議会質問(代表・一般)
Parliamentary questions
第345回(令和1年9月)定例県議会
代表質問
あしだ賀津美県議
[質問項目]
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1. 兵庫県地域創生戦略の総括検証と実効性ある取り組みについて
質問と答弁のダイジェスト
[あしだ県議]地域創生戦略の令和元年度のアクション・プログラムでは、現戦略の最終年度として人口の自然増対策として子ども・子育て対策、健康長寿対策、社会増対策として人材流入増加、地域の元気づくりとして県内総生産、県民総所得について方向性を示しつつ、各戦略目標に対し重点指標や政策アウトカム指標を設定し、実現に向けて取り組んでいる。
しかし、出生数を例に挙げれば、目標の44、000人に対し、平成27年から28年は目標を上回ったものの、平成29年は42、198人、平成30年は40、303人と目標を下回り、むしろ減少し続けている。この出生数の目標に対する政策項目については21の政策アウトカム指標が設けられ、平成30年度に評価されている18項目についてみると、目標値に対する実績値の達成率100%以上のA評価が、12、90%以上のB評価が2、70パーセント以上90%未満のC評価が4、70%未満のD評価が0と高い達成率となっている。
しかし、重点指標の婚姻率、出生率は目標を下回っており、現在は目標を上回っている女性人口も令和2年度に目標を達成できるのか危ぶまれる。重点指標が目標を下回っているにも関わらず、政策アウトカム指標の評価が高いという現状を見ると、現在の政策アウトカム指標が本当に適切なものであるか疑問無しとはいえない。
我が会派がこの夏に実施した地域政策要望会で県下首長から産婦人科医不足を訴える声を多く聞いた。自然増対策といいながら地域で安心してお産ができない状況では元も子もないので、体制整備が急務であると考えるが、この点を評価する政策アウトカム指標はない。わが会派はかねてから、地域創生戦略の取り組みを実効性あるものとするために、施策の効果を適切な政策アウトカム指標で評価するすることを求めてきた。目標を達成できていない原因をどのように分析し、次期地域創生戦略では取り組みの実効性を高めるために、政策アウトカム指標の見直しについてどのように考えているのか。
また、実効性を上げていくためには、今後は産業界や民間、専門家やNPO法人、さらにはボランティアなど各種団体も含めて幅広い意見や経験、ノウハウなどを参考にしつつ斬新な発想のもと、市町等と連携しながら本格的に取り組むべきだと考えるが、次期地域創生戦略はどのように実効性ある取り組みを進めていくのか。 そこで、地域創生戦略のこれまでの取り組みをどのように総括検証し、次期戦略では実効性を高めるためにどのような視点で見直しを進めていくのか。[井戸知事]地域創生戦略は昨年度、重点指標、政策アウトカム指標、事業進捗指標の3層の評価構造とした。しかし、より実効性を高め成果を検証する上でいくつかの課題もある。一つは、短期的には効果が発現しない施策に対する評価だ。例えば、高校2年生に県内起業ガイドブックを配布しているが卒業時までは効果が分からない。地道な取り組みが必要だ。
二つは、事業量が不足している施策だ。例えば、出生数を増やすには婚姻数の増加が必要だが、出会い支援事業の成婚者数等は年間300組程度である。こうした施策は、県民、事業者を巻き込むことで波及的に成果を生み出していかねばならない。
三つには、有効な施策が不足している場合だ。例えば、安心な出産という面では、周産期母子医療センター数を政策アウトカム指標にしているが、より有効な施策があればアクションプラン策定時に適宜追加していきたい。また、定量的な指標のみでは表せない成果もある。次期戦略では、若者の定着・環流が大きな柱となる。こうした取り組みは意識醸成が不可欠なだけに、大学生の就業意識などアンケートに基づく定性的な指標も設定し、量と質の両面から検証可能な体系を構築したい。
あわせて、現行戦略は全県目標しかなく、UJIターンによる若年就農者数の増など、地域の成果が見えにくい。例えば、淡路地域では新規就農者の増など地域別の目標を設定し、地域の強みを活かしたプロジェクト等を検討していきたい。 -
2. 若年性認知症対策について
質問と答弁のダイジェスト
[あしだ県議]過日、私は若年性認知症家族の会である、ひまわりの懇談会に参加し、若年性認知症患者及び家族、関係者の方々から話を聞く機会があった。
