≪質問項目≫
1、クラウド活用による全庁システムの経費削減の取り組みについて
2、女性デジタル人材育成による就職支援について
3、医療的ケア児支援センター設置による取り組みについて
4、出産前後の女性に寄り添う訪問型支援について
5、公共交通機関におけるバリアフリー化について
6、コロナ禍におけるオンライン等を活用した学習支援について
7、高齢ドライバーの交通事故防止対策について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、クラウド活用による全庁システムの経費削減の取り組みについて
(竹尾県議)誰もがデジタル化の恩恵を最大限に受けることができる社会を実現するため、国においては昨年9月にデジタル庁が発足し、システムの共通化推進や各府省庁の所管システムの総合調整などの取組が進められている。
県においても4月に情報戦略監を中心とする新たな推進体制となり、8月には民間出身デジタル分野の専門官を招聘し、行政・社会のデジタル化を推進している。県庁においてもコロナ禍でテレワークが普及し、事務的な作業は自宅でも職場と変わらず業務が行えるようになり、働き方改革にもつながっている。
兵庫県は既に、情報システム部門が全庁のシステムの予算の集約や改善に向けた助言などを行っていると聞いているので、今後は国のデジタル庁と同じように、県庁内のシステムの整備や運用の最適化を推進するよう取り組まなければならない。
県庁の主要システムは、かつては主に富士通、IBM社などの大型汎用機により運営されていたが、その後、庁内にサーバーを構えるオープン系システムに置き換わり、外部の業者にシステム開発から維持運用管理まで委託するのが標準となっている。
そのような中、茨城県では税務クラウドサービスを導入し、他の県と共同利用することにより、大幅な経費削減につながったという事例が報告されているので、今後システムを更新する際には、さらなるクラウドサービスの活用や他府県との共同利用などで経費削減につなげ、その効果を県民に還元していかなければならない。
クラウドサービスを導入するには、業務・事務の標準化という地道な作業が必要となる。何より導入しようとするサービスが適正なものか、見極める人材の育成が重要となる。さらに、すべての県民が県行政のデジタル化の利便性を実感するためには、特にデジタル弱者といわれる高齢者等のサポート体制を充実させるなどで誰一人取り残されることなく推進することが求められている。
そこで、クラウド活用による全庁システムの経費削減に向けた取り組みについて所見を伺う。
(谷口政策創生部長) 他団体との共同利用については、県内市町とは電子申請システムや電子入札システムをクラウド上に共同で構築している。さらに、県内にとどまらず他府県も視野に庁内システムの他団体との共用に向け、課題の整理など検討を進めている。また、システムの構築・更新にあたり適正なシステム調達や情報セキュリティの確保が図れるよう、県及び市町の情報担当職員向けの研修を実施するなど人材育成に努めている。
システム化の推進に伴うDX化の進展により、高齢者や障がい者など、デジタル機器の操作に不慣れな方が取り残されないよう、情報端末の操作講習会の開催などデジタルデバイドの解消プロジェクトも展開する。
(竹尾県議コメント) 知事は今、県財政状況の厳しさから県民生活サービスにかかわる行財政改革の事業の見直しも進めているが、まずは足もとの県庁システムの経費削減について、しっかり取り組むべきではないか。ポイントはクラウドの活用、他府県との共有、また効果の県民への還元である。これらは、苦労を惜しまず課題を乗り越えて大きな経費削減につながるクラウド活用、全庁システムの経費削減についても進めていただきたい。
2、女性デジタル人材育成による就職支援について
