≪質問項目≫
1、医療従事者以外の新型コロナ対策に尽力される方への基金による支援について
2、ひょうご防災リーダーの感染症知識の向上と複合災害時の役割について
3、高齢者や障がい者等を守るための「テレビ面会」実施の体制整備について
(1)社会福祉施設における体制整備について
(2)県立病院における体制整備について
4、コロナ感染症第2波への備えも含めた高齢者の介護予防について
5、障がい者のためのテレワークの推進について
6、学習の遅れ解消等に向けた県の支援策について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、医療従事者以外の新型コロナ対策に尽力される方への基金による支援について
(竹尾県議) 県は医療従事者等を支える基金として「ひょうご新型コロナウイルス対策支援基金」を創設した。この基金には4月27日の開始以来、6月11日までの1ヶ月半で、1,838件、約2億1千万円が集まっている。他の自治体では1億円を超えるような大口の寄付金もあるようだが、この基金ではそのような大口は無く2億円を超える金額が集まっている。
このたびのコロナ禍においては、自粛できず感染拡大の危険な中、介護施設、保育所、放課後児童クラブ、障がい福祉サービス施設・事業所などにおいても多くの方が従事されてこられた。一例をあげると、子育て中の医療従事者の皆様などが自粛できず仕事を続けるために、お子さんを保育所や放課後児童クラブ、放課後等デイサービスなどに預けることは必須になる。保育士さんにコロナ禍の状況をお聞きした。「保育中は抱っこしたり、寝かしつけたり、3密を厳守することは難しく、徹底したアルコール消毒など、小さな子どもなのでとても神経を使っている」と言われていた。感染の危険と隣合わせは保育士、放課後児童支援員など子育て施設の従事者も同じことである。
国の第2次補正予算案の中で、厚労省は「緊急包括支援交付金」に2兆2,370億円を計上し、福祉分野も支援の対象に加えそれを受けて県でも今回の6月補正予算で様々な対策がとられる。医療機関だけでなく、このような福祉施設も対象となったことを喜んでおられる。しかし、このような大規模な支援が第2波の際にもできるのかはわからない。
第2波の感染拡大に備えて、現在主に医療従事者を想定している基金の支援対象をコロナ感染症対策に尽力される介護施設、保育所、放課後児童クラブ、障がい福祉サービス施設・事業所などの社会福祉施設従事者にも拡大してはどうかと考えるが、所見を伺う。
(井戸知事) ご指摘の社会福祉施設従事者のほか、救急隊員やごみ収集員など感染の危険や不安と闘いながら業務に尽力されている方々がおられ、これらの方々に感謝と敬意を捧げなくてはならない。
しかし、基金はこれまで医療従事者を中心に、これらの者に対する支援を目的として周知することで、寄附金を募集してきている。したがって、その支援対象を直ちに社会福祉施設従事者等へ拡大することは、この基金の趣旨と取組の経緯、また寄附者の意思を踏まえると難しいのではないかと考えている。しかし、今回のコロナ対策で、具体的に患者対応で活動された方々もご指摘のようにおられるので、これらの方々に対する措置をどうするか別途検討したい。
なお、福祉従事者の勤務環境改善を支援するために、感染の第2波に備え、各施設に飛沫感染防止用のパーテーション等の物品購入や換気設備の設置などに上限50万円を補助するなどしている。
3、高齢者や障がい者等を守るための「テレビ面会」実施の体制整備について
(1)社会福祉施設における体制整備について
(竹尾県議) 新型コロナ禍では、社会福祉施設において、入所者は家族らとの面会ができなくなった。2~3か月と長期にわたる面会謝絶は、高齢者・障がい者の皆様にとってもご家族の皆様にとっても精神的負担となり、不安な日々を過ごされたと思う。特に、認知症の高齢者の方は家族と会えなくなり、精神状態が不安定になることもあったとお聞きした。