本人の症状の激しさ、家族の介護負担の大きさ、経済的な困窮、専門医療機関や相談窓口の少なさ、ケア方法の未確立など医療や介護の支援する側の問題、どの診療科を受診すれば良いのか、生活に必要な助言や情報、患者と家族が受け入れ可能なサービスの情報はどこで得られるのか、高齢者と比較してBPSD発生時に適したプログラムとノウハウの蓄積がない。
介護認定が下りずデイサービスに行く前の受け皿がない等、抱える苦悩や要望を聞き、孤立を深める患者、家族を救うために多岐にわたる支援が必要であると痛感した。
本年6月に認知症施策推進大綱が閣議決定されたが、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる社会を目指し認知症の人や家族の視点を重視しながら、共生と予防を車の両輪として施策を推進していくとされ、若年性認知症にも対策が練られていると伺っている。私は兵庫県にぜひとも若年性認知症について全国を先導する取り組みを行ってほしいと考える。
そこで、若年性の認知症対策について、患者、家族に対する総合的な支援をどのように展開していくつもりか。[井戸知事]若年性認知症については、その苦悩や家族の介護負担、経済的困窮等からその対応は重要と考えている。その対策として「ひょうご若年性認知症支援センター」を設置し、コーディネーターによる専門相談や市町職員の研修等を行うほか、医療や介護等関係団体の参画を得て「若年性認知症自立支援ネットワーク会議」を開催し、課題の検討も行っている。
今年度は企業を対象に認知症の症状や必要な配慮等について理解を深める研修を実施し、若年性認知症の方が働きやすい環境づくりにも取り組むことにしている。本年6月に閣議決定された「認知症施策推進大綱」においても、「若年性認知症の人への支援」は重要な柱のひとつに位置付けられている。
県としても「ひょうご若年性認知症支援センター」のコーディネーターが市町に出向いて助言を行うなど、同センターの機能強化を図るとともに市町や関係団体と連携して、若年性認知症の方とその家族が住み慣れた地域で安心して暮らせる社会づくりに向け、今後も取り組む。 -
3. 今後のがん対策について
質問と答弁のダイジェスト
[あしだ県議]平成30年国立がん研究センター統計では、生涯でがんに罹患する確率は、男性が62%、女性が47%で2人に1人はがんに罹患するとされている。しかし、早期に発見すれば5年相対生存率では、腫瘍が原発臓器にとどまった場合は、90、4%、遠隔臓器などに転移した場合は13、6%とされ、放射線療法、化学療法、手術療法といったがん医療の進歩で目覚ましく生存率が上昇している。このことからも、早期発見が重要で、そのためにがん検診受診率の向上が必須である。
本県のがん検診受診率は、国の目標50%には程遠く、全国平均と比較しても主ながんの部位別受診率は下回っている。がん検診を受けない理由としては、3割の人が、費用、心配な時は医療機関を受診すると回答しており、症状のないときに定期的に受診することで早期発見、早期治療が可能になるという認識が十分でないことが伺える。
このような県民の認識を変えると共に、住んでいる市町以外の病院でも受診ができるなど、受診しやすい体制の構築を進めてがん検診受診率の向上に努めることが重要である。
また、30から40歳代では男性よりも女性の方が、がんの罹患率が多いことを考えれば、女性のがん患者のさまざまな悩み相談に乗り、サポートする支援体制の整備を進めることが重要である。千葉県柏市の国立がん研究センター東病院には、国内初のレディースセンターがあり、特に妊娠をあきらめない相談、小児・AYA世代のサポート、アピアランス相談、リンパ浮腫を含むリハビリテーションの相談、薬物療法などの副作用に対する相談などを行う業務セッションが設けられており、我が県のサポート体制構築にも参考にできる。
我が会派は一貫して、がん対策推進に取り組み、無料クーポンやコール・リコール制度、検診体制の充実等を推進し、また、県立がんセンター内のアピアランス支援センターの機能強化、医療用ウイッグ、補整下着等購入費の助成制度の創設など実効性ある取り組みを訴えてきた。県のがん対策推進条例実現にあたっても力を入れてきた。
