議会報告

  • あしだ 賀津美
    第345回(令和1年9月)定例県議会 代表質問(あしだ賀津美議員)

    1、兵庫県地域創生戦略の総括検証と実効性ある取り組みについて

    (あしだ県議) 地域創生戦略の令和元年度のアクション・プログラムでは、現戦略の最終年度として人口の自然増対策として子ども・子育て対策、健康長寿対策、社会増対策として人材流入増加、地域の元気づくりとして県内総生産、県民総所得について方向性を示しつつ、各戦略目標に対し重点指標や政策アウトカム指標を設定し、実現に向けて取り組んでいる。

    しかし、出生数を例に挙げれば、目標の44、000人に対し、平成27年から28年は目標を上回ったものの、平成29年は42、198人、平成30年は40、303人と目標を下回り、むしろ減少し続けている。この出生数の目標に対する政策項目については21の政策アウトカム指標が設けられ、平成30年度に評価されている18項目についてみると、目標値に対する実績値の達成率100%以上のA評価が、12、90%以上のB評価が2、70パーセント以上90%未満のC評価が4、70%未満のD評価が0と高い達成率となっている。

    しかし、重点指標の婚姻率、出生率は目標を下回っており、現在は目標を上回っている女性人口も令和2年度に目標を達成できるのか危ぶまれる。重点指標が目標を下回っているにも関わらず、政策アウトカム指標の評価が高いという現状を見ると、現在の政策アウトカム指標が本当に適切なものであるか疑問無しとはいえない。

    我が会派がこの夏に実施した地域政策要望会で県下首長から産婦人科医不足を訴える声を多く聞いた。自然増対策といいながら地域で安心してお産ができない状況では元も子もないので、体制整備が急務であると考えるが、この点を評価する政策アウトカム指標はない。わが会派はかねてから、地域創生戦略の取り組みを実効性あるものとするために、施策の効果を適切な政策アウトカム指標で評価するすることを求めてきた。目標を達成できていない原因をどのように分析し、次期地域創生戦略では取り組みの実効性を高めるために、政策アウトカム指標の見直しについてどのように考えているのか。

    また、実効性を上げていくためには、今後は産業界や民間、専門家やNPO法人、さらにはボランティアなど各種団体も含めて幅広い意見や経験、ノウハウなどを参考にしつつ斬新な発想のもと、市町等と連携しながら本格的に取り組むべきだと考えるが、次期地域創生戦略はどのように実効性ある取り組みを進めていくのか。 そこで、地域創生戦略のこれまでの取り組みをどのように総括検証し、次期戦略では実効性を高めるためにどのような視点で見直しを進めていくのか。

    (井戸知事) 地域創生戦略は昨年度、重点指標、政策アウトカム指標、事業進捗指標の3層の評価構造とした。しかし、より実効性を高め成果を検証する上でいくつかの課題もある。一つは、短期的には効果が発現しない施策に対する評価だ。例えば、高校2年生に県内起業ガイドブックを配布しているが卒業時までは効果が分からない。地道な取り組みが必要だ。

    二つは、事業量が不足している施策だ。例えば、出生数を増やすには婚姻数の増加が必要だが、出会い支援事業の成婚者数等は年間300組程度である。こうした施策は、県民、事業者を巻き込むことで波及的に成果を生み出していかねばならない。

    三つには、有効な施策が不足している場合だ。例えば、安心な出産という面では、周産期母子医療センター数を政策アウトカム指標にしているが、より有効な施策があればアクションプラン策定時に適宜追加していきたい。また、定量的な指標のみでは表せない成果もある。次期戦略では、若者の定着・環流が大きな柱となる。こうした取り組みは意識醸成が不可欠なだけに、大学生の就業意識などアンケートに基づく定性的な指標も設定し、量と質の両面から検証可能な体系を構築したい。

    あわせて、現行戦略は全県目標しかなく、UJIターンによる若年就農者数の増など、地域の成果が見えにくい。例えば、淡路地域では新規就農者の増など地域別の目標を設定し、地域の強みを活かしたプロジェクト等を検討していきたい。

    2、若年性認知症対策について

    (あしだ県議) 過日、私は若年性認知症家族の会である、ひまわりの懇談会に参加し、若年性認知症患者及び家族、関係者の方々から話を聞く機会があった。

    本人の症状の激しさ、家族の介護負担の大きさ、経済的な困窮、専門医療機関や相談窓口の少なさ、ケア方法の未確立など医療や介護の支援する側の問題、どの診療科を受診すれば良いのか、生活に必要な助言や情報、患者と家族が受け入れ可能なサービスの情報はどこで得られるのか、高齢者と比較してBPSD発生時に適したプログラムとノウハウの蓄積がない。

    介護認定が下りずデイサービスに行く前の受け皿がない等、抱える苦悩や要望を聞き、孤立を深める患者、家族を救うために多岐にわたる支援が必要であると痛感した。

    本年6月に認知症施策推進大綱が閣議決定されたが、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し認知症の人や家族の視点を重視しながら、共生と予防を車の両輪として施策を推進していくとされ、若年性認知症にも対策が練られていると伺っている。私は兵庫県にぜひとも若年性認知症について全国を先導する取り組みを行ってほしいと考える。