そのような中、三田市の高齢者施設では、「テレビ面会」が実施された。この施設では玄関に設置したパソコン前にはご家族が、フロアに設置したパソコン前には入所者がスタンバイし、画面を通じて顔を見ながらお話ができるというもの。私は、直接会えなくても家族が施設まで来て、テレビ画面越しだが顔を見ながら話すことで、家族の励ましが何よりも入所者の皆様を勇気づけたと思った。
このように高齢者施設や障がい者施設等の社会福祉施設で感染防止対策のために「テレビ面会」実施の体制整備が必要であると感じる。そのために各施設に、Wi―Fiやタブレット端末等整備のための支援を県として行うべきである。我が会派では、コロナ感染拡大の中で知事に対して、社会福祉施設等でのテレビ面会用の装置の整備の促進を申し入れしてきた。
令和2年度6月補正予算では、テレビ面会の体制整備について「新しい生活様式を踏まえた感染拡大防止対策への備え」の「社会福祉施設における感染症防止対策等への支援」として84億6,500万円の中で対応すると聞いているが、1施設あたり他の対策とあわせて上限50万円であり何よりも金額が少ないなどの課題がある。
私は、第2波に備えて兵庫県はどこの都道府県よりもより早期に、高齢者や障がい者などを守るために「テレビ面会」の実施体制の整備を進めてはどうかと思う。このことはコロナ感染症対策だけではなく、インフルエンザなど他の感染症の流行時期にも利用できるため、一時的なものではなく、未来への投資にもつながる。県として今後、社会福祉施設でのテレビ面会の実施体制を普及させるために、実施施設数等どのような目標を持ち、今回の補正予算も含めてどのように取り組んでいくのか。
(入江福祉部長) 一部の施設で取り組みが始まっているオンライン面会については、面会者からの感染リスクを排除しつつ、入所者とその家族等がお互いの表情や様子をみながら面談することが可能で、非常に有用な取り組みである。すでに取り組みを始めている施設にアンケート調査を実施したところ、多くの施設が既存の通信環境や安価なタブレット、無料のWebアプリ等を上手く活用して、追加費用なく、あるいは比較的低廉な費用で導入していた。
一方、情報機器に詳しい職員を中心に手探りの状態で実施しているところで、具体的なノウハウが不足している状況も見受けられた。このため、今回の補正予算案で1施設あたり50万円を支給して面会用タブレット等の物品購入を支援するほか、実際の導入事例や実施にあたっての留意点等、必要なノウハウの提供を合わせて行うことにより、オンライン面会の導入を希望する全ての施設への迅速かつ円滑な導入を進めていきたい。
(2)県立病院における体制整備について
(竹尾県議) 小野市にある栄宏会小野病院では、タブレット端末を病室と共有スペースに設置し、予約制で最多1日10組の訪れた家族がテレビ面会を実施。患者や家族の安心感につながり、門脇院長先生の「高齢者が家族に会うことができないのは心苦しかった。テレビ電話を使った人が喜んでいるのを見ると嬉しい」とのコメントが新聞に掲載されていた。
若い人にはスマートフォンなどを利用して自分自身でテレビ面会をされている方も多いと思うが、高齢者でタブレットやスマホを所有していない人や重症化するなどにより使用できない人もおられる。そのような方たちも面会できるように、また、患者と患者家族や医療従事者との間で感染防止対策のためにも「テレビ面会」実施の体制整備が必要ではないか。ICT環境が整っているところでも、感染が拡大しないようテレビ面会ができる体制整備が必要と感じる。そこで、県立病院においても、テレビ面会できる体制を整備するべきではないか。
(長嶋病院事業管理者) 県立病院では、患者の面会について原則禁止や人数や時間、回数の設定など一定の制限を設けている。これに伴い、患者と患者家族の面会は自身のスマートフォン等で個々に対応していただいているものの、重症患者や高齢患者などの一部では使用が困難なケースがある。そのため、尼崎総合医療センターや丹波医療センターにおいてタブレットを導入し、必要に応じて患者家族との面会に活用している。
