1、播磨圏域連携中枢都市圏の取組と県の役割について
(天野県議)
姫路が中枢都市となり8市8町で構成された播磨圏域連携中枢都市圏構想の推進が重要である。これは、播磨広域連携協議会を構成する13市9町に参加を呼びかけたことからはじまり、総務省の「新たな広域連携モデル構築事業」のモデル都市に選定され、平成27年4月には連携する7市8町と連携協約の締結及び播磨圏域連携中枢都市圏ビジョンの策定を行い、その後赤穂市が加わっている。
私は、この構想には、播磨国風土記をはじめ、長い歴史の中で培われた歴史文化、人々のたくましい生業、山海の自然に育まれた多彩な食文化など、様々な地域資源に恵まれた「豊穣の地・播磨」に新たな種を「播」き、豊かな地域資源に「磨」きをかけ、「人口減少社会でも光輝く播磨圏域」を創造することにより、地域創生の先駆けの役割を果たしてほしいと願っている。取組は平成27年度から始まっており、さらなる発展が期待されるところだが、私が心配するのは、この都市圏は姫路市が中心となりながらも、近隣市町が対等な関係のもと独立・主体的に連携し、それぞれがその個性を発揮してこそ成果を発揮するのに、ともすれば近隣市町が姫路市に飲み込まれてしまうのではないかと懸念したり各市町間の利害が対立したりして、取り組みが停滞するのではないかということである。したがって、潤滑油としての県の役割は非常に大きい。
そこで、県として兵庫五国の一国である播磨圏域連携中枢都市圏構想のこれまでの取組に対する評価、そして今後県が果たすべき役割とそのための取組について所見を。
(井戸知事)
周辺地域の中心都市への人口や産業、施設等の過度な集中という課題、圏域住民の一体感の醸成などは、もともと中心市とその周辺地域との関係としても生じるもので、連携中枢都市圏制度自体が持つ課題とは言えないのではないか。逆に、姫路市を含む構成市町がそれぞれの持つ強みを尊重しながら圏域で取り組むことにより、それらの課題を克服して概ね円滑に事業が展開されているのではないか。
特に、中枢都市以外の市町単独では実施が困難であった事業が、制度の枠組みにより実施され、例えば、各市町の地域資源を圏域ブランド「豊穣の国・はりま」と位置付けた結果、国内外の商談会への参加が実現できたこと、
2つに播磨の日本酒の認知度向上を目的として酒蔵と観光資源をめぐるファムトリップを実施していること。
3つに姫路市からの紹介により、大阪市に本社がある食品メーカーが宍粟市に進出するなどの成果が出ている。
県としても構成市町がそれぞれの特色、強みを活かしつつ、連携によるメリットを享受できるようにする必要があると考えている。まず、構成市町間の潤滑油として協議の場に参画している。
2つに、たとえば中播磨県民センターにおいて重要施策として位置付けている「播磨の日本酒」、あるいは「日本遺産銀の馬車道・鉱石の道」のPRなど、圏域と共通した事業を連携していって、相乗効果を高めていこうとしている。
2、外国人観光客の災害発生時の支援体制について
(天野県議)
本県においてもさらなる外国人観光客の増加が見込まれる中、昨年9月には台風21号の上陸や北海道胆振東部地震で大きな被害が発生し、関西国際空港や新千歳空港の一時閉鎖、ブラックアウトによる停電等で観光客に大きな影響が出た。とりわけ外国人観光客にとっては多言語での災害・交通・避難情報の提供が充分でないなど、災害時の対応に大きな課題を残した。これからは外国人観光客に安心して旅行をしていただく環境を構築し発信することが重要であり、そのことが兵庫県に外国人観光客を呼び込むことにもつながる。
そこで県における外国人観光客への災害発生時の支援体制について伺う。「地域防災計画」等に外国人観光客のための情報伝達や避難に関する事項、災害時のホテル協会や旅館組合との連携などのついては定められているのか。外国人観光客の安全・安心の確保のために災害時の支援体制を整え、その情報を発信することが大切である。
災害時の支援体制の構築は県と市町が役割分担して進める必要があるが、「ひょうごゴールでルート」のような広域的な取り組みを推進するにあたっては各市町の支援体制構築を先導するためにも県が果たすべき役割は大きい。
そこで、外国人観光客の災害発生時の支援体制の現状と今後の取組について所見を伺う。
(早金防災監)
県の地域防災計画では、県・市町等による外国人の被災状況の把握、外国語による相談や情報提供の実施の他、ホテル等における避難誘導等について定めている。そこで、災害時には駐日外国公館等と連携して、外国人の安否確認を行うほか、外国人県民インフォメーションセンター等による外国語での相談対応や情報提供を実施する。
また、今年度開発した「ひょうご防災ネット」アプリを通じて、12の外国語による災害情報を提供すると共に、音声読み上げ機能、あるいは絵文字の表示により外国人にもわかりやすい情報提供に努める。
今後さらに、災害時の外国人支援の一層の充実を図るためには、防災部門と観光・国際部門との連携と共に、県と市町との緊密な連携が不可欠である。昨年度、但馬地域で実施した合同防災訓練では、県の国際交流協会と市町の国際交流協会がともに参加し、外国人への多言語情報の表示訓練や避難誘導訓練を行った。このような連携を広げながら、効果的な支援につなげていきたい。
3、播磨地域の滞在型観光への転換のための取り組みについて
(天野県議)