そこで、健診受診率の向上、がん患者が安心して暮らせる社会につながるサポート体制の構築について、どのような取り組みをしていくのか。[井戸知事]がん検診受診率の向上に向けては、市町が行う特定健診とのセット健診の促進や国庫県繰入金(特別交付金分)の重点配分、中小企業への検診受診料助成の拡充等を行ってきた。今後は、協会けんぽが進めている被扶養者を対象としたセット健診の推進やがん検診の普及啓発や受診率向上に向けて県と協定を締結する企業数の拡大に努める。
また、居住市町以外でも市町がん検診を受信できる環境が重要であり、受診率が低く若年層の罹患が多い子宮頸がん検診から広域化も推進していく。一方、がんとの共生に関しては、がん診療連携拠点病院に設置されている相談支援センターの機能について情報発信を行うと共に、センターにおいて患者や家族の悩みに寄り添いながら、経済的・精神的サポートなど総合的な相談支援体制の充実・強化も図る。
さらにAYA世代、特に若年女性のがん治療においては、患者への妊孕性温存や医療用ウィッグ等の購入への支援を検討するとともに、働く世代の治療と就労の両立支援に向け、がんに罹患しても離職しないよう、新設した休職代替職員への補助制度の活用も促進していく。 -
4. 医師の地域偏在、診療科偏在の解消について
質問と答弁のダイジェスト
[あしだ県議]この夏、会派で県内市町の首長から要望を聞く地域政策要望会を行ったところ、医師不足、特に産婦人科医不足についての切実な要望を数多く伺った。
少子化対策については、幼児教育・保育の無償化など思い切った子育て支援策が国を挙げて取られているが、まずは産まれる、産むということが、この話の最初の段階であり、本県の地域創生においても安心して子どもを産み育てることができる環境整備は、非常に重要と位置付けられている。
しかしながら、広い淡路島内でも分娩を取り扱う医療機関は現在2カ所、それも今年度中には県立淡路医療センターだけになるというのが実情で、県内には分娩を取り扱う医療機関がゼロの市町も多くあり、住み慣れた地域で安心して分娩できる環境が確保されているとはいいがたい。
厚生労働省の平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査によると、人口10万人あたり医療施設従事医師数は、全国では240,1人のところ本県は242,4人と全国平均を上回っている。しかしながら、圏域別にみると神戸圏域の304,0人、阪神南圏域の282、3人と、2つの圏域に集中しており、そのほかの8圏域は全国平均を下回っている。最小の西播磨圏域は159,3人と、最大の神戸圏域の薬半数となっており、次いで少ない阪神北圏域は185,4人と、それほど地域性や生活圏域の違いがない阪神南圏域との差は100人近くにもなっている。医師の偏在を加速させることにつながり、地域の衰退を加速させるという負のスパイラルに陥ることも考えられる。
県として、修学資金を貸与して医師養成を行うと共に、地域医療支援医師県採用制度、大学への寄附講座設置等の取り組みによって、医師確保策を着実に進めてきている。しかし、深刻な医師不足に悩む地域にとっては、どのように医師不足が解消され、将来も安定的に人材が供給されるかどうか大きな不安を抱いている。また、量的な確保だけでは、地域偏在や診療科偏在は解消されない可能性がある。
そこで、医師の地域偏在の解消及び産婦人科医の確保策を含めた診療科偏在の解消について当局の所見を。[井戸知事]地域偏在の解消に向け、県養成医師を毎年22~23人養成し、現在87人をへき地医療拠点病院をはじめ、市町立医療機関等に派遣している。県養成医師については、令和9年度には約190人まで増えるが、切れ目のない教育・研修やキャリア支援・相談を通じて義務年限終了後も県内定着を図っていく。そのほか、へき地での勤務を志す医師県職員として採用し、県指定医療機関への派遣している。
診療科偏在解消に向けては、県寄附により特別口座を設置し、医師を派遣しているほか、医師の確保が困難な診療科を有する医療機関に対して医師を派遣する医療機関への経費補助も行っている。特に産科については分娩手当の一部支援により、産科医の殊遇を改善するなどその確保も図っている。
また、産婦人科医等をめざす県養成医師が専門医療資格を取得し、県内で産科等に従事できるよう「特定診療科育成コース」も新たに創設した。 -
5. 但馬牛の増頭対策について
質問と答弁のダイジェスト
