≪質問項目≫
1、危機管理対応時における知事のリーダーシップについて
2、感染拡大予防と社会経済活動の両立について
3、高齢者に対する特殊詐欺防止対策の強化について
4、新型コロナウイルスへの医療・相談対応の総括と今後の医療崩壊を防ぐ取組について
5、新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金支給について
6、県立西宮統合新病院における感染症対応機能の充実・強化について
7、コロナ禍における公共事業の推進について
8、GIGAスクール構想の推進と新しい教育の実践について
9、令和2年度実施の高校入試について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、危機管理対応時における知事のリーダーシップについて
(越田県議) 新型コロナウイルス感染症への対応について、大阪府の吉村知事知事との対比で井戸知事の手腕やリーダーシップに注目した兵庫県民からは、知事の発言や対応方針等が一部ネットを中心に厳しい批判の声が高まる状況が見受けられた。しかし、兵庫県はクラスター対策の着実な実施や、医療体制を適切に整えながら感染者の自宅待機を一切実施することなく、地道に適切な対応を積み上げ、大阪府よりも早い段階での感染の抑え込みを実現できた。
ところが、こうした実績にも関わらず、私や我が会派議員が接する方々の声を聞いている限り、現時点でも井戸知事への批判的な意見を持っている方がいる。新型コロナウイルスという未知の感染症と手探りで戦う危機管理対応時においては、今後とも知事がリーダーシップを発揮して県民の協力のもと団結して感染拡大防止対策を遂行することが必要である。
そのためには、県民への正確な情報提供・真摯なコミュニケーションが必須だ。特に今後発生が危惧される第2波の感染拡大局面には、感染状況や医療体制の余力、検査の状況等について正確な情報提供を行うと共に、課題も詳らかにし、状況が悪くなった場合の対処方針等を率直に語り、県民の不安を解消する情報発信に努めると共に、より多くの県民にその情報が伝わるように工夫し努力することが重要になる。
さらに京阪神エリアでは、本来は統一的な基準により対策を打ち出していく方が効果的であり、特に大阪府や京都府の各知事とは十分に連携した上での対応が必要だったと感じている。
そこで、これまでの井戸知事の県民に対するリーダーシップの発揮や県民への情報発信のあり方について自らどう評価し、また今後の危機管理下においてどのように取り組んでいくのか。
(井戸知事) 3月1日の患者発生後ただちに、県対策本部を開催し状況把握や分析を行い、医療・検査体制の構築、中小企業支援のほか、外出自粛や休業要請など多様な課題の対処方針を決定してきた。
本県の場合、他県と異なり、対処方針を示し対策の全体像を県民に明らかにしながら、事態の推移に応じ改訂していった。決定した方針は、本部会議後、速やかに記者会見を行い知事自ら発信するとともに、テレビやラジオ、広報誌などあらゆる媒体を活用し、県民の理解と協力を求めて繰り返し呼び掛けた。また、県ホームページに緊急時用トップページを開設し、感染状況をグラフを用いて毎日公表するなど、正確にわかりやすく発信した。
同一交流圏の京都、大阪、兵庫3府県の連携については、関西広域連合での10年にわたる実績とつながりを活かし、外出自粛、休業要請の対象や時期の整合を図った。また「関西・外出しない宣言」「関西・GWも外出しない宣言」など関西圏全体として取り組んだ。
このような着実な取組により、県内の新規感染者は昨日まで26日間連続で発生しておらず、重症患者用病床から軽症・無症状者用の宿泊施設を含めた医療体制は第一波の実績を踏まえて、順次強化するシナリオにより対応できるなど、感染拡大防止と医療体制の充実を実現している。
2、感染拡大予防と社会経済活動の両立について