    そこで、若年性の認知症対策について、患者、家族に対する総合的な支援をどのように展開していくつもりか。

    (井戸知事) 若年性認知症については、その苦悩や家族の介護負担、経済的困窮等からその対応は重要と考えている。その対策として「ひょうご若年性認知症支援センター」を設置し、コーディネーターによる専門相談や市町職員の研修等を行うほか、医療や介護等関係団体の参画を得て「若年性認知症自立支援ネットワーク会議」を開催し、課題の検討も行っている。

    今年度は企業を対象に認知症の症状や必要な配慮等について理解を深める研修を実施し、若年性認知症の方が働きやすい環境づくりにも取り組むことにしている。本年6月に閣議決定された「認知症施策推進大綱」においても、「若年性認知症の人への支援」は重要な柱のひとつに位置付けられている。

    県としても「ひょうご若年性認知症支援センター」のコーディネーターが市町に出向いて助言を行うなど、同センターの機能強化を図るとともに市町や関係団体と連携して、若年性認知症の方とその家族が住み慣れた地域で安心して暮らせる社会づくりに向け、今後も取り組む。

    3、今後のがん対策について

    (あしだ県議) 平成30年国立がん研究センター統計では、生涯でがんに罹患する確率は、男性が62%、女性が47%で2人に1人はがんに罹患するとされている。しかし、早期に発見すれば5年相対生存率では、腫瘍が原発臓器にとどまった場合は、90、4%、遠隔臓器などに転移した場合は13、6%とされ、放射線療法、化学療法、手術療法といったがん医療の進歩で目覚ましく生存率が上昇している。このことからも、早期発見が重要で、そのためにがん検診受診率の向上が必須である。

    本県のがん検診受診率は、国の目標50%には程遠く、全国平均と比較しても主ながんの部位別受診率は下回っている。がん検診を受けない理由としては、3割の人が、費用、心配な時は医療機関を受診すると回答しており、症状のないときに定期的に受診することで早期発見、早期治療が可能になるという認識が十分でないことが伺える。

    このような県民の認識を変えると共に、住んでいる市町以外の病院でも受診ができるなど、受診しやすい体制の構築を進めてがん検診受診率の向上に努めることが重要である。

    また、30から40歳代では男性よりも女性の方が、がんの罹患率が多いことを考えれば、女性のがん患者のさまざまな悩み相談に乗り、サポートする支援体制の整備を進めることが重要である。千葉県柏市の国立がん研究センター東病院には、国内初のレディースセンターがあり、特に妊娠をあきらめない相談、小児・AYA世代のサポート、アピアランス相談、リンパ浮腫を含むリハビリテーションの相談、薬物療法などの副作用に対する相談などを行う業務セッションが設けられており、我が県のサポート体制構築にも参考にできる。

    我が会派は一貫して、がん対策推進に取り組み、無料クーポンやコール・リコール制度、検診体制の充実等を推進し、また、県立がんセンター内のアピアランス支援センターの機能強化、医療用ウイッグ、補整下着等購入費の助成制度の創設など実効性ある取り組みを訴えてきた。県のがん対策推進条例実現にあたっても力を入れてきた。

    そこで、健診受診率の向上、がん患者が安心して暮らせる社会につながるサポート体制の構築について、どのような取り組みをしていくのか。

    (井戸知事) がん検診受診率の向上に向けては、市町が行う特定健診とのセット健診の促進や国庫県繰入金(特別交付金分)の重点配分、中小企業への検診受診料助成の拡充等を行ってきた。今後は、協会けんぽが進めている被扶養者を対象としたセット健診の推進やがん検診の普及啓発や受診率向上に向けて県と協定を締結する企業数の拡大に努める。

    また、居住市町以外でも市町がん検診を受信できる環境が重要であり、受診率が低く若年層の罹患が多い子宮頸がん検診から広域化も推進していく。一方、がんとの共生に関しては、がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターの機能について情報発信を行うと共に、センターにおいて患者や家族の悩みに寄り添いながら、経済的・精神的サポートなど総合的な相談支援体制の充実・強化も図る。

    さらにAYA世代、特に若年女性のがん治療においては、患者への妊孕性温存や医療用ウィッグ等の購入への支援を検討するとともに、働く世代の治療と就労の両立支援に向け、がんに罹患しても離職しないよう、新設した休職代替職員への補助制度の活用も促進していく。

    4、医師の地域偏在、診療科偏在の解消について

    (あしだ県議) この夏、会派で県内市町の首長から要望を聞く地域政策要望会を行ったところ、医師不足、特に産婦人科医不足についての切実な要望を数多く伺った。

    少子化対策については、幼児教育・保育の無償化など思い切った子育て支援策が国を挙げて取られているが、まずは産まれる、産むということが、この話の最初の段階であり、本県の地域創生においても安心して子どもを産み育てることができる環境整備は、非常に重要と位置付けられている。