[あしだ県議]食肉関係者に伺ったところ「米国産牛肉が安く国内で流通し最も影響を受けるのは、現在国内で流通している外国産牛肉だろう。神戸ビーフは、ブランド化、差別化されているのでさほど影響はない。それよりも神戸ビーフとなる但馬牛が依然として不足しており、今後、海外での需要がますます増えると予想されるので、協力に増頭対策を進めてもらいたい」とのことであった。
このような中、本年6月末に新温泉町でアパート牛舎が完成した。約2,900㎡の敷地に牛舎2棟、堆肥舎1棟が整備され、これにより76頭の牛が飼養されることになった。76頭とまだまだ数は少ないが、イニシャルコストに莫大な費用がかかり、新規就農が体験難しい畜産業界に新たな参入の道筋をつけた大きな取り組みであると高く評価している。ただ、まだまだ目標頭数にはほど遠い数字である。
本年2月定例会の代表質問で岸本議員からも指摘したとおり、ゴールデン・スポーツ・イヤーズで来県される多くの外国人に但馬牛、そして神戸ビーフのすばらしさをPRしなければならない。また、すでに神戸ビーフの価値を認めている方に、本場の神戸ビーフを楽しんでもらわなければならない。世界での需要拡大を図ると共に、国内での消費に応えていくことが重要である。そこで、但馬牛の増頭対策について所見を伺う。[井戸知事]県では、平成18年度から但馬牛増頭対策として、繁殖雌牛の導入や牛舎整備等に取り組んできた。さらに、平成30年度から
①市町によるアパート方式での貸付牛舎の整備
②子牛の生産期間を短縮する妊娠牛の導入支援を行い、昨年度の但馬牛繁殖雌牛は13,482頭と前年から324頭増え、3年連続増加している。
一方、神戸ビーフの需要は依然旺盛で今年に入り
①「兵庫美方地域の但馬牛システム」の日本農業遺産認定
②神戸ビーフ館のオープン
③和牛マスター食肉センターの欧米向け輸出認定など、さらに追い風が吹いている。この機をとらえて増頭を一層加速させるためには、新規参入や規模拡大時の施設用地の確保や初期投資の軽減が最優先課題である。
このため、今年度から総合支援窓口として「畜産参入支援センター」を畜産課内に設置し、施設用地の掘り起こしや紹介、初期投資の軽減を図る補助事業の活用相談等を実施している。具体的には、小規模からの経営スタートだが、2件の企業参入があるほか、複数の事業者に対し地元市町と調整しながら施設用地を紹介するなど、きめ細やかに対応している。
一般質問
柴田佳伸県議
[質問項目]
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1. 訪問看護師・訪問介護員安全確保・離職防止対策事業の推進について
質問と答弁のダイジェスト
[柴田県議]厚労省によると近年、介護現場では利用者や家族等による介護職員への身体的暴力や精神的暴力、セクシャルハラスメントなどが少なからず発生していることが調査で明らかになっているとのことである。
こうした状況を、以前から我が公明党・県民会議議員団は現場の声として受け止めており、本会議や重要政策提言の場で状況改善のための施策の実現を強く主張してきた。その結果、本県では平成29年度から「訪問看護師・訪問介護員安全確保・離職防止対策事業」の導入が実現した。この事業は、訪問看護師・訪問介護員の安全確保・離職防止を図るため、利用者からの暴力行為などが原因となる2人以上の訪問が必要なケースで、利用者及び家族等の同意が得られず、介護報酬上の2人訪問加算が適用できない場合に、加算相当額の一部を補助するほか、職員のメンタルヘルス対策、事業所管理者の対応能力向上等を推進するというものだ。
しかしながら、利用者等の同意が得られない場合の2人訪問費用補助について、平成29年度においては、神戸市と西宮市の登録はあったものの、実績はなかった。平成30年度においては、11市町の登録があり、神戸市と西宮市で補助実績があったが、いずれも1事業所ずつに留まっている。
これは、市町の事業への理解不足や事業所への説明不足が要因と考えられるが、市町3分の1、県3分の1、事業者3分の1という負担割合が、利用が拡大しない要因のひとつとも考えられる。ある事業者からは「安全確保・離職防止という面では、介護職員や事業者のためという事業のように思えるが、実際は労働をしているのにお金を払うという矛盾を感じてしまう」との意見もお聞きした。
地域包括ケアシステムの構築を推進していく上で、訪問看護師・訪問介護員の活躍は今後ますます重要となってくる。そのためにも、この負担割合のあり方も含め、事業者が利用しやすい制度にするなど、現場の負担感を和らげることが大切である。本事業の利用拡大により、訪問看護師や訪問介護員の働きやすい職場づくりと離職防止の確実な進展が期待できる。