(越田県議) 県が緊急事態宣言対象区域からの解除に伴い示した方針は「感染拡大防止を基本としつつ社会経済にも配慮するため」、「一部の施設を除き、休業要請を解除する」としつつ、「不要不急の外出の自粛に努めること」を県民に求めることになった。 ちなみに大阪府では、休業要請の解除とともに感染予防に努めながら、積極的に外出することを奨励するメッセージを発信している。また本県では休業要請解除を受け、発表された対処方針に事業活動への支援等の項目に観光振興を付け加え、県内を中心とした観光振興支援を打ち出している。
緊急事態宣言解除後において、事業者の感染対策を推進するための時間や県内の感染状況を確認しつつ、段階的に経済活動の回復を目指していく意向と推察するが、県民には不要不急の外出自粛を求めつつ、営業の再開や県内観光の支援をするというのでは、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものであり、県民や事業者は困惑するのではないか。観光業や飲食業をはじめ県内サービス産業踏破大きなダメージを受けている。一日も早く客さんに戻ってもらい以前の日常を取り戻すため全力で感染予防対策などに取り組まれている。
新型コロナウイルスとの戦いは、治療薬やワクチンが開発され普及するまで2年から3年といった長期間に及ぶ可能性も指摘される中、兵庫の広大で多様な地域性や産業特性に基づき、一律に不要不急の外出の自粛を求めるのではなく、感染拡大予防と社会経済活動の両立の実現に向けた具体的な行動指針を明示し、県民や事業者にわかりやすく発信していくことが不可欠ではないか。
(井戸知事) 本県では、緊急事態宣言発令後、県民への外出自粛要請、事業者への休業要請などを行ったが、新規陽性者数の減少に伴い、段階的に制限を緩和してきた。事業者による感染防止対策を前提に、5月16日からは感染者の発生していない地域などに対する休業要請を、また緊急事態宣言解除後の5月23日からは、クラスター発生施設等を除く施設の休業要請を解除した。6月1日からは、外出自粛に「努める」と表現を緩和したほか、すべての施設に対する休業要請を解除した。
一方、東京都や北九州市のように宣言解除後も新規陽性者が多数発生している地域があり、「次なる波」の発生も懸念されることから、県民の安全安心を第一に考え、引き続き県内外の状況も踏まえつつ、段階的な移動制限の緩和を検討する。
これらの取組を実効あるものにするためには、県民の理解と協力が不可欠であり、ご指摘のとおりその趣旨をわかりやすく発信することが重要である。これまで、決定した方針や県民・事業者へのメッセージについては、知事自らが記者会見等で発信するとともに、特設ページを設けた県ホームページなど様々な媒体を通じて分かりやすく発信しており、さらなる充実を図る。
4、新型コロナウイルスへの医療・相談対応の総括と今後の医療崩壊を防ぐ取組について
(越田県議) 医療・相談対応について課題が浮かび上がっている。我々のところにも多くの相談が寄せられた、PCR検査をなかなか受けさせてもらえないという声がある。発熱があって帰国者・接触者相談センターに検査を希望したり、かかりつけ医からPCR検査の必要性ありと診断されても検査を受けられないケースや、複数の病院を受診してやっと検査を受けられたケースなどがあり、検査受診の可否基準に対する納得性が低く、検査が受けられない場合にはもっと丁寧な説明が必要ではなかったのか。
次にいくつかの病院でクラスターが発生し、医療従事者が感染したことによってその地域の医療体制がひっ迫する事態が発生した。こうした院内感染の発生原因を分析し、必要な予防策等を検討・準備しておく必要がある。また、新型コロナウイルス感染者の治療に携わった医療従事者が極めて過酷な状況が長期化した中で、肉体的・精神的な負担がどうであったのか、モチベーションやストレスのマネジメントを適切に実施できていたのか検証も必要ではないか。
さらに医療崩壊を防ぐために、ICUやECМOのキャパシティをその時に必要とする重症患者の数が上回らないようにすることや病床をコロナウイルスの患者が塞ぐことによってほかの医療が行き届かなくならないようにすることなどが重要だが、こうした点において問題はなかったのか気になるところである。
