≪質問項目≫
1、井戸県政最終年の総括について
2、新型コロナウイルス感染症の第5波に備えた医療・療養体制の構築について
3、総力を挙げたワクチン接種体制の推進について
4、コロナ禍における中小企業支援の拡充について
5、コロナ禍の小中学校における教育活動の充実と児童生徒の心のケアについて
6、コロナ禍で浮き彫りとなった女性の孤独・孤立への支援について
7、新しい体制によるデジタル化推進について
8、新型コロナウイルス感染症によって治安機能を低下させないための県警察の今後の対策について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、井戸県政最終年の総括について
(天野県議)井戸県政5期20年は、阪神・淡路大震災からの復興から始まり、新型コロナという新たな災害への対応でおわることとなった。災害対応の20年間だったが、特に最後の1年はコロナ対策に終始した。その中では、逼迫する医療や保健所の体制、人流の抑制、国や市町との関係など多くの課題が残っているが、まずは現下の新型コロナウイルスワクチン接種体制の整備と県内経済の回復に全力を注ぐことが重要である。
その一方で、社会も大きな転換期を迎えた。まずはデジタル化だ。官民挙げたデジタル改革が進み、県庁でもデジタル化が本格的に推進された。また、サプライチェーンの国内化・分散化により変化に強い産業構造への転換も進み、新たな活力が生まれている。加えて、地方回帰も進んだ。デジタル技術の進展により、大都市で働かなくてもよい土壌が育まれ、地方の良さを求めて新たな動きが芽生えた。
昨年12月定例会の知事の答弁にも「コロナ化がもたらした社会変革の兆しを的確に捉え、情報ネットワークの強化や地方回帰の定着など、地域創生の取り組みを加速化させ、人や企業の流れを兵庫へ呼び込む。だからこそ、新しい長期ビジョンを策定し、県民の夢を実現する新たな兵庫づくりに取り組んでいく。ポストコロナ社会を先導し、活力を保ち続ける兵庫を次世代につないでいけるように誠心誠意、全力で取り組んでいく」との答弁もあった。
県政はコロナ対策を中心に新たな試練を迎えている。しかし、未曽有の大災害など多くの苦難を乗り越えるたびに力強く立ち上がったきた経験を再認識し、自信を持って未来に目を向けていく時ではないか。そこで、この5期20年間の最終年のコロナ禍の1年を振り返ってどのように総括し、今後の県政に何を継承していきたいか。
(井戸知事)まだ緊急事態宣言下であるが、新規感染者数が減少傾向にある今、収束に向けて重要な局面を迎えている。県民や事業者の協力を得ながら、さらなる対応・対策に取り組んでいく。
一方、コロナ禍にあっても、未来を見据えその先にある兵庫の姿を描き、具体化への道筋をつけていかなければならない。1つには、デジタル化への対応。兵庫情報スーパーハイウェイやテレワーク兵庫など情報基盤の整備・活用により、本社・事務所機能の県内移転や新たな働き方、暮らし方を創りあげていく必要がある。
2つには、変化に強い産業構造への転換。現下の閉塞感を打開しなくてはならない。スタートアップの創出や次世代産業の育成。3つには、地方回帰へ関心が高まるこの好機を逃さず、人や企業を兵庫に呼び込むことだと思う。首都圏に加え、大阪や西日本からの移住相談対策を強化し、産業立地条例よる支援も拡充し活用を図る。
県政推進の基本指針である2030年の展望や地域創生戦略に基づく取り組みも進めなければならない。新しい将来ビジョンを県民の夢や希望とともに策定して、県民とともに進めていく時期でもある。ポストコロナ時代の新たな兵庫づくりへの本格的な挑戦、これからだがその過程は、予測困難な事態への対応が求められることもあると考えられる。だからこそ、課題に対して正面ら挑戦し、県民とともに取り組むことが基本と言わなければならない。
兵庫の150年あまりは、常に五国を活かし日本を先導し世界と繋がり、発展していく過程であった。未曽有の大震災からの創造的復興を果たした兵庫の力を信じ、この時代この地だからこその兵庫づくりを進めていくことが肝要である。
4、コロナ禍における中小企業支援の拡大について
(天野県議)県では臨時交付金等を活用してこの1年間、中小企業に対する様々な支援を行っている。しかし、3度目の緊急事態宣言がおいうちとなり、経営的な厳しさが増しており、よりきめ細かな支援が求められるようになっている。
今回の緊急事態宣言下では、飲食店以外にも苦しんでいる中小企業はすくなくなく、我が会派には多くの業界の声が寄せられている。3月の旅館・ホテル事業者との情報交換会では、感染予防対策と事業継続に必死に取組ながら、ゴールの見えない状況への悲痛な叫びをお聞きした。4月に入り緊急事態宣言が発出され、さらに苦しい状況に追い込まれている。緊急事態宣言が解除された後には、国や市町と連携し、県外客は無理でも、県内客向けのマイクロツーリズムを推進するための支援を迅速かつ効果的に実施する必要がある。