そこで、訪問看護師・訪問介護員安全確保・離職防止対策事業の推進について、どのように取り組んでいくのか。[井戸知事]県としては、平成29年度に全国に先駆けて「暴力等対策マニュアル」を作成し、関係機関へ配布した。また、HPへの掲載により周知するとともに、毎年、事業所の管理者等を対象に研修会を開催している。また、国制度の2人訪問は、利用者負担の増加を伴うため、利用者の同意が得られないことがあるので、訪問看護師等の安全対策として県独自の2人訪問の補助制度を創設した。
この補助制度については、市町等への働きかけにより、今年度の実施市町は昨年度から5市町多い、16市町となったが来年度に向け、実施を検討する市町もあるので、事業の実施主体は徐々に充実してきている。
2人訪問の補助制度の実績が少ない理由として、市町、事業所及び介護支援専門員にヒヤリングを行ったところ、まず「ハラスメント」についての事業所や職員の理解が十分でないという点が挙げられる。続いて2人訪問の補助内容についての事業所の理解が充分進んでいないなどの2つの点が挙げられている。
このため、介護サービス利用にあたって中心的な役割を担う介護支援専門員等を含めて、広く事業の周知を図っていく。2つに、事業所におけるハラスメント対策の取組の現状や、2人訪問の補助制度利用に当っての課題等を調査した上で、雇用管理として実施するハラスメント対策の重要性について事業所の理解を深めていきたい。 -
2. 卸売市場の活性化対策について
質問と答弁のダイジェスト
[柴田県議]卸売市場を取り巻く環境は激変しており、昨年6月、国では食品流通の多様化が進む中、新たな需要の開拓や付加価値の向上につなげていくことを目的に、卸売市場法の一部を改正したところである。
その内容は、卸売市場開設について農林水産大臣や知事の許認可制から認定制への移行、中央卸売市場の開設者制限の緩和、地方卸売市場の手続きの法制化や施設の規模要件の廃止などで、大幅な変更となっている。
改正法に基づく認定申請の受付が、今年12月に開始されることから、県内の各卸売市場でも準備が進められている。法施行後は、全国の卸売市場において、第三者販売や直荷引きなどの取引ルールを、各市場の実状に応じて取り決めることが可能になる。私の地元の姫路市中央卸売市場においても、新制度に円滑に移行するため取引ルールづくりや業務規程改正など、姫路市が中心となって事務作業を進めていると聞いている。
法改正を契機に新たな取引ルールを策定することにより、東京や大阪など大規模市場の集出荷体制が強化され、県内卸売市場との市場間競争がより激化することも懸念される。また、姫路市中央卸売場は、昭和32年に全国で15番目にできた卸売市場として長年の歴史があり、卸売業者から「従来の市内での第三者販売を行わないなどの取引ルールを大きく変更すると、トラブルにつながるので避けたい」「国や県は卸売市場をどのようにしていきたいのかよくわからない」など、今回の改正に対する不安の声もお聞きしている。
このような状況の中、新制度の下で県内卸売市場が高品質な生鮮食料品等の安定供給を担い、重要な食品流通拠点として継続していくよう市場の活性化を図ることが重要である。そこで、県として卸売市場活性化について今後どのように取り組んでいくのか。[井戸知事]今回の法改正は、参入制限や一律の取引ルールを緩和して、市場の活性化を図ろうとするもの。例えば、卸売業者が行う小売店や消費者への第三者販売を認める、仲卸業者が卸売業者を通さない生産者からの直接仕入れなどの取引ルールを、卸売業者、仲卸業者など市場関係者の話し合いの中で定めて、取引することができるようにする、これらのことが期待されている。
県では、市場関係者に制度改正説明会や現地へ出向いた個別相談の実施など制度周知を進めている。引き続き、取引ルールづくりなど円滑な市場運営を指導していく。今後は、施設整備等これまでの支援に加えて、県内産地と連携した新たな取扱品目の開発や卸売業者と仲卸業者が連携した外食産業など新たな顧客獲得も支援して、県内卸売市場の活性化をさらに進め、県民への食糧の安定供給に努めていく。 -
3. 市川周辺地域の道路・河川等の整備について
質問と答弁のダイジェスト
(1)市川左岸地域の渋滞対策について