また、厳しい面会制限を設けている、こども病院の新生児集中治療室においては、ご家族が自宅にいながら、タブレット画面を通して、新生児の様子が見られるよう検討している。
一方、感染症指定医療機関の県立4病院、尼崎、加古川、丹波、淡路においては、タブレットを使用し、看護師等による患者の体調確認のほか、臨床心理士等による患者のメンタルチェックやサポートなどに活用している。これにより、防護服等の着脱機会の減少による感染防止とともに、医療従事者の負担軽減にもつなげていく。
(竹尾県議コメント) 今回、コロナ禍で県民の皆様から頂いた小さな声を届けさせていただいた。まずは、テレビ面会の実施について、我が会派も知事に申し入れをさせていただいたが、私が一番言いたいのは、県がテレビ面会の取り組みを実施しているということをしっかりと施設利用者や家族、市町にアピールしていくことが非常に重要である。志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなったときにも感じたが、家族が会えないというのは大変厳しい状況であることを認識していただき、県としてしっかりと取り組みアピールしてほしい。
4、コロナ感染症第2波への備えも含めた高齢者の介護予防について
(竹尾県議) 県内の状況を見ると、介護サービス受給者数22・7万人、そのうち施設入所者数(施設系サービス受給者数)は4・1万人、施設系サービスを受けておられない居住系・在宅サービス受給者が18・6万人という状況である。これだけの数の人が機能低下のリスクに直面している。また、現在介護サービスを受けておられない高齢者の方でも、外出自粛により体力低下等の進行が心配される。コロナ感染症の第2波、第3波のことも考えると、今後2つの対策を早急に講じる必要がある。
1つ目は、介護予防に取り組む高齢者の増加である。緊急事態宣言解除後、日常が戻りつつあるとはいえ、みんなが集まるような介護予防の場へ高齢者は怖がってなかなか行かないのではないか。各市町の介護予防に資する住民主体の「通いの場」の参加者は、コロナ感染症がなかった昨年2019年が164,836人で65歳以上高齢者の約1割という状況だった。今年度はさらに減少し、回復の遅れが予想される。通いの場に参加する高齢者を増やすためには徹底した感染防止策や感染への恐怖感を取り除くための正しい知識啓発、そして参加促進の取組が必要である。
もう1つは第2波への備えで、外出自粛下での介護予防の対策を早急に講じる必要がある。たとえば、外出自粛下でも自宅で見られるように高齢者向けに現在、全国の自治体で唯一、兵庫県が認定している「音楽療法士」など音楽の専門家の動画の配信など工夫してはどうか。そのためには、高齢者が見ることが出来るために環境整備への支援も必要となってくる。そこで高齢者の介護予防に第2波への備えも含め今後どのように取り組んでいくのか。
(井戸知事) 現在は十分な感染防止安全対策のもとで「通いの場」が再開できるように、感染予防専門家の派遣指導への補助や、再開時の留意点の周知等、市町と「通いの場」設置や再開を支援している。
第2波への備えについても、例えばご指摘の音楽療法を自宅等で受けられるよう、効果的な実施方法を関係者と研究していきたい。国が示したオンライン「通いの場」アプリ等様々な資源の活用も促し、外出自粛中でも介護予防の取り組みが継続されるよう支援していく。
また、本県の「通いの場」参加者は全国で最多である。平成30年度で7,651カ所、参加者16・4万人になっているが、それでも県内高齢者の1割に過ぎない。さらなる充実が必要と考える。今年度は新規に「介護予防・生活支援マッチング事業」を実施することにしている。多様な社会資源である民間事業者・NPO等が「通いの場」を運営支援していただき、活動内容の提案に関わり、魅力の向上を図っていただくことで、介護予防に取り組む高齢者の参加を促進していきたい。
5、障がい者のためのテレワークの推進について
