≪質問項目≫
1、保育施設における通園バスの安全確保対策について
2、買い物弱者対策について
3、子供の安全な通学路の確保について
4、移住促進のための空家活用について
5、交通安全施設の維持管理と設置について
6、1人1台端末の利活用について
≪質問と答弁のダイジェスト≫
1、保育施設における通園バスの安全確保対策について
(天野県議) 令和3年7月に福岡県中間市の保育所で男児が通園バスに置き去りにされ熱中症で亡くなり、令和4年9月5日には静岡県牧之原市の認定こども園でも同様の事件で女児が亡くなった。昨年9月議会で我が会派OBのあしだ議員が一般質問で取り上げ、当局より安全意識の徹底を前提に手順のマニュアル化等により確実な行動に繋げる対策と、ヒューマンエラーを致命傷にしないために安全装置等の設置対策が必要との答弁があった。
国会でも昨年10月の参議院予算委員会で公明党佐々木議員が質問し、置き去りを防ぐ安全装置の設置を義務付けるとして政府の緊急対策に言及し、複数の保育園を巡回する送迎バスや認可外保育施設のバスも含めて国の支援により「早期実現をするように」訴えました。
岸田首相は、いずれのバスも義務化の対象にする考えを表明し、財政措置と安全対策を「スピード感を持って着実に実施する」と述べた。
我が会派としても、昨年10月に姫路市内の自動車電装品メーカーを訪れ、バス車内置き去り防止装置を視察した。その際「安く簡単に設置でき、子どもたちに負担をかけないシンプルなものを心掛けた」と説明していた。
また、昨年12月議会の島山議員の代表質問に対し、知事から「来年4月には省令改正があり、通園バスの安全装置の設置が義務付けされるという方向でガイドラインが年内に策定される予定である。県では各施設に安全管理事項の周知徹底、国の補正予算を活用した安全装置の早期設置というものも今回予算に入れている。また、全施設を対象に送迎時の安全管理に関する研修も年度内に実施する方向で考えている」との答弁があった。
県として保育施設での通園バスの安全確保対策が適切に行われるように、安全装置の設置に向けた現状と支援や研修、チェック体制をどのように行っていくのか所見を伺う。
(斎藤知事)本年4月に生産・供給体制が整ってきたことから、直ちに各保育施設に製品リストを紹介し、導入経費の補助を活用して全施設で設置するよう指導した。令和4年12月の補正でも、この関連予算を計上し政令中核市一般市との役割分担の中で、県としては認可外の保育施設に、安全装置の設置補助を支援している。現時点では、6月末で8割以上の施設に導入が見込まれているが、猛暑が厳しくなる最近なので、ぜひ夏の時期までには全施設に装着をしてもらえるよう引き続き強く働きかけていく。
また、安全意識の運用面での徹底も大事なので、安全管理に関する園長等研修を行うとともに、市町や施設の全職員を対象としたオンライン研修、状況に応じてのオンデマンド研修にも取り組んでいく。
さらに、毎年各施設から県に提出される保育所等運営チェックリストの項目に送迎バスの安全装置の設置や、乗降車時の園児の所在確認の項目を新たに追加し、今後、県による監査の際にも安全確保の状況確認を徹底していきたい。
(天野県議コメント)通園バスの安全については、この夏にこういう事故が全国で、また県内で起こらないように、しっかりと取り組みをしていって、意識を高めていきたいと思っているので、お願いします。
2、買い物弱者対策について
(天野県議) 人口減少や少子高齢化等を背景とした流通機能や交通網の弱体化等の多様な理由により、日常の買い物機会が十分に提供されない状況に置かれている人々、いわゆる「買い物弱者」への対策が必要となっているが、様々なニーズに地方自治体だけで充分な対応をするのは困難である。このような問題意識の下、経済産業省では買い物弱者の問題解決に向け「買い物弱者応援マニュアル」を公開し、ベストプラクティス(最良の方法や事例)等のヨコ展開を図り、民間事業者、地方自治体及び住民が相互連携できるよう普及啓発に取り組んでいる。
私はその発端となった事例が、平成21年8月に発生した台風9号水害で大きな痛手を受けた佐用町ではないかと思う。その際、移動販売をされていた商店が閉店。町内の山間部に住み、移動手段を持たない多くの高齢者が「買い物」という日常生活にすら困窮する状態となった。