[柴田県議]近年、地元の姫路市ではJR姫路駅を中心とした再開発事業により、市街地中心部は大きく様変わりをしている。また、国道2号も姫路市西部を流れる夢前川の夢前橋から東側は順次、片側2車線として整備され、渋滞が大きく緩和された。さらに現在、幸町東交差点から市川橋西詰交差点までは、街路事業が進められている。
一方、姫路市街地東部においては、南北に流れる市川をまたぐ県道白浜姫路停車場線阿保橋周辺の阿保橋東交差点、阿保橋西詰交差点、国道2号市川橋周辺の一本松交差点、市川橋西詰交差点など、朝夕の通勤ラッシュ時に多くの交差点が渋滞している。
特に阿保橋付近は渋滞する国道2号を避けるための抜け道としてこれまでも渋滞していたが、近年、阿保橋南東部に位置する東阿保、北原、東山地区等の宅地開発が進んだことから、急激な人口増加による交通量の増加で渋滞がこれまで以上にひどくなったと感じている。
東阿保地区の地域住民の方からは「朝の出勤時間帯には阿保橋を通過するのに時間が読めない」と聞いている。加えて、神屋町に姫路市文化コンベンションセンターおよび県立はりま姫路総合医療センター(仮称)の建設も予定されており、これらの交差点がさらに渋滞するのではないかとの不安から早期対策実施に向けた多くの要望が寄せられている。
県道白浜姫路停車場線の阿保橋及び国道2号の市川橋は、姫路市の東部と姫路市中心街を結ぶ住民の日々の暮らしを支える道路の結節点。また、この周辺道路は新病院整備に伴い、救急車などの緊急車両が往来することも見込まれ、今後はますます重要性が増してくる。そこで、これら県道白浜姫路停車場線の阿保橋周辺および国道2号の市川橋周辺の渋滞対策をどのように進めていくのか。[濱県土整備部長]県道白浜姫路停車場線阿保橋周辺の渋滞は、橋の西側で阿保橋西詰交差点と阿保橋西詰北交差点が約50mと近接している構造に加え、国道2号市川橋周辺の渋滞を避ける迂回交通が市川の左岸・右岸の道路を南下し、阿保橋周辺に集中することが原因である。
県道の阿保橋西詰北交差点から北川へ阿保中交差点までの約400m区間は、姫路市施行の阿保土地区画整理事業により、令和2年度完成を目途に4車線化が進められている。あわせて、国道2号市川橋西詰交差点から南下しJR姫路駅南へとつながる都市計画道路市川線と南駅前線も整備中である。
これらによって市街地東部から中心部へ向かう交通の円滑化が図られると共に、阿保橋西側の交通を西詰北交差点に集めることで、交差点処理が容易となり渋滞が緩和すると考えている。県としては、市にこれら路線の早期完成を要請していく。
なお、土地区画整理区域内道路の完了には時間を要することから、8月に県・市・警察からなる対策会議を設置し、西詰北交差点への迂回を促す看板の設置等の暫定対策を実施していく。また、国道2号市川橋周辺では、市川橋西詰交差点の渋滞が一本松交差点付近にまで及んでいる。現在、、西詰交差点付近から西側約1kmの区間で4車線化を進めており、西詰交差点西向き流入部も片側2車線と右折レーンを設け、渋滞の緩和を図っていく。
今後、用地買収を進め、令和2年度より順次工事に着手し、社会基盤整備プログラムの後期5カ年の早期完成を目指す。
一般質問
しの木和良県議
[質問項目]
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1. 障碍者に対する親亡き後の取り組みについて
質問と答弁のダイジェスト
[しの木県議]平成に入り、障碍者福祉はノーマライゼーションを理念として、これまでの施設入所から地域生活へと施策そのものが転換していき、グループホームが知的障碍者の自立生活の実現への基盤整備となりました。そしてグループホームは、知的障碍者と家族に大きな希望を与え「地域生活」という提案をし続けているところである。
そのように、時代は施設から地域移行へとなっていることは理解するところだが、父母の会の方々としては重度化している障碍者をグループホームでどのように支援していくのか、そんなことでは親は安心して死んで行けないということだった。
このような意見も踏まえてと思うが、国においても重度化する障碍者の地域移行における自立支援のあり方を考えて、日中サービス支援型のグループホームを昨年度から創設されたところだ。しかしながら、全国的にもいまひとつ整備がすすんでいないことに加え、支援区分5以上の重度障碍者や医療的ケアを必要とする方を多数受け入れる十分な制度にはなっておらず、これでは、親亡き後、高齢化・重度化する障碍者が安心して生活できる場になっていないというのが、父母の会の意見の大半だった。