(竹尾県議) ポストコロナの社会全体の「生活様式」の一つとして、そして、障がい者就労支援の一環としてテレワークの推進が必要だ。健常者の方も感染を防止しながら公共交通機関などを利用しての通勤は大変だが、視覚障がい、肢体不自由、精神障がい、内部障がいなど様々な障がいを持つ方はさらに大変な状況である。
先日お話をお聞きした方は、30年間製造業の会社に勤めていたが、9年前に白血病を患い、移植手術により一命はとりとめたものの抗がん剤の副作用などで筋肉が減る難病を患い、肢体不自由障害2級と認定された。今回のコロナ感染症拡大では、免疫力も低いため在宅でテレワークをされたが、現在、緊急事態宣言も解除され、出社できるようになった。
しかし、会社からは契約社員への雇用形態の変更を提案され、大変悩まれていた。テレワークが通常の雇用形態として認められれば、このような方も正社員のままでいられるのだと思う。
コロナ感染防止の備えとして、障がい者の方へのテレワークの推進をすることによって、引き続き能力を発揮しながら働き続けることが出来る。そのためには、テレワークの環境整備が必要である。
また、就労を続ける視覚障がい者の方からお話を聞くと、以前より仕事の業務に合わせたパソコン業務のスキルアップができる相談窓口の拡充が求められている。県の施策では兵庫県視覚障害者福祉協会が重要な役割を担っており、今年度の当初予算でも視覚障がい者のICT指導者養成研修の充実強化が予算化されているところだが、コロナ感染症第2波への備えはスピード感が重要だ。
神戸市が委託しているNPO法人神戸アイライト協会では、仕事が休みの土曜日の相談業務や仕事に合わせたパソコン業務スキルアップ指導を丁寧にしており、神戸市以外の視覚障がい者の方も多く相談されているとお聞きしている。テレワークを推進するにあたっては、このような休日相談への対応や早期にICT技術の習得やスキルアップができる態勢づくりが求められている。
6月補正予算案ではポストコロナ社会を見据えた兵庫の基盤づくりスマート兵庫基盤の整備として27億8,600万円が計上されているが、残念ながら障がい者のテレワークを推進する事業は入っていないとのことだ。
コロナ感染症の感染再拡大への備えとして、障がい者のためのテレワークの環境整備やICT技術の習得、相談窓口の拡充などについて今後どのように取り組んでいくのか。
(入江福祉部長) 県においては平成27年度から先駆的にICTを活用した在宅障がい者の就業支援体制構築に取り組んでいる社会福祉法人プロップステーションに対して、ICT技術スキルアップ研修、あるいは発注企業の開拓等に必要な経費を支援することにより、起業と在宅障害者をつなぐ支援体制の構築に寄与している。さらに、今回のコロナ禍で措置された国の緊急経済対策を活用し、就労系障害福祉サービス事業所に対して、タブレット端末導入経費等を補助することにより、在宅就労の裾野の拡大を図っていく予算を計上した。
加えて、視覚や聴覚など情報取得や意思疎通に支援が必要な障害者の社会参加や就労にもICT技術は役立つことから、障害者のパソコン業務のスキルアップを図るため、ご指摘の県視覚障害者福祉協会、それから県の聴覚障害者協会、兵庫盲ろう者友の会とも連携して、パソコン技能講習会の開催やタブレット端末の操作方法などの相談窓口を設置しているところだ。
近年、障害者のICT機器活用等のニーズの高まりや多様化などから、休日・夜間にも講習会や相談対応を行ってきたが、障害者に対しての指導人材の不足などの課題も顕在化したため、今年度から民間のパソコン教室の講師等を対象とした研修を実施する。これにより、障害者がより身近な地域で障害特性に応じたパソコンのマンツーマン指導や相談を土日でも受けられる機会が拡大すると考えている。
(竹尾県議コメント) このような取り組みはスピード感を持ってしていただきたい。障害のある方やアイライト協会の方にお聞きすると、やはり会社でのテレビ会議の仕方が分からないという相談が多かったと聞いている。即座に使えないといけないと迫られている状況なので、スピード感を持って対処していただきたい。