県議会公明党・県民会議は、5月25日、県庁内で研修会を開催。株式会社パソナグループで執行役員を務める大出亮氏を講師に迎えました。大出氏は「パソナグループの地方創生」をテーマに、これまで淡路島で進めてきた事業や本社機能を東京から淡路島に移した経緯や目的などを話し、これからの地方創生のあり方を示唆しました。
人材派遣大手のパソナグループは、主な本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移すことを発表し、その試みが注視されています。2024年5月末までに社員ら約1200人が移り住む計画です。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、働き方やオフィスのあり方を見直す目的で、地元への様々な相乗効果などに大きな期待が寄せられています。
まず大出氏は、パソナグループの事業概要、創業・企業理念などを説明しました。次に同グループの淡路での地方創生について解説。
これまで淡路島で2008年から農業で起業を目指す人の就農支援をスタートし、その後アニメや漫画の世界観を再現したエンターテインメントテーマパーク「ニジゲンのモリ」、劇場とレストランを併設した「青海波」など地域資源を生かした多彩な施設を開設し、島内で多くの雇用を創出しています。大出氏はこれらについて「地方創生を行う上で『わくわく(遊び)』『どきどき(文化)』『のびのび(自然)』『ぱくぱく(美食)』『いきいき(健康)』『すくすく(教育)』『きらきら(仕事)』の7つの要が重要。この7つを組み合わせないと幸せを感じて暮らせない。その環境が淡路島には整っている。人の暮らしの土壌をつくるため、地域のまちづくりも人を活かす舞台づくりとして様々な事業を展開している」と話し、淡路島で目指すこととして①雇用の創造 新たな舞台づくり②人材育成 人と生活のフォロー③文化創造 豊かな社会づくりの3点を挙げました。
また、雇用と様々な働き方に関しては、「淡路で事業をやるきっかけは『ここから村プロジェクト』で全国の若者を集めて、半農と文化とを結びつけて進めていった。地域活性化を志す若者のほか、芸術活動(音楽・美術・演劇・舞踊等)を志す若者を地方に誘致し、多様な力で地域の活性化を目指すプロジェクト。『半農半芸』という地方ならではの新しい形のワークスタイルの提供やビジネスカレッジ、アグリカレッジ、アートマネジメントカレッジの3つのカテゴリの研修により、1次産業、2次産業、3次産業の総体的な学習と参加者の得意分野を活かした地域活性化に関する研修事業を実施した。雇用実績は約300人で多くの卒業生が淡路島に残って活躍している」とこれまでの実績を振り返りました。
さらに、キャリアや個性を活かして社会で活躍していくための実証実験を紹介。一つはコロナ禍で職を失った、ひとりで子育てをしている方を対象に淡路島で幅広い分野で仕事ができる「ひとり親働く支援プロジェクト」の開設。また、エルダーシャイン制度は、これまでの経験を活かした働き方や新たなキャリアに挑戦し、生涯現役での活躍を目指すシニア人材を応援する制度で、定年退職を迎え、健康で働く意欲のある人が対象。各々のライフスタイルに合わせた働き方ができるといったユニークな取り組みを解説しました。
その他にも、地域活性関連プログラムとして行っている、淡路島の自然や人々と交流しながら参加でき、多くのボランティアや企業の協力で運営している運動会の世界大会「UNDOKAI World Cup」や国内外から若者や起業家が集い、新たな事業の創出や社会問題の解決に挑むことができるリーダーの育成を目指すプログラム「Awaji Youth Federation」などについても紹介しました。
講演後の質疑では、各議員から「パソナのプロジェクトから考えられる都市部への若者の流出への対策は」「淡路での事業の出発となった就農支援などは今後どうしていくのか」「スーパーシティ実現への進め方やそこから考えられる可能性について」といった質問が相次ぎ、データを参考に意見交換しました。