定例の研修会を11月1日に県庁内で行いました。今回は、森康子・神戸大学大学院医学研究科教授が「新型コロナウイルス感染症について」をテーマに講演しました。
講演に先立ち杉村和朗・県病院事業管理者があいさつし、今回のコロナ対策においての問題点やこれからの感染症への対策のポイント、産官学の連携による治療薬やワクチン開発の重要性などを強調しました。
森教授はまず、ウイルスや感染症についての定義を説明。また、歴史的な感染症の流行(パンデミック)に関して▶フランスでのペストの大流行(1720年)▼アジアから中東、アフリカまでのコレラの蔓延(1820年)▼スペインかぜが流行し、世界の人口約16億人のうち5億人が感染し5千万人から1億人が死亡(1918年~1919年)▼今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックの4例を挙げ、100年に1度パンデミックが起こっていることを示しました。
また、今回の新型コロナウイルス感染症は、2019年12月中国・武漢で確認されたのち、2020年1月に国内で肺炎患者の感染が発生。2020年1月世界保健機構(WHO)が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言し、3月にWHOはパンデミック(世界的大流行)と表明、世界的大流行を引き起こしたことを振り返りました。
次に重症化のメカニズムについて「さまざまな重症度の新型コロンナウイルス感染者の血清を多面的に解析したところ、新型コロナウイルス感染の症状は重症度により大きく異なり、高齢者や基礎疾患のある人ほど重症化しやすい」と述べ「重症例では、サイトカイン(自然免疫・細胞から分泌されるタンパク質で免疫細胞の遊走や活性化を引き起こし、炎症を誘導するものが含まれる)などが多く産生されており、過剰に炎症反応が起きていると考えられる」と解説しました。
さらに、「重症度の患者には新型コロナウイルスに対する中和抗体(体内に侵入したウイルスを攻撃し、不活性化する能力のある抗体)を産生しており、重症度が高いほど多く産生されていることが分かった」と付け加えました。
ワクチン接種後の副反応については「若い世代ほど副反応が出た人が多く、発熱、倦怠感は2回目の接種後に多く見られた。腕の疼痛の頻度は世代による違いはなかった。発熱と抗体値に明らかな相関は見られなかった」とデータをもとに指摘しました。
最後に、検討されている兵庫県・神戸大学疾病健康管理・疫学研究センターについては、「今回、新型コロナウイルスに関するさまざまな情報やワクチン接種の状況などを県民に情報発信できていなかった。それは、関係機関が連携ができていなかったことが大きな要因で、今後一体化し迅速な対応をしていくことが課題となった。そこで、センターでは公立病院や大学付属病院、産業界などからの情報収集、また、検体収集、データ解析などの情報を一元的に収集・管理する。それを県に報告し、県から県民に発信してもらう。また、センターの取り組みなどを広くPRしていきたい」と機能や役割を説明しました。
このあとの質疑では、議員からの「疫学研究センターは必要だと思う。その際の産業界などにおける課題は」との質問について「センターができてから、県は県からの発信の重要性について認識を持ってほしい。サンプルや臨床情報なども収集しまとめたい。研究し産業界との橋渡し役となれる人材が不可欠だ。感染症が発生して、専門家がいないとすぐに対応できない。前もって専門家の配置や基礎研究の積み重ねをすることが重要である」と答えました。
また、ワクチンの3回目の接種についての質問には、「本人が納得して受けるならいいと思う。2回目の接種から6か月経つと抗体が落ちている。副作用があまりなかった人は受けてもいいと思う」と述べました。さらに、「疫学研究センターの設置・運営は、本来は国がやるべきことではないか。センターについての県と国との棲み分けは」については「地方から国に情報をあげていくことが大切だ。兵庫から全国に発信できる仕組みづくりが必要になってくる」との考えを示しました。