(竹尾県議)デジタル分野の仕事は感染症の影響を受けにくく、今後デジタル分野の労働力を求めるニーズが高まるといわれており、経済産業省の調査では、2030年に情報システム部門などで働く「IT人材」が最大で約79万人不足すると試算されている。デジタル化が進めば、育児や介護をしながらテレワーク等で勤務できる企業が増えると考えられるため、女性がパソコン等のデジタルのスキルを習得できるよう積極的に支援し、再就職につなげる取り組みを後押しするべきである。
公明党は、「女性デジタル人材育成10万人プラン(仮称)」を掲げており、党の女性委員会は昨年、デジタル社会推進本部と合同で、ひとり親や未経験者を対象とした研修や就労支援などの先進的な取り組みについて、全国的な調査を行った。
その結果、適切な支援があれば、女性はより活躍できるという報告があったため、昨年末閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に「女性デジタル人材育成の推進」を加えるよう強く主張し、項目が新たに追加された。兵庫県では、かねてより女性の就業支援に取り組んできていると聞いているが、私は今後より多くの女性のデジタル人材を増やすためには、女性就業に向けたセミナー等に力を入れるとともに、周知・情報発信を積極的に行っていくことが大切だと考えている。
また、介護や子育てのため、だれでもセミナー等を受講できるように「オンライン講習」など女性への様々な支援の在り方も検討すべきである。コロナ禍が長引く中、希望する女性がデジタルスキルを習得し、就職や転職の機会を広げる取り組みをどのように進めていくのか。
(齋藤知事)県は男女共同参画センターにおいて、従来からパソコンの基礎講座を実施しており、今年度は13コースを開催し144人が受講した。受講後、希望者にはセンター内で設置しているハローワークで就業の相談や職業の紹介も行っている。あわせて、神戸高等技術専門学院等の職業訓練にパソコン基礎からプログラミングなど高度なスキル習得まで、ニーズに応じたコースを実施している。
また、自宅でパソコンを活用して仕事を受注したいというニーズもあることから、在宅ワークで必要な知識等を学ぶセミナーも開催している。
来年度は、男女共同参画センターでのデジタルスキルを学ぶセミナーを増やし、オンラインでも開催する。また、就労相談では身につけるべきデジタルスキルについての助言等を積極的に行っていく。これらの取組について市町やハローワーク等と連携して情報発信を強化していく。
県内の中小企業において、ポストコロナを見据えて今後、ますますデジタル人材、いわゆるDXの人材が必要になってきて、その確保をどうしようかと検討している状況である。女性がデジタルスキルを習得できるように取り組んで、就職や転職の機会を広げるということも大事なのでしっかりと支援していく。
(竹尾県議コメント)女性デジタル人材の就労支援について、しっかりと女性のデジタル人材を活用していくという前向きな方向を打ち出していただいた。ただ、この県行政のデジタル化の利便性を実感するためには、やはり特にデジタル弱者といわれる高齢者のサポート体制が重要である。私はやはりこの女性デジタル人材の拡充によって、女性が持つ丁寧さ、やさしさを活用して高齢者などデジタル弱者へのサポート体制にもつながる、またつなげる。そういったデジタル人材育成の拡充、就労支援の推進にも力を入れていただきたいと思う。
4、出産前後の女性に寄り添う訪問型支援について
(竹尾県議)先日「産後ドゥーラ」協会の研修会に参加したが、梁川妙子理事は「産後うつ」は出産が母親に体とホルモンの急激な変化をもたらし、心のダメージが大きくなり発症する。また、近年虐待件数が増え続けているが、虐待による死亡事例の加害者は、実の母親が最多であり虐待は子どもが生まれた「直後」から発症し、0歳児が一番多い。虐待の原因は、母子の愛着形成がうまくいかなかったことであり、特にコロナ禍で子育てのスキルが十分でない母親が孤立し、追い詰められているとの話をお聞きした。