また、タクシー事業者からも窮状を聞いている。タクシーは公共交通機関としての重要な役割を果たしているが、狭い空間がリスクだと感じられて高齢者等から利用が避けられる傾向があり、厳しい経営状況にある。そのリスクを軽減するためにタクシーへの高性能フィルタを備えた空気清浄機、モニター機器の導入を支援すべきである。また、今後進む高齢者のワクチン接種の推進に当たって、交通弱者である高齢者のワクチン接種会場までの交通手段としてタクシーを活用することも検討すべきである。
また、国が行う「中小企業月次支援金」についてはその支給の条件が、前年もしくは前々年の対象月比の事業収入が50%以上の減少となっており、非常に厳しいものとなっている。たとえ事業収入が30%の減少でも経営の継続は厳しいということを理解し、県独自の救済措置が必要だと考える。
さらに、中小企業の資金繰り支援も重要であり、国のセーフティネット保証4号と危機関連保証の指定期間は延長されると聞いているが、セーフティネット保証5号の全業種に対する指定期間は6月末で終了する。その延長を国に求めるとともに、引き続き中小企業の資金繰り支援が必要だ。
県としても厳しい財政状況の中で様々な支援策を講じているが、以上のような業界へのきめ細かい支援や国の基準では支援することができない売上減少をきたしている事業者への県独自の支援が必要だと考えるが、今後どのように取り組むのか。
(井戸知事)国の地方創生臨時交付金を活用し、県独自支援策も盛り込んだ総額2、380億円に及ぶ大規模な補正予算を編成し、審議していただいている。まず、飲食店の休業・酒類提供禁止の影響を受けた酒類販売事業者に対して、国の月次支援金の要件である売り上げ減少50%以上を県独自で30%以上に緩和して対象者を拡大した。
タクシー事業者に対しては一層の感染防止対策を図るため、高性能空気清浄機等の導入を支援していく。ワクチン接種時の移動手段としての活用についても、市町へ周知している。観光分野では、感染状況を見極め、県民限定の県内旅行代金につき1人最大5、000円の割引と2,000円のクーポン券を配布する事業を展開し、観光事業の拡大を図る。
また、CO2濃度測定器の購入補助やワーケーションスペースの設置など、コロナ後を見据えた環境整備を国の支援に上乗せして支援していく。コロナ禍の環境変化に応じて、中小企業が建物改修や設備導入を行い、ビジネスモデルを再構築したり、新事業展開を図る場合には国の支援対象とはならない事業費150万円未満の取り組みに対し、総額7億円の県独自支援を実施することにした。
また、セーフティネットの役割を担う融資制度により、中小企業の経営支援に万全を期していく。本年度は融資枠8千億円を確保しているが、伴走型経営支援特別貸付等により事業者の経営改善を支援していく。このたびのセーフティネット保証4号等の指定期間延長に伴い、経営活性化資金、危機対応貸付等の期限を延長する。セーフティネット5号の全業種指定期間延長についても、引き続き国に要望していく。
5、コロナ禍の小中学校における教育活動の充実と児童生徒の心のケアについて
(天野県議)この1年を振り返ると、小中学校の教育について多くの変化と気づきのある1年だった。小中学校においては「GIGAスクール構想」の前倒しによる、一人一台端末の整備等、国の補助により緊急時における家庭でのオンライン教育にも活用可能なICT環境整備が進んだ。オンライン教育には様々な可能性があると考えるが、その一方で限界があることも改めて認識することになった。
また、学校は塾と違って単なる勉強の場ではなく、学習や部活動等を通じて友人やクラスメートと同じ時間を共有し、充実した生活を送れる貴重な場であるということも改めて認識した。今年度、修学旅行や遠足、運動会や文化祭などの学校活動の延期や中止により、学校生活の楽しみがどうなるのか不安に感じている児童生徒や保護者も多数おられると推察される。一方で、学校や行事での感染に不安を感じている児童生徒や保護者も多くおられるのも事実である。この不安定な状態やテレビやネットで大量に流れるコロナの情報は、児童生徒の心に大きなストレスを与え、ひいては自殺や不登校の増加に繋がるのではないかと心配するところだ。
我が会派の竹尾議員が昨年の決算特別委員会で、県立大学の冨永教授が提案されているコロナの正しい知識の定着と誹謗中傷防止のための「ストレス対処法を学ぶ授業」の実施について質問し、前向きな答弁をいただいたが、その他に児童生徒一人一人に寄り添った心のケアが必要になっている。「心のケアのための特別授業」の拡充や、自身で心の健康をチェックするシステム、学校内外での悩みを相談できる機会やスクールカウンセラーの積極的な活用、そして相談手段の工夫など誰一人取り残さない社会づくりが大切である。