姫路には多くの観光客が訪れているが通過型になっている。2018年度の姫路城の外国人入場者数は約38万7千人と最多を更新したが、市が実施した2017年度の観光動向調査では、姫路を訪れた外国人観光客のうち、市内に宿泊した割合は15%未満、日本人客も10%しか市内に泊まっていない。「滞在型観光」への転換は姫路の長年の課題だったが、近年姫路駅周辺ではホテルの新規開業が相次ぎ、大きなチャンスになりつつある。
滞在型観光の転換のためには姫路市及び周辺市町での、ここでしか体験できない魅力的な観光資源の提供が重要になる。県では、滞在型観光等を推進する地域の主体的な取り組みを支援する「外国人観光客体験観光促進支援事業」を実施し、平成30年度に中・西播磨地域では、家島ならではの体験プログラム「家島ほたるシップ事業」、神河町のサイクリングイベント「神河ヒルライム」、姫路城にまつわる体験ウォーキング、峰山高原リゾートスキー場での雪遊びやそば打ち体験等計7件が採択された。
有意義な事業展開だが、両事業合わせて全県で事業費約1500万円では本当に限界がある。もっともっと中・西播磨地域ならではの観光資源を数多く魅力アップしていかなければ滞在型観光には転換できない。私は当選後、姫路市周辺の赤穂市、相生市、神河町、福崎町を訪問し、各首長とお話をする機会があった。どの首長も姫路の観光客増を絶好の機会と捉え、地元観光地の魅力アップのために懸命に頑張っている。
県においては地元市町の動きを力強く後押しする、より一層の取り組みが必要である。「観光魅力アップ支援事業」等の拡充を含め、滞在型観光への転換のために県として姫路市や周辺市町の観光地の魅力アップの取り組みをどのように支援し、どう情報発信していくのか。
(谷口産業労働部長)
今後さらなる滞在を促すためには①観光客の関心を引く情報発信と②地域の観光資源の魅力を観光客のニーズに即して高めていくことが重要となる。
情報発信としては
①ファムトリップによる旅行会社等への宿泊施設や体験観光の魅力紹介
②リニューアルした県公式観光サイト「HYОGО!ナビ」での周遊ルートや口コミ情報の紹介
③銀の馬車道をはじめとする日本遺産や、お城をテーマにした「あいたい兵庫」キャンペーンの展開に取り組む。
次に観光資源の魅力アップについては、今年度から「外国人観光客体験観光促進支援事業」を拡充するとともに、「観光地魅力アップ支援事業」では、採択後のブラッシュアップやPRのアドバイスを行っている。また、多言語化やキャッシュレスを推進する「外国人観光客受入基盤整備事業」も拡充し、支援強化を図っている。
4、防災・減災対策について
(2)参画と協働による砂防堰堤の点検、維持管理の推進について
(天野県議)
砂防事業とは、降雨や地震などに伴って発生する土石流に対し、砂防堰堤等を設置することによって県民の生命や財産を守る重要な公共事業である。現在、県下の土石流危険渓流のうち、土石流により被害を受ける可能性のある人家が5戸以上または官公署、学校、病院、旅館等のある個所は、4,310にものぼる。これらのうち、平成31年3月の調査では砂防施設の整備に1,511カ所に着手、整備率は約35%となっており、今後も土砂災害対策を強力に推進していかねばならない。
一方で、整備済み堰堤は県内に約2,900基と多数あり、険しい山中にあることも多く、既設堰堤の点検や維持管理について行政のみで実施していくのは限界がある。そのため、地域住民の自助・共助による地域防災力を高めていく必要がある。
平成27年9月定例議会一般質問で私は、地域住民による砂防堰堤見守り隊の推進を提案した。この見守り隊には、砂防堰堤の見守り以外に、見守り隊の調査した情報に基づいた土木事務所による適切な維持管理、見守り隊メンバーがリーダーとなって地元県民に対して防災意識の啓発と不安を取り除くための活動をしてくださり地域防災力の向上にもつながるといった効果も期待できる。そして、実際に姫路土木事務所と連携して、私の地元自治会で試験的に先行実施していただいているところだ。
近年、局地的豪雨が増加傾向にあり、土砂・流木災害が激甚化・頻発化していることを考えると、このような地域防災力の向上にもつながる住民主体の参画と協働による点検活動の重要性はますます高まっており、県下に広く推進していく必要がある。そこで、砂防堰堤見守り隊を含めた参画と協働による砂防堰堤の点検、維持管理の現状と今後の推進方策について伺う。
(濱県土整備部長)
地元住民等の参画と協働による点検活動は、県の定期点検を補完できることから有効であると考えている。姫路市白国地区の増位川堰堤では、地元住民が「砂防堰堤見守り隊」を立ち上げ、平成28年度から砂防堰堤の構造や土砂補足の仕組み等について、姫路土木事務所の出前講座を受けた上で、年2回程度の点検活動を行って頂いている。
また、姫路市の家島や坊勢島では県OB職員等で構成する兵庫県砂防ボランティア協会が、毎年出水期前に県、姫路市、地元役員と協働して砂防堰堤等の防災施設を点検する「防災パトロール」を行って頂いている。
これら地元住民等による点検活動の取り組みをさらに推進していくため、砂防堰堤まで容易に近づける箇所を中心に、地元自治会等への点検活動の働きかけを行っていく。特に新たな砂防堰堤が完成した地域では、防災意識が高まっていることから、積極的に参画を求めていく。また、砂防ボランティア協会に対しても防災パトロールの活動範囲の拡大について協議していく。