さらに今後、不妊治療の保険適用が進めば、出産女性の高齢化が進むことが考えられるものの、父親の育児は進んでいないため、虐待の予防には母親の心に寄り添い支援する、産前産後ケアが重要であると訴えられていた。産後ドゥーラ協会は、家事や育児を中心とする訪問支援であり、食事づくりや掃除、洗濯、赤ちゃんのお世話など幅広いサポートを提供している。
家事育児支援の担い手としては、ヘルパー、ベビーシッター、産後ドゥーラが考えられるが、家事支援ヘルパーは赤ちゃんをさわることができず、ベビーシッターは家事ができないため、「産後ドゥーラ」だけが家事と赤ちゃん双方の支援ができることになる。
東京都では産後家事・育児支援事業として、昨年より区市町の取組や人材育成に10/10の補助を実施しているほか、神奈川、千葉など7都道府県の25自治体が独自の事業を実施している。今後国では、子ども家庭庁の設置に向け、子育て支援に関する新法を概ね2年後に成立させ、子育て世帯への訪問支援事業を含む、新たな給付事業を恒久的に制定する予定としている。
県では「養育支援訪問事業」、今年度モデル的にはじまった「兵庫県版マイ助産師制度」を実施されているので「産後ドゥーラ」の活用などにより、訪問型の産前産後支援を充実させるべきである。そこで、国の制度化を前に県として、出産前後の女性に寄り添う訪問型支援について、どのように進めようとしているのか。
(藪本健康福祉部長) 現在県下の各市町においては、例えば妊産婦の孤立感を解消するために、保健師等や子育て経験者等が相談支援を行う「産前・産後サポート事業」、これについては29の市町が実施している。また、保健師等が退院直後の母子に対して、心身のケアやサポート等を行う「産後ケア事業」、これについて41全ての市町が実施しており、うち訪問型については30の市町が実施している。加えて保護者の養育支援が特に必要な家庭に対しては、保健師・保育士・ヘルパー等が育児支援、家事援助等を行う「養育支援訪問事業」、これについても39の市町が実施している等、妊産婦や母子を対象としてさまざまな訪問型の支援を実施している。 県ではまず、各市町の訪問型支援の取り組み状況を把握して、これを全県への情報発信、また家庭環境や母親の状況に応じて適切な対応ができるよう、保健師、助産師等への必要な研修の実施、各地域の医療、福祉等の幅広い関係者の参画による会議等で、支援体制の検討や好事例の共有を行うことにより、妊産婦への支援の充実を促進している。
さらに今年度から議員からもご紹介いただいたが、一人の助産師が訪問等により妊娠期から育児にわたって切れ目のない支援を行う「兵庫県版マイ助産師事業」を県内の2市でモデル実施しているところだ。一方、国においては今年度から家事・育児等に不安を抱えた家庭に支援員が訪問する「子育て世帯訪問支援事業」また来年度からは母子保健と児童福祉の支援機関の連携強化、そして令和5年度からは子ども真ん中社会の実現に向けた、こども家庭庁の創設等が順次進めらる。
県としては訪問型支援の推進に向け国の動向を注視しつつ、他府県の先進事例収集にも努め、提案のあった産後デューラの活用に向けた人材の確保、育成のあり方の検討、「兵庫県版マイ助産師事業」の全県普及に取り組む等、安心して子供を産み育てられる体制構築に向けて市町とも連携しその対策を強化していく。
(竹尾県議コメント) 訪問支援についてはヘルパー、ベビーシッター、保健師、保育士、助産師があるが産後デューラもしっかり入れ込んで、選ぶのは出産前後の母が選ぶ。必要なものに必要な支援を届けるのは行政の役割。助産師やヘルパーが足りないということも耳にする。支援の輪を広げる、産後デューラを入れる体制を兵庫県が先導していくことで、市町が活用しやすくなる。マイ助産師制度とあわせて、マイ訪問支援員制度、マイデューラ、マイヘルパー、マイシッターの導入を検討していただきたい。国もしっかりと動く、2年後には法整備して動いていくので兵庫県がいち早く進めていくことが重要である。兵庫県が安心して子育て、産み育てやすい街、環境づくりが県の課題である人口流出を防ぐ大きなカギとなる。