具体例を上げたが、これら以外も含め、新型コロナの医療・相談対応について、うまくいった点、改善すべき課題等をどのように総括し、第2波の感染拡大時に向け、医療・相談体制の充実や医療崩壊を防ぐための対策をどのように準備していくのか。
(井戸知事) PCR検査については国の「相談・受診の目安」である熱や咳の症状等の状況を踏まえ、重症化リスクなど優先順位を考慮し、医師の総合的な判断で実施すると共に、クラスターからの二次感染を防止するため、濃厚接触者のうち無症状者に対しても検査を実施してきた。
今後は国の「相談・受診の目安」の見直しや県民ニーズも充分に踏まえ、症状のないすべての濃厚接触者に対して検査を行うなど、対象者を拡大すると共に、問い合わせ等に対しても、より一層丁寧に説明し県民の理解が得られるよう努める。一方、県内で複数の院内感染の発生があったが、新型コロナウイルス感染症対策協議会の委員をはじめ、感染症に関する専門家の派遣による実地指導や厚生労働省クラスター対策班の意見を踏まえて作成された「院内感染対策チェックリスト」を活用し、院内感染防止対策を推進してきた。
いろいろな経過はあったが、感染症指定医療機関、救急病院、接触者外来をはじめとする医療機関との連携、保健所のネットワーク、新型コロナウイルス入院コーディネートセンター(CCC-hyоgо)の入院調整や関係団体と連携して24時間相談事業も行ってきた。
入院医療体制については、他の疾患の医療提供とのバランスも考慮し、現在は最低200床を維持するなど感染症対応の病床体制を見直すとともに、患者の動向等を踏まえ段階的に病床数を増加するシナリオを用意し機動的に対応していく。
5、新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金支給について
(越田県議) 国の補正予算案に計上されている全額国庫負担の慰労金支給基準に基づき、本県でもこのたびの補正予算で、新型コロナウイルス感染症の第1波に直接対応した、医療従事者や社会福祉施設等職員へ慰労金を支給することとした。その至急対象は、医療従事者については感染患者等を受け入れた医療機関で、直接患者に接した人に20万円、それ以外の人に10万円、社会福祉施設は患者が発生したクラスター等となった施設の職員や応援職員を対象に、20万円を支給するとしている。本県では、社会福祉施設に国の基準である介護施設、障害福祉施設に加えて児童福祉施設等も対象に含めたことは大いに評価できる。
国の補正予算案ではさらに、直接感染者を受け入れることがなかった医療機関、患者が発生しなかった介護・障害福祉事務所を対象に、患者や利用者と接する医療従事者、介護・障害福祉従事者や職員を対象に5万円の慰労金を給付するとしているが、本県では国の慰労金支給基準が現状では不明確であることを踏まえ、5万円の慰労金の支給を今回の補正予算に計上しなかった。
是非とも国の具体的な支給要件や支給方法、時期等が確定した段階で、本県における5万円の慰労金給付を早急に実施できるようにしてほしい。国の第2次補正予算案の報道で本事業が明らかになって以降、介護等の現場で働く方々から期待と喜びの声をたくさんいただいている。直接的に感染者に関わることがなかった方々であっても、身体接触が必須となる業務が多く、自らの感染リスクだけでなく、高齢者や基礎疾患のある患者や利用者に感染させてしまった場合に、命を奪うことに繋がりかねない恐怖やストレスを抱えながら、仕事に対する使命感で自らを奮い立たせて頑張っているといったお話をたくさん伺っている。こうしたご苦労に報いる慰労金として支給していくべきである。
その一方で、今回の新型コロナをきっかけに、看護師や介護の現場等で働く方が離職されるケースが増えているとのお話も聞いている。こうした流れを食い止めて、国や県として幅広く医療従事者や介護・障害福祉分野で働く方々に慰労する気持ちを示すとともに、次に第2波、第3波の感染拡大時においてこうした方々の力を結集し団結するための事業にしていかなければならない。慰労金支給事業についての所見を伺う。