そこで、県としては高齢化・障碍の重複化・重度化する障碍者に対する親亡き後の支援をどのように認識し、今後どのような対応をしようとしているのか。[井戸知事]県では国庫を活用した整備費の補助に加えて、国基準の1万円に県単で1万5千円を上乗せして2万5千円の家賃補助を実施しているほか、親亡き後の住まいの一つとしてグループホームの整備を積極的に促進してきた。
障碍者の重度化、高齢化に対応するため「日中サービス支援型グループホーム」が昨年度創設されたが、医療的ケアが必要な重度障碍者に対応した十分な報酬体系になっていないということ、2つ目に短期入所併設が必要とされており、手厚い職員配置が求められていることなどの課題があって県内では1箇所しか整備が進んでいない。
一方、このような状況なので、重度障碍者に対応した看護職員配置加算が不十分な同制度に上乗せする形で医療的ケアが必要な重度の障碍者でも安心して生活ができるよう、看護職員を常時配置した全国で初めての「医療支援型グループホーム」の助成事業を今年度創設している。
今後はこの「医療支援型グループホーム」の整備を進めていくとともに、整備が進まない「日中サービス支援型グループホーム」について、制度上の課題改善を国に要望していく。[しの木県議(要望)]保護者の方々が最も心配されているところを、今年度から県独自で医療支援型グループホームを採用されているということで、保護者の方々も大変喜ばれるであろうと思われる。ただ、保護者の方々が真に求めるものは、高齢者介護のように、日中活動の場や暮らしの場に定期的に訪問したり、様子を把握するというような地域社会の中での見守りや体制や仕組みがあれば、より一層親の方々は安心して預けたり、自立の道を探ることができるのではないかと思う。 -
2. 農地・農業の維持・存続のための取り組みについて
質問と答弁のダイジェスト
(1)都市農業関係制度を十分に活かした都市農業の振興について
[しの木県議]県では、都市農業・都市農地に対する考え方が大きく転換されたことを受け、速やかに都市農業振興基本計画を策定し、積極的に都市農業の振興を推進している。しかしながら、県の基本計画も踏まえて、関係各市の地域計画の策定があってはじめて力強い取り組みが進むが、未だに伊丹市・神戸市・西宮市の3市が策定したのみである。
県の基本計画や関係各市の地域計画の策定は、都市農業の振興を図るための第一歩、基本的な枠組みづくりというべきものだと考える。また、都市農地を維持・継続していくために、平成29年の生産緑地法の改正により、芦屋市を除く三大都市圏特定各市では面積要件の緩和措置が早急に適用できるように条例が制定されている。
面積要件が緩和されたことにより、これまで該当しなかった農地の生産緑地地区への追加指定の対応や「道連れ解除」を防止することができる。しかしながら、三大都市圏特定市以外の市町での生産緑地地区の指定がなかなか進んでいないように聞いている。これらの懸案事項をできる限り速やかに解決し、市街化区域内の農地を維持・保全し、都市農業の振興を図っていくことが都市農業振興基本法の理念・趣旨に適う。
そこで、関係各市の地域計画の策定や三大都市圏特定市以外の生産緑地地区の指定が進まない要因と今後どのようにしてその課題解決を図っていくのか。[井戸知事]県都市農業振興基本計画や都市計画区域マスタープランに都市農地の活用保全など県としての方向性を示しているとともに、市町に対しては生産緑地地区の指定など都市農業関係制度の活用を働きかけてきた。
その結果、神戸・西宮・伊丹の3市が都市農業振興計画を策定した。また策定に向けた検討を開始した市町として宝塚や高砂、また、尼崎が現在検討中である。一方で、都市農政の面積が少ないことなどから、都市農業振興に重きを置いていないため、計画策定を予定していない市町村が大変多くある。
三大都市圏特定市以外の市町の生産緑地地区の指定が進んでいない点については、まず、依然、所有者の宅地開発への期待が強い。2つには、都市部に比べて地価が低い地方では、生産緑地地区の指定による固定資産税軽減のメリットが少ないことなどから、農地所有者は生産緑地地区の指定を望まないことなどが背景にあると考えられる。