知事は躍動する兵庫というが、言葉だけ、文字だけ踊るのではなく、県民の心をどう動かすかだ。兵庫に住んでよかった、そう思う人が何人できるかが勝負である。コロナ禍で悲惨な虐待、産後鬱が増えている。産前産後の女性に寄り添う、必要な支援はまだとどいていない。そういうことをしっかりと進めていく、知事の若い力、子育て中の知事が誰一人取り残さない兵庫づくりをするという手腕に期待している。
6、コロナ禍におけるオンライン等を活用した学習支援について
(竹尾県議)2月10日の神戸新聞によると、県教育委員会と神戸市教育委員会の調査で、兵庫県内で新型コロナウイルスへの感染が不安で登校できない小中学生が、1月時点で3、833人にのぼり、そのうち小学生が2、511人、中学生が1、322人であることが分かった。感染拡大とともに県内全域で登校できない生徒が増加する傾向が見られている。
そのような中、2月7日、サンテレビ「ニュースキャッチ」に、阪神・淡路大震災をきっかけに子どもの心のケアに取り組む、臨床心理士で兵庫県立大学大学院の冨永良喜教授が出演し、全国の公立の小中学校で約3割の学校が学級閉鎖等の措置をとっていることに対して「これは東日本第震災を超える災害ですね。地震や津波と異なるのは、感染の不安だけではなく、感染させてしまうのでは、という不安があることです。自分を責めなくていいのに、責めてしまいやすくなります。また、日常生活の行動制限が厳しく、強いストレスを感じ続けています」と述べられた。
特に「オンライン授業」の実施状況については「自治体によって差が激しい。一方的な授業配信にとどまり、交流ができていない市もある一方で、オンラインでグループ討議したり、オンラインで宿題も提出したりしている市もある」と発言され、沖縄県ではオンライン授業中心の市の方が、分散登校のみの市より、感染者数が半分であったことを踏まえ、感染拡大の状況に応じて、登校とオンライン授業を併用するハイブリッド方式へ切り替える必要性を訴えておられた。
兵庫県においても日々状況が変化する状況の中、工夫を重ねながらオンライン等を活用した学習支援を実施されているが、その取り組みにはばらつきがあり、市町においても格差が出てきていると思うので、オミクロン株への対応だけでなく、次の波に備えて早急に対策を進めるべきであり、課題だと感じている。
また、児童生徒の感染拡大の恐れや不安に対しては、県が推進する動画の活用やスクールカウンセラー等専門家を活用した「ストレス対処法を学ぶ特別授業」などオンライン配信も行うべきではないか。そこで、今後「コロナ禍におけるオンライン等を活用した学習支援」をどのように進めるのか所見を伺う。
(西上教育長)県内の小・中学校においては、一人一台の端末や学校内でのICT環境が整備された。今年度4月からようやく日常的にICTを活用する教育活動ができる環境となった。しかしながら、学年閉鎖また学級閉鎖等を行った学校における学習支援の状況をみると、ご紹介にあったように従来のドリル等の活用となった学校もあれば、オンラインによる朝の会や授業のライブ配信、またオンライン上で双方向のグループ学習を行う学校もあるなど、確かに市町間、学校間でばらつきが出ている。
この課題はハード面の課題もあるようだが、やはり日頃の使用頻度の差が、教員のICT活用の資質向上の差にも表れている。一方で、短期間でもこうしたオンラインでの授業を行ったことが、今後の事態への備えや、また、オンライン活用に対する教員の自信につながったという声も聴いている。
県としては、今回の教訓を幅広く活かせるよう、オンラインを使った好事例を紹介していきたいと思っている。あわせて、臨時休業等が終わり、登校した際には学習の定着状況を確認し、人と人との関わり合いによる学びをとりもどせるよう市町教育委員会に指導していく。
また、コロナ禍による心のケアについては、ご紹介にもあったが県のホームページに掲載しているストレス対処法を紹介した動画を活用することをさらに促すとともに、オンラインとなった場合でも児童生徒の様子を確認するよう引き続き指導していく。