佐用町では、買い物に困る人たち、いわゆる「買い物弱者」問題への取組を開始した。平成22年10月に山間地域と商店(街)を結び「買い物弱者」支援と商店(街)の活性化を目指す「さようまち・むら両立プロジェクト協議会」を発足した。「買い物弱者」と「商店(街)」が共栄する仕組みを模索してきた結果、商工会や地域づくり協議会などで組織する『町防災に強い地域づくり推進協議会』が、国の補助を受け町内で移動販売に関する社会実験を行った。こうした取組を通じ、町商工会が町の補助を受け、移動販売車購入の半額を助成する事業を実施し、平成24年1月から買い物弱者対策として、商工会が指定した地域で移動販売が始まった。
人口減少や少子高齢化等を背景とした流通機能や交通網の弱体化等の現状は逼迫している。「買い物弱者」の問題は、都市部でも共有する問題になっている。私たちの暮らしに直結する課題である。解決していくためには、移動販売や商店(街)と地域がお互いに支え合い、共存共栄していくことが必要である。それは私たちの暮らしを支え、豊かにすることに繋がっている。
兵庫県では、買い物弱者対策と新規顧客の獲得による商店街の活性化を図るため、商店街等が実施するECサイト・共同宅配、ご用聞き・共同宅配、移動販売、買い物送迎車の運行、高齢者等の買い物サポート(買い物同行支援)を支援する『商店街買い物アシスト事業』があるが、より拡充する必要がある。これからの考えを伺う。
(原田産業労働部長) 県では、買い物弱者対策として経産省のマニュアルにもあるが①家まで商品を届け。②近くにお店をつくる③家から出かけやすくするとの三つの観点から、共同宅配や移動販売、買い物送迎車の運行を支援する「商店街買い物アシスト事業」を実施してきた。
「商店街買い物アシスト事業」については、昨年度の事業レビューで外部委員意見をいただいた。その外部委員の意見を踏まえ、今年度から、商店街等は販売業務に注力し、販売以外の業務を担ってもらうNPO法人等を補助対象に追加し、共同グループによる取組を促している。また、もう一つは県内では、福崎町において商工会を中心として商店が共同で取り組んだ成功事例もあることから、商工会を対象とした現地視察会を実施し、県内各地での成功事例のヨコ展開を図る。
これらの取り組みに加え、買い物困難地域でのドローンによる商品輸送やデマンド型乗合交通の普及など、先進技術の活用も視野に入れていく。今後は現場の意見を踏まえ、どのような対応ができるか幅広く制度拡充を検討していく。さらに、市町のみならず、商工会や自治会など、地域の関係者と課題を共有し公民連携により自律的な買い物弱者対策が継続できるよう総合的に支援していく。
4、移住促進のための空家活用について
(天野県議) 先日、宍粟市で調査したところ、空家バンク登録は平成22年から実施されていたが、成約にはなかなか至らなかった。そこで、平成27年より物件調査を市で徹底して行ったうえで、移住希望者等に対する「農地付き空き家」の情報提供などを行うとともに、地域の実情に応じて農地法の農地取得に関する下限面積要件を引き下げるなどの先進的取組が行われてきた。その結果、空家バンク成約件数及び農地取得許可件数が平成28年から令和4年まで53件となり、本年4月末においては空家登録件数61件中、農地付き物件が20件に及んでいる。
宍粟市で行われた空家バンク利用登録者に対する利用希望理由のアンケート(複数選択)では、田舎暮らしで定住したいが68%、セカンドハウスとして利用したいが26%、就農したいが16%、経済・文化・教育・芸術活動等を肢体が13%となっている。そして、空家バンク利用登録者の年齢層は、30~39歳が18%、40~49歳が19%、50~59歳が23%、60から69歳が24%、70~79歳が8%となっており、年齢層はまんべんなく移住してライフスタイルを考えている方の需要があると思われる。
実際に空家バンクを通して成約した購入者のうち、農家レストラン経営や家具・雑貨のオンライン販売、家庭菜園をして田舎暮らしを満喫されている方や県外との2地域居住暮らしで過ごされている方などの空家を活用した移住者の事例紹介をしていただき、移住希望者等に対する幅広い空家物件情報の提供が効果的だと思った。
令和5年4月1日から「改正農地法」が施行され、この中で、農地取得に係る下限面積要件は廃止された。これにより、移住希望者等が空家と農地を一緒に取得しやすくなることが期待される。兵庫五国には様々な環境があり、それを活かした空家情報の発信もできる。
県においても、空家の有効活用を図るため、改修費用への支援や空家活用特区制度による市街化調整区域の規制緩和などの取組が進められている。そこで、移住促進の一つのツールとなる空家活用に関して、市町への支援を含めた県の取組の現状や今後の展開について考えを伺う。