今後、当該市町に対して、都市農地・都市農業が景観形成や災害時の避難場所となることなどをよく説明して、計画策定と生産緑地地区の指定を促していく。また、農地所有者には、生産緑地では新たに昨年9月から、他の農業者や市民農園開設者に貸し付けた場合でも相続税の納税猶予対象となったので、周知していく。あわせて、納税猶予対象の拡大として、ビニールハウス等の生産施設を対象にする、あるいは農家レストラン等の設置用地についても対象にするなど国に提案して、メリットの拡大に努めていく。[しの木県議(再質問)]先日の会派で開いた研修会で、地域の元々あるような固有の資源・資産というものをみんなで共有することで初めて地域社会が成り立っていくと思った。その意味からも県の基幹産業である農業を推進していく、そういう広域的立場の県からすると少し強い思いを持って市町を指導していくという方向性がとれないものか。[井戸知事]ご指摘の点については、そのような視点を持っておく必要があるといえる。。しかし、その視点だけで都市農地のあり方を規定していくというのは難しい。したがって、市町と相談しながら土地利用計画である振興計画を作って、それで農地のあり方とその上で営まれる農業の存在というものを評価していこうではないかと考えている。 -
3. 安全・安心な水を供給するための取り組みについて
質問と答弁のダイジェスト
[しの木県議]西日本豪雨では、土砂災害などにより長期間にわたる断水となった地域も広範囲にわたった。これらの被害の多くは、土砂崩れによる浄水場などの損壊がほとんどであるため、水道施設に要因は求められないが、災害によって断水が発生した場合の重大性を認識させられた。
県営水道においても、西日本豪雨のときに加東市で中国自動車道の法面崩壊の影響で送水管が破断し、三田浄水場からの給水がストップしたとのことだが、この場合は船津浄水場からのバックアップシステムが機能して断水に至らなかったと聞いている。日頃からの危機管理がいかに大事かを改めて認識し、安心した。この送水管が老朽化したものか否かはわからないが、昭和46年以降順次開始された県営水道施設は整備から40年以上が経過したものが多く施設の老朽化も懸念されている。
また、水道事業のあり方懇話会からの報告でも、県内市町の水道事業も含めて高度経済成長期に集中的に整備された施設が更新時期を迎えており、特に早期に事業が始まった神戸・阪神南などの都市部で法定耐用年数が超過した水道管路が顕著となっている。そして、そのような時期に急激な人口減少社会を迎えることとなり、水需要が大きく減少することで事業の経営そのものに懸念が生じているとされている。
現在の総括原価方式、すなわち給水原価に基づき料金が決められる水道事業で、事業の経営のためにも料金値上げをせざるをえない状況がある中で、今後一斉に生じつつある老朽管対策も含めて県営水道について県民に今後も安全・安心に水を供給していくための取り組みをどのように考えているのか伺う。[片山公営企業管理者]安全安心な水道用水の供給には、将来にわたる健全経営の維持、事故発生時等の危機管理対策、老朽施設の計画的更新、この3つが欠かせないと考えている。健全経営については、一部業務の外部委託などによる経費削減、低利債への借換や繰上償還による利息負担の軽減などを図っている。危機管理対策については、渇水や災害時の断水リスクに備え浄水場間を結ぶ連絡管を整備している。事故発生に備えては、定期的な訓練や緊急用資材の備蓄などにより、被害拡大防止と迅速な復旧に対応できるようにしている。
さらに、老朽施設の更新については更新時期の平準化や長寿命化を図るアセットマネジメント推進計画を策定し、計画的な更新に取り組んでいる。また、毎年度の利益剰余金は積み立てを行い、将来の設備更新に対応できるようにしている。[しの木県議]阪神水道企業団のような古くから供給をしているような事業体では、施設の減価償却も進んでおり、給水単価もそれほど高くないが県営水道の施設はまだ新しく、減価償却費が高いため給水単価が高くなっている。
総括原価方式で料金を計算しているということだが、人口減少により採算が成り立たなくなると、市町においていつまでその単価を賄っていけるかということも懸念される。今後料金を値上げせざるを得ない。しかし、市町の状況を考えると値上げするわけにもいかない、といった状況になったとしても、老朽管の更新は計画的に行われるのか。[片山公営企業管理者]毎年の利益余剰金は議会に承認をいただいた上で積み立てており、将来の設備更新のために蓄えている。また、市町の人口が減少していく中、給水量がどうなっていくかは非常に不確定だ。状況を見極めていくため、市町と十分協議をし、利用しやすい環境づくりに取り組んでいく。[しの木県議]安全・安心な水の安定供給を今後ともよろしくお願いします。