大人にとっての1年と、児童生徒にとっての1年では重みが違う。大人は児童生徒の貴重なこの1年が、コロナ禍でも少しでもよりよいものになるように、それぞれの立場で努力する責務がある。そのために、教育現場では精いっぱいの努力を行われていると思うが、その教育現場を支え、ひいては教育活動の充実と児童生徒の心のケアのために、県教育委員会は何ができるのか問いかけた1年でもあった。この1年を振り返って、県教育委員会として教育活動の充実と児童生徒の心のケアのための取り組みをどのように行い、今後どのように取り組んでいくのか。
(西上教育長)新型コロナウイルス感染症のため活動の多くが中止・縮小となった。子どもたちが持つ感染症への不安とともに、こうした活動の中止が児童生徒の心にどのような影響を与えるかを把握するため、昨年度は年3回のアンケートを行った。
調査結果からは、こうしたストレスや不安をへらすためには各学校が、子どもたちの状況を踏まえて、学校行事等を単に中止にするのではなく、まずは「どうやったらできるだろうか」ということを一度は考えてほしいということを求めてきた。また、県としては1つとしては新型コロナウイルス感染症への正しい知識やストレスへの対処法を学ぶ特別授業の実施、2点目はスクールカウンセラー等の専門家と連携した支援体制の充実等に取り組んできた。
今年度も、1つには子どもたちの小さなSOSをキャッチできるよう積極的に声をかけてほしいということ、2点目はSNS相談窓口の時間を充実した。また、心のケア支援員の増員を図るなど、相談しやすい体制を整えた。さらに、緊急事態宣言が出たことから、結果的に教育活動が今年も2ヶ月近く制限を受けることになったので、児童生徒への影響を懸念し、今年も年2回のアンケートをとることとした。
先日、新聞の高校3年生の投稿で、コロナのため昨年海外への修学旅行、文化祭、部活動の試合などがなくなってしまい、高校生の思い出が薄い。また、県立学校の校長からは昨年度この3月に渡した卒業アルバムの写真が大変だった。中身も薄かったというような話を聞いた。こうしたことを踏まえて、感染予防を徹底しながら授業はもとより学校行事等の教育活動が児童生徒の心に残るものとなるよう取り組んでいく。
7、新しい体制によるデジタル化推進について
(天野県議)我が会派は、これまでも本県におけるデジタル化推進体制として、外部の専門人材を核とした専門組織をつくり、部局横断的に取り組む必要性を訴えてきたが、本年度より情報戦略監を設置してNТТ西日本から専門人材を招へいするとともに、情報企画課を全県のデジタル化施策推進を担当する「情報政策課」と、県庁業務のデジタル化推進を担う「デジタル改革課」の2課に再編・拡充し、それぞれの課に外部の専門官を今後採用することとなっており、本県のデジタル化推進体制を強化して取り組むこととなっている。
行政のデジタル化は昨今始まった話ではなく、2000年頃からIТ基本戦略やe―Japan戦略が打ち出され、各時代のITを活用し、その一丁目一番地として行政事務のデジタル化に取り組んできたにも関わらず、コロナ禍によって日本が「デジタル後進国」であることが浮き彫りになっている。行政のデジタル化がうまくいかない理由として、組織の縦割りやことなかれ主義、利用者目線の欠如、デジタル化しにくい行政制度設計などが指摘されている。
これらの課題はIТの分野で短期間に解決することができる課題ではなく、組織文化や業務プロセス自体や制度設計そのものの改革が必要になる。本県における新しい体制でのデジタル化の推進で、このような部局横断的な取組をどう進め、行政手続きにかかわる県民の利便性向上と行政の業務効率の両立をどのように実現させるのか。また、実効性ある施策展開をどのように図っていくのか。
(荒木副知事)4月には情報戦略監の設置をはじめ、新たな推進体制を整備した。7月には民間出身のデジタル分野専門官にも加わっていただき、行政・社会のデジタル化を本格化していく。「行政手続オンライン化推進計画」では、県民の利便性の向上、事務の効率化の両立を図るため、申請を原則オンライン化し、添付書面は不要とすること、記載事項の削減などに取り組むこととした。この取り組みには、徹底した業務プロセス改革が欠かせない。このため、学識者、民間事業者から構成される「業務改革推進委員会」を設置し、業務部門、事務改革部門、デジタル部門が連携して業務プロセスを横断的に見直していく。
県民生活や経済活動のデジタル化については、情報戦略監の知見とネットワークも活かし、民間企業と連携して先進的な取組を進めていく。例えば「兵庫情報ハイウェイ・スーパーハイウェイ」を活かした企業誘致やワーケーションの推進、衛星データを活用したスマート農業の展開、AIやIТを活用した検査・画像診断解析、診断予約や受付の自動化など県立病院のAIホスピタル化にも取り組んでいく。