(斎藤知事) 県ではすでに、平成25年から住宅へのリフォーム、カフェやホテル等への改修などの支援を行っており、県外からの移住や起業にもつなげている。加えて、議員からも触れていただいたが、昨年度創設した空家活用特区制度では、市町の空き家バンクの登録をサポートする団体への補助を行っている。この空家活用特区については、市町と連携しながら地区指定することが大事で、3月末時点では、赤穂市坂越地区、それから西脇市嶋地区の2地区が指定されている。
特区では空き家バンクの登録促進の支援や改修費用に係る大幅な支援の拡充とともに、市街化調整区域の要件緩和がポイントとなる。これまでは、農家を営んでいる方や許可を受けられた方でないと空家の活用ができなかったものが、特区に指定された地域では誰でも活用可能になるということや、これまで空き家を店舗やホテルに改修する場合には、開発審査会の審査が必要であったが、特区内では審査会が不要になるということで、大幅な規制緩和をするものとなっている。複数の空き家活用の相談が指定地区で寄せられている。今後、他市町への積極的に活用を働きかけていきたい。
また、空家活用を図るための民間のアドバイザーの配置や、県内では38市町が空家バンクを設置しているが、さらに移住者が情報を入手しやすい環境づくり、ホームページの検索機能の向上なども進めて行きたい。また、移住相談窓口である「カムバックひょうごセンター」など、相談窓口において空き家バンクなどの情報提供を行い、移住の促進に向け空き家の活用を広げていきたい。
5、交通安全施設の維持管理と設置について
(天野県議) 2021年に三重県鈴鹿市で犬の尿で鉄製信号柱が倒れる事故が発生したり、新潟県で歩道の道路標識が倒れ、集団登校中の児童が怪我をする事故が発生した。本県では、信号機のLED化を集中的に進めているところだが、更新基準を超過した信号制御機の割合が2021年度末で約35%、新号柱が約24%あると聞いている。交通安全施設の多くが更新時期を迎えているものの、更新が追い付かず老朽化が進行している。信号機と信号柱を合わせた重量は450㎏以上もあるため、倒壊による人や車への影響は計り知れない。本来は県民を交通事故から守るための信号機などが、逆に県民の生命や財産を脅かすことにもなりかねない。
交通安全のための施設には、信号機や道路規制標示、注意喚起表示、カラー舗装のほかに、ハンプ、イメージハンプ、スムーズ横断歩道など、横断歩道の手前で車に一時停止や減速を促す工夫を凝らした仕組みなどが全国で広がっている。信号機などの交通安全施設の維持管理に莫大な費用がかかる状況下で、物理的に事故が起きにくい工夫を凝らした対策を進めることは大事である。また、こういったハード対策には、その後の維持管理も重要な問題となってくる。特に道路に塗装する標示は劣化が進めば、本来の効果が得られず危険性も高まる。
そこで信号柱や信号制御機の老朽化対策・横断歩道の維持管理について、交通事故防止を担う県警察としてどのように考えているのか。
また、これまでも要望してきたが、横断歩道設置要望についてである。私の住む姫路市の地域住民から切に設置の要望が挙げられているところがある。道路管理者である県・市が道路環境の整備可能となった箇所に対し、県警察では既設横断歩道との距離、横断需要等から必要性が低いと判断し設置許可がおりない箇所がある。そこを認めると、そこら中に設置しなくてはならないと心配されることは一定理解するが、私はその地域に住む住民が生活上現時点で必要になり要望されていることは歩行者優先を徹底し、横断歩道合図運動を推進する県警察の事業にもあったものであると思う。住民の目線に立った立場での考えを伺う。
(村井県警本部長) 信号柱は更新基準を40年としている。しかしながら、立地条件により腐食の進度が異なるので、打音検査などを実施して、腐食の程度が高い箇所から更新している。
次に、信号制御機については更新基準が19年と定められていることを踏まえて、将来的に老朽化した信号制御機がなくなるよう、年平均で約380基ずつ計画的な更新を進めている。さらに、横断歩道について、摩耗すると交通事故につながる可能性が高いことから、通学路などにある横断歩道から優先的に更新するとともに、警察官による応急補修を積極的に行って視認性の確保に努めていく。
なお、横断歩道の設置要望については地域住民等の意見も踏まえて、交通量、横断歩行者数、と直近の横断歩道の設置状況等、周囲の交通の実態等から、その必要性についてしっかりと検討を行うと共に、その検討結果について地域住民等に説明の上、理解が得られるように努めていく。