県議会公明党・県民会議の定例の研修会を9月18日、県庁内で行い、株式会社粟代表取締役社長の三浦雅之氏が「6次産業で地域を紡ぐ―プロジェクト粟の取り組み」をテーマに講演しました。
三浦氏は、奈良市精華地区で、農業と共に地元の伝統野菜の調査研究に取り組みつつ農家レストランを運営しています。現在、伝統野菜を農家レストランで提供したり加工商品化する株式会社粟、在来種を調査・発掘するNPO法人清澄の村、また、在来種の栽培などを進める五ヶ谷営農協議会を連携協働させた6次産業化による「プロジェクト粟」を展開。地域資源と育まれてきた食文化を守り、伝統野菜の魅力を広く知らせていく活動で地域の発展に大きく寄与しています。
はじめに三浦氏は「奈良には世界遺産がたくさんあり内外から多くの人が訪れるが、滞在してくれない。見学後には他府県に行ってしまう。またデータをみると農業県とはいえないし、専業農家が少ないことに気付いた。そこで、在来種の付加価値を高めて、地域のコミュニティづくりや農的暮らしの確立につなげたいと思った」と農業に携わるようになった理由を説明しました。
自身が農業を始める前に行った奈良の伝統野菜の聞き取り調査については「各農家で家族が好きなので作り続けていたり、その野菜が好きな知り合いのために作っていたりしていた。食べ方もそれぞれの家庭で工夫されていた。周りの人の喜ぶ顔を見るために作られてきたのが伝統野菜だった」と地元の人々と伝統野菜の密接さを指摘しました。
三浦氏は平成10年に同地区に移住し、農業や文化の継承の大切さを訴える中で、その地域住民主体の農業の確立への取り組みに共感する人や協力者が増え在来種を栽培している農家とのつながりができ、伝統野菜の種の交換会が実施されるまでになりました。
さらに、伝統野菜を発信する際に大切なものとして
①風土(地域の特徴)
②風味(食文化)
③風景(ランドスケープ)
④風習(自然との調和)
⑤風物(道具を使う技術)
⑥風俗(遊び・仕事・学びの一体化)
⑦風情(地域性)
などを挙げ、伝統野菜が持つ背景や物語などの重要性を示しました。
活動を進め地域での理解やネットワークが広がる中で、平成14年には在来種野菜の発信拠点で、地域交流拠点でもある農家レストラン「清澄の里・粟」を開設。同16年には在来種の調査・発掘や農村文化の調査・継承などを目的とするNPO法人「清澄の村」と在来種の農作物を生産する「五ケ谷営農協議会」を設立しました。
このほかにも、長年栽培されていなかった在来種の粟を使った和菓子作りや奈良市との官民協働事業としてのカフェレストランの運営、大学と協力して地域のしょうがを素材としたソフトクリーム「清澄ジンジャーソフト」の商品化などこれまでの6次産業化の推進に関して解説しました。
最後に三浦氏は「これからの農業には6次化とさまざまな農業の形を作っていく必要がある。奈良にはまだまだ活用されていない歴史・文化的な地域資源が豊富にある。3年前から県庁職員の方々をはじめ研究者、、デザイナーらに参加してもらって地域資源を生かし地域活性化につなげていくためのフォーラムを行っているところだ」と地域に根差した活動のさらなる広がりへの意欲を強調しました。
このあとの質疑では、三浦氏が運営するレストランの経営状態、資金の調達方法や人材の確保・育成についての質問が相次ぎました。また、広報活動やメディアで紹介してもらうことでの宣伝効果、本県の農業振興などについて意見交換しました。