県議会公明党・県民会議は、11月8日、県庁内で定例の研修会を開きました。今回は、ちば内科・脳神経科クリニックの院長の千葉義幸氏を講師に迎え「兵庫県の各地域で安心して暮らしていくためにすべきこと~但馬地域での医療福祉の取り組みから街づくりまで~」をテーマに講演していただきました。中では、医療・福祉の連携、在宅での介護の現状や課題、また、但馬地域で進めている活動などを説明しました。
千葉氏は2020年6月に豊岡市内で、脳神経血管、脳卒中の治療および認知症、てんかん、脊椎精髄疾患などの治療を行うクリニックを開業。
はじめに、「豊岡市とその周辺地域の高齢化率は30%を超え、公立豊岡病院はあるものの、兵庫県北部の二次医療圏をカバーする医療供給体制が需要に追い付いていないことを感じた。地域のために高齢者の総合的な治療をある程度自分の医療のなかで完結する必要がある。そのことで疾患を予防し、高齢者の健康寿命を延ばすことを目指したいと思った」と但馬に戻られた理由を語られました。
次に、我が国の人口減少問題や団塊の世代が後期高齢者となる2025年の社会事情、また、急速な高齢化に伴う今後の社会保障給付費の推計、日本の財政状況などをデータをもとに示しました。
その上で、地域医療構想では、将来的には全国の介護施設や高齢者住宅を含めた在宅医療で等で29・7万人から33・7万人程度の患者に対応する必要があると推計されており、在宅医療の受け皿が整わないと約40万を看取る場所がなくなることを解説。
「地域の医療や介護従事者、市民が協力し合って要介護者や障がい者をケアしていく地域包括ケアシステムが求められていて、在宅医療・介護連携を推進していかなければならない。医療・介護関係者の情報共有には、情報共有ツールを作成することに加えて、同一の二次医療圏にある市町や隣接する市町が連携して、広域連携が不可欠な事項について協議することが求められている」と広域的な地域での医療・介護・福祉の連携の重要性を強く訴えました。
また、千葉氏は、山形県酒田市の総合病院が中心となって立ち上げた「地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット」について説明。同庄内地方は、人口減少を含め但馬地域と同じような状況にあり、同ネットは病院の再編に成功し、医療情報ネットワークを結んで情報共有を実現。患者が服用している薬の重複の有無なども把握できるといった状況を示しました。
「但馬にも同ネットのようなネットワークが不可欠だ。2005年には19万人だった但馬の人口は2050年以降に10万人を切り、豊岡市に至っては5万人になる。人口は約半分になるが、高齢者数はさほど変わらず、激変するのは生産人口。人口減少に伴いサービス提供の維持ができなくなる。豊岡市にはドクターヘリを飛ばす但馬救急救命センターがあるが人口減少が続けばセンターの維持も困難になる」と近い将来の地域の姿を描き、課題解決への手立てが急務であることを再度強調。
解決への一つの方途として千葉氏は、但馬地域の医療・介護・福祉・行政等が連携し医療・福祉の包括的な提供体制を構築する「NPO法人但馬を結んで育つ会」を立ち上げ、地域医療の活性化を目指し積極的に活動を進めている様子を詳しく説明しました。
さらに、地域性にマッチしたコンパクトシティの形成を提案。例として養父市の取組を紹介。養父市は旧関宮町で地域活性化に向けた施設整備を進めており、旧町役場や多目的ホール跡などを活用し、高齢者向け住宅や子育て世代の交流施設をはじめ、歯科や薬局、日用品を購入できる店舗などが整備していく。市は、旧関宮町中心部を地元の診療所などと連携し、住民の第2の居場所として位置付ける計画で、今後の地域のあり方を提示していることを話しました。
最後に千葉氏は「公明党は全議員が一丸となって、住民のために社会福祉の向上に尽力している。今後、安心して暮らせるまちづくりを協力してやっていければ」と話しました。
このあとの質疑では、各県議から「高齢者が増え、若者が減っている中でコンパクトシティの形成は可能なのか。若い人に地方に残ってもらう地域づくりの進め方は」「若い人が減少する中で課題が山積している。県議会公明党・県民会議の議員への要望があれば教えて欲しい」「国は総合医を増やすことをいっているが、うまくいっていないのでは」といった質問が出され、課題解決に向けて意見交換しました。