(井戸知事) 慰労金については、国の交付金の制度趣旨や支給対象者の範囲等、いまだ不明な点も多いことから、今回の補正予算案では、感染が発生した施設等で対応に当たった職員等に対して支給することとした。感染者の対応に当っていない職員等に対しても一律5万円の慰労金を支払うことについては、緊急事態宣言下で他にも事業の継続をお願いし、感染リスクを抱えながら暮らしを支えていただいた方々がいることも考慮すると慎重に考えるべきである。
しかしながら、直接感染者に対応していない場合であっても、例えば濃厚接触者の対応に当たったことで、他の利用者へのサービス提供の禁止や出勤停止等の負担が発生した職員等については、一定の役割を担ったと評価されるべきとも考えられる。こう考えると、医療関係者や社会福祉施設関係者も対象となるが、現時点では国の実施要領に定められていないので、この実施要領も踏まえながら制度の主旨に即した必要な対応を検討していきたい。
7、コロナ禍における公共事業の推進について
(越田県議) 新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大を受け、各国政府は出入国制限や外出規制、営業規制を展開しウイルス封じ込めのための対策を実施した。その結果、海外生産拠点からの物資が途絶するというサプライチェーンの棄損が大変深刻な問題となった。
日本政府は、海外生産拠点の分散・再配置を支援する方針を示しており、当面は海外に集中した生産拠点や調達先の分散や国内への生産回帰を促進していかなければならない。本県においても、新規産業立地促進補助を拡充してサプライチェーンの強化・再構築を支援されようとしている。
しかしこれらの取組により、サプライチェーンが再構築されるまでには、かなりの時間が必要になる。そのため、今年度既に公共事業を受注している事業者の方々から「建設資材が確保できないため、工期に間に合わない恐れがある」とか「建設資材が高騰し積算した経費を上回る恐れがある」などの声が多く寄せられている。 新型コロナウイルスの世界的パンデミックという非常事態において、行政は柔軟に対応する必要がある。また、緊急事態宣言したでの経済活動の自粛により、本県経済も大きな打撃をこうむっている。現在は休業要請が解除されたとはいえ、以前のような経済活動レベルに回復するまでには、もうしばらく時間を要すると思われる。そこで3点について伺う。
1点目は、第2波、第3波の危険性も指摘される中、今後の状況も踏まえた上で、工期の延長や契約金額の変更など、柔軟に対応していくべきであること、2点目は建設現場ではいわゆる三密状態になる可能性があり、その対策にかかる工期や費用についても十分に配慮すべきであること、3点目は地域経済の下支えをする意味からも公共事業の早期発注に努めることが必要であると考えるが所見を伺う。
(荒木副知事) 道路・河川等土木工事の建設資材については、サプライチェーンの棄損による納期の遅れや価格高騰もなく、事業の進ちょくには影響を与えなかった。2月初旬に住宅用トイレなど一部製品の納期の遅れが報道されていたが、現在は概ね回復しており、県営住宅等建築工事についても進捗に影響はなかった。
今後の第2波第3波への対応については、これまで通り作業員の罹患や建設資材の確保が困難な場合、接触機会低減の要請等に応じ、作業員の通勤削減などで工期延長の必要が生じた場合は、契約期間を変更する。また工期延長に伴う借地料や仮設材リース料の増額等にも柔軟に対応する。
3密対策については、現場事務所の換気徹底や作業員相互の間隔の確保の指導はもとより、現場での作業員数の制限による工期延長や現場事務所における非接触型体温計など対策に必要な経費を追加する。
公共事業の発注については、県庁全体では通勤者を7割削減したが、土木事務所棟では感染者の少ない地域は通常体制、その他の地域は5割体制で取り組み、早期発注に努めた。その結果、令和元年度補正予算や2年度当初予算の5月末の契約実績は、昨年度の1・2倍、約320億円を確保した。引き続き早期発注に努め、9月末で元年度補正は9割、2年度予算全体で7割の契約を目指す。