この
ままでは、地域農業だけでなく、集落の孤立化やコミュニティ機能の低下が
ますます進むと考えられます。
このような危機的状況を打開するため、国は農地保全・地域資源活用・生
活支援の集落機能を補完する農村型地域運営組織(農村RMO)の形成支援を
進めています。2022年度からはデジタル田園都市国家構想と連携し、複数集
落の連携体制構築や合意形成支援制度を設け、地域課題解決を後押ししてい
ます。実際、岩手県花巻市の「高松第三行政区ふるさと地域協議会」では、
農地保全に加え、高齢者の外出支援や独居世帯の見回り、配食サービスなど
生活支援も展開し、地域の持続性を高めています。
兵庫県では約2万1千か所ものため池が谷筋ごとに細かく分散し、山間
部・平野部を問わず多様な水管理慣行が根付く小規模な集落が多数存在して
いますが、「中山間地域」に指定されていない地域は、国の農村RMO支援の
対象外となっています。
そこで兵庫県は、今年度から「ひょうご農村RMO推進支援事業」を開始し、
県独自の取組で平地地域も含めた農村RMOの普及とモデル形成を進めていま
す。今後は、地域の実情に即した支援と仕組みづくりをさらに拡充し、持続
可能な農村地域の次世代への継承を目指すことが必要です。
以上を踏まえ、本県の農村地域の持続性の確保には、県独自の農村RMO推
進が不可欠であると考えますが、この推進と展望について、当局のご所見を
伺います。
[齋藤知事]高齢化が進行し、集落機能の低下が懸念される小規模集落の多い本県で、
持続可能な農村地域づくりを進めるためには、広域的に集落機能を支えあ
う農村RMOへの理解醸成と、地域をマネジメントするリーダーなどの人
材確保、活動促進、地域運営への多様な主体の参画促進など組織形成に向
けた支援が重要でございます。
このため現在、農地保全等の主体となる集落営農や多面的機能支払活
動に取り組む組織等へ普及啓発を図っております。今後、取組意義や先
進事例を共有するシンポジウムを開催し、地域運営を行う自治会など多
様な組織の参画を促し、機運醸成を図ります。
また、地域リーダーの担い手不足の原因である負担感の解消を図るた
め、地域の牽引役グループで受講するリーダー養成研修を実施するとと
もに、地域をコーディネートする実践者の養成や、住民活動への伴走支
援を行ってまいります。こうした取組を本県では今年度から、中山間地
以外でも支援をしてまいります。加えて、対象地区の課題に応じて部局横断の推進チームを組織し、地
域おこし協力隊の活用、まちづくり協議会等との結びつきを後押しする
などにより、農地保全に加えまして、地域資源の活用や生活支援への展
開も含めまして機動的に支援をしてまいります。
こうした取組により、多種多様なモデル地区を形成し、取組の横展開
をすることによりまして、地域の実情に即した持続可能な体制づくりを
進め、次世代に継承できる農村地域の実現をめざしてまいります。
[里見県議]兵庫県の農村RMOに関してコメントを言わせていただきます。
兵庫県が、平地であってもこの農村RMOを使えるということで、大
変にこれ、画期的なことだと思っています。
しかしながら、なかなか知られていないことも事実でありますし、そ
うしている間に本当に集落が減少してしまっているのが今の状態かな
と思います。
先日、三田市の行政書士の方がこのようなことで悩まれていて、それ、
まさしく兵庫県がやっている農村RMOが使えるんじゃないですか、と
いうようなお話まで進みました。
様々な業界の方に、この兵庫県の、平地でもこの農村RMOが活用で
きるということをぜひ知っていただく必要があるなというふうに感じ
ておりますので、そこもぜひお願いしたく思います。