    しかしながら、広い淡路島内でも分娩を取り扱う医療機関は現在2カ所、それも今年度中には県立淡路医療センターだけになるというのが実情で、県内には分娩を取り扱う医療機関がゼロの市町も多くあり、住み慣れた地域で安心して分娩できる環境が確保されているとはいいがたい。

    厚生労働省の平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査によると、人口10万人あたり医療施設従事医師数は、全国では240,1人のところ本県は242,4人と全国平均を上回っている。しかしながら、圏域別にみると神戸圏域の304,0人、阪神南圏域の282、3人と、2つの圏域に集中しており、そのほかの8圏域は全国平均を下回っている。最小の西播磨圏域は159,3人と、最大の神戸圏域の薬半数となっており、次いで少ない阪神北圏域は185,4人と、それほど地域性や生活圏域の違いがない阪神南圏域との差は100人近くにもなっている。医師の偏在を加速させることにつながり、地域の衰退を加速させるという負のスパイラルに陥ることも考えられる。

    県として、修学資金を貸与して医師養成を行うと共に、地域医療支援医師県採用制度、大学への寄附講座設置等の取り組みによって、医師確保策を着実に進めてきている。しかし、深刻な医師不足に悩む地域にとっては、どのように医師不足が解消され、将来も安定的に人材が供給されるかどうか大きな不安を抱いている。また、量的な確保だけでは、地域偏在や診療科偏在は解消されない可能性がある。

    そこで、医師の地域偏在の解消及び産婦人科医の確保策を含めた診療科偏在の解消について当局の所見を。

    (井戸知事) 地域偏在の解消に向け、県養成医師を毎年22~23人養成し、現在87人をへき地医療拠点病院をはじめ、市町立医療機関等に派遣している。県養成医師については、令和9年度には約190人まで増えるが、切れ目のない教育・研修やキャリア支援・相談を通じて義務年限終了後も県内定着を図っていく。そのほか、へき地での勤務を志す医師県職員として採用し、県指定医療機関への派遣している。

    診療科偏在解消に向けては、県寄附により特別口座を設置し、医師を派遣しているほか、医師の確保が困難な診療科を有する医療機関に対して医師を派遣する医療機関への経費補助も行っている。特に産科については分娩手当の一部支援により、産科医の殊遇を改善するなどその確保も図っている。

    また、産婦人科医等をめざす県養成医師が専門医療資格を取得し、県内で産科等に従事できるよう「特定診療科育成コース」も新たに創設した。

    5、但馬牛の増頭対策について

    (あしだ県議) 食肉関係者に伺ったところ「米国産牛肉が安く国内で流通し最も影響を受けるのは、現在国内で流通している外国産牛肉だろう。神戸ビーフは、ブランド化、差別化されているのでさほど影響はない。それよりも神戸ビーフとなる但馬牛が依然として不足しており、今後、海外での需要がますます増えると予想されるので、協力に増頭対策を進めてもらいたい」とのことであった。

    このような中、本年6月末に新温泉町でアパート牛舎が完成した。約2,900㎡の敷地に牛舎2棟、堆肥舎1棟が整備され、これにより76頭の牛が飼養されることになった。76頭とまだまだ数は少ないが、イニシャルコストに莫大な費用がかかり、新規就農が体験難しい畜産業界に新たな参入の道筋をつけた大きな取り組みであると高く評価している。ただ、まだまだ目標頭数にはほど遠い数字である。

    本年2月定例会の代表質問で岸本議員からも指摘したとおり、ゴールデン・スポーツ・イヤーズで来県される多くの外国人に但馬牛、そして神戸ビーフのすばらしさをPRしなければならない。また、すでに神戸ビーフの価値を認めている方に、本場の神戸ビーフを楽しんでもらわなければならない。世界での需要拡大を図ると共に、国内での消費に応えていくことが重要である。そこで、但馬牛の増頭対策について所見を伺う。

    (井戸知事) 県では、平成18年度から但馬牛増頭対策として、繁殖雌牛の導入や牛舎整備等に取り組んできた。さらに、平成30年度から
    ①市町によるアパート方式での貸付牛舎の整備
    ②子牛の生産期間を短縮する妊娠牛の導入支援を行い、昨年度の但馬牛繁殖雌牛は13,482頭と前年から324頭増え、3年連続増加している。

    一方、神戸ビーフの需要は依然旺盛で今年に入り
    ①「兵庫美方地域の但馬牛システム」の日本農業遺産認定
    ②神戸ビーフ館のオープン
    ③和牛マスター食肉センターの欧米向け輸出認定など、さらに追い風が吹いている。この機をとらえて増頭を一層加速させるためには、新規参入や規模拡大時の施設用地の確保や初期投資の軽減が最優先課題である。

    このため、今年度から総合支援窓口として「畜産参入支援センター」を畜産課内に設置し、施設用地の掘り起こしや紹介、初期投資の軽減を図る補助事業の活用相談等を実施している。具体的には、小規模からの経営スタートだが、2件の企業参入があるほか、複数の事業者に対し地元市町と調整しながら施設用地を紹介するなど、きめ細やかに対応している。

公明党 兵庫県議会議員団はSDGsを県の政策に反映し、力強く推